猫の正常なゲップ
ゲップ(burp, belching)とは胃袋や食道の中に入った空気を外に出すことです。液体や固体を吐き出す時は嘔吐と呼ばれますが、吐き出すものが気体の場合は「ゲップ」と呼ばれるようになります。人間におけるギネス記録は、音の大きさでは「109.9デシベル」(2009年8月/イギリス)、長さでは「1分13秒」(2009年6月/イタリア)です。
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【動画】子猫のゲップ
上の動画のように、猫のゲップはミルクを飲む機会が多い子猫時代に多く現れます。しかし離乳してからはほとんど出すことがありません。動画共有サイトには「猫のゲップ」と称したたくさんの動画が投稿されていますが、そのほとんどは人間がゲップの音をアテレコをしたおふざけビデオです。
猫がひとたび成長するとゲップしている様子はほとんど見ることができません。
猫はゲップができない?
成長した猫ではゲップしている様子ほとんど見られず、獣医学の教科書にも「ゲップ」や「おくび」といった項目が記載されていません。では、猫は成長するとゲップができなくなってしまうのでしょうか?
神経生理学的にみると猫はゲップができます。猫の食道内部をゆっくりと内側から拡張すると、上部食道括約筋の収縮反射と下部食道括約筋の弛緩反射が起こることが確認されています(Lang, 2012)。要するに食道に入ってきたものを口に逆流させないよう入口を閉じると同時に、胃袋にスムーズに送り込むよう出口を開け放った状態です。
反射は食道のどの部分でも起こりますが、特に胃に近い部分を刺激した方が起こりやすいとのこと。またゆるやかな拡張刺激は嚥下(ごくっと飲み込むこと)も引き起こします。人間の体を見本にした図解は以下です。 【画像の元動画】Heartburn, Acid Reflux, GERD-Mayo Clinic ゆるやかな拡張刺激は食道の二次的な蠕動運動とゲップを引き起こしますが、これらの反応は100%起こるわけではありません。一方、急速な拡張刺激は食道のどこを刺激しても常に食道声門収縮反射とゲップを引き起こします。関与している神経は迷走神経です(Shaker, 1994)。
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神経生理学的にみると猫はゲップができます。猫の食道内部をゆっくりと内側から拡張すると、上部食道括約筋の収縮反射と下部食道括約筋の弛緩反射が起こることが確認されています(Lang, 2012)。要するに食道に入ってきたものを口に逆流させないよう入口を閉じると同時に、胃袋にスムーズに送り込むよう出口を開け放った状態です。
反射は食道のどの部分でも起こりますが、特に胃に近い部分を刺激した方が起こりやすいとのこと。またゆるやかな拡張刺激は嚥下(ごくっと飲み込むこと)も引き起こします。人間の体を見本にした図解は以下です。 【画像の元動画】Heartburn, Acid Reflux, GERD-Mayo Clinic ゆるやかな拡張刺激は食道の二次的な蠕動運動とゲップを引き起こしますが、これらの反応は100%起こるわけではありません。一方、急速な拡張刺激は食道のどこを刺激しても常に食道声門収縮反射とゲップを引き起こします。関与している神経は迷走神経です(Shaker, 1994)。
猫は成長してからも子猫時代と同じようにゲップ自体はできるようです。
猫の胃上位ゲップ症
胃上位ゲップ症(supragastric belch, SGB)とは、食道内に入った空気が急速に食道内壁を刺激することにより、空気が胃に到達する前にゲップとして外に出される現象。人間で確認されている胃上位ゲップ症が猫にも起こりうる可能性が示されています。
胃上位ゲップ症と診断された100人を対象とした調査では、24時間におけるゲップの回数が中央値で69回、平均値で101回だったと言います。それに対し臨床上健康な人のゲップ回数は平均3回でした。
ゲップの発生には食道の運動不全や胃からの逆流が関係していると考えられていますが、SGB自体が胃からの逆流を誘発しているという可能性も指摘されています(Koukias, 2015)。
この胃上位ゲップ症は、どうやら猫にも起こり得るようです。筋電図を用いた調査により、食道内にある受容器が食道内腔の伸び縮みを感知し、迷走神経に信号を送ることで人間と同じ現象が発生することが確認されています(Lang, 2017)。急速な空気の吸い込みには食道裂孔の神経、ゲップ反射には横隔膜の筋肉に分布する神経が関与しているとのこと。また胃酸の存在によってゲップ反射が増強されることも確認されました。
人間の患者で確認されている主な症状は、頻繁なゲップのほかに嚥下困難、胸焼け、胸の痛み、腹部の膨満感、胃痛などです。また29%では食道裂孔ヘルニアを併発していたとも。睡眠中、話している最中、 何かに気を取られている最中において発生頻度が減ることから、心理的な要因も発症に関わっているのではないかと推測されています。
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胃上位ゲップ症と診断された100人を対象とした調査では、24時間におけるゲップの回数が中央値で69回、平均値で101回だったと言います。それに対し臨床上健康な人のゲップ回数は平均3回でした。
ゲップの発生には食道の運動不全や胃からの逆流が関係していると考えられていますが、SGB自体が胃からの逆流を誘発しているという可能性も指摘されています(Koukias, 2015)。
この胃上位ゲップ症は、どうやら猫にも起こり得るようです。筋電図を用いた調査により、食道内にある受容器が食道内腔の伸び縮みを感知し、迷走神経に信号を送ることで人間と同じ現象が発生することが確認されています(Lang, 2017)。急速な空気の吸い込みには食道裂孔の神経、ゲップ反射には横隔膜の筋肉に分布する神経が関与しているとのこと。また胃酸の存在によってゲップ反射が増強されることも確認されました。
人間の患者で確認されている主な症状は、頻繁なゲップのほかに嚥下困難、胸焼け、胸の痛み、腹部の膨満感、胃痛などです。また29%では食道裂孔ヘルニアを併発していたとも。睡眠中、話している最中、 何かに気を取られている最中において発生頻度が減ることから、心理的な要因も発症に関わっているのではないかと推測されています。
獣医学に「胃上位ゲップ症」という診断名はありませんが、食道裂孔ヘルニアを発症した猫では同じ症状が現れる可能性があります。
猫のゲップ反射不全
ゲップ反射不全とは胃や食道に入ってきた空気を体の外に出せなくなる病気のこと。人医学の領域では非常に稀な症例として報告されています(Kahrilas, 1987)。
生まれてから数回しかゲップをしたことがないという25歳になる女性の症例では、食道が空気で拡張することによって外に出そうとする反射は起こるものの、食道の入口部分がタイミングよく開かず、空気が止まったままになるという病態が確認されました。溜まった空気は食道の二次的な蠕動運動によって消化管内に送られていましたが、その代償として胸の痛みと胸元から聞こえる「うがい」のような音が症状として現れました。要するに外に出すべき無駄な空気を体の中にどんどん取り込んでしまった状態です。
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生まれてから数回しかゲップをしたことがないという25歳になる女性の症例では、食道が空気で拡張することによって外に出そうとする反射は起こるものの、食道の入口部分がタイミングよく開かず、空気が止まったままになるという病態が確認されました。溜まった空気は食道の二次的な蠕動運動によって消化管内に送られていましたが、その代償として胸の痛みと胸元から聞こえる「うがい」のような音が症状として現れました。要するに外に出すべき無駄な空気を体の中にどんどん取り込んでしまった状態です。
猫は「胸焼けがする」と言った不快感を言葉で伝えることができず、また医学的な検査で確認することも困難です。存在しているけれども認識されていないという可能性はあるでしょう。
ゲップに現れる病気のサイン
成長した猫はほとんどゲップをすることがありません。そもそもゲップをしていないのか、それともほとんど音を出さないため気づかれていないだけなのかはわかりませんが、人間の耳に聞こえるような大きなゲップをしている場合は、よほど重大な異常を抱えていると言い換えることもできます。
食後や毛づくろいをした後に軽く1~2回ゲップをするくらいでしたら正常の範囲内です。しかし食事のたびごとに何回も続けて出るようでしたら、フードのボリュームを増すために混入された混ぜ物が消化不良を起こしてる可能性があります。少し高級なものに切り替えてみましょう。またゲップが1日以上続くようでしたら、さまざまな胃腸の障害が考えられますので獣医さんに相談します。
猫にガム、喫煙、炭酸飲料は無関係でしょうが、あまりにも早食いの場合は餌と一緒に空気を飲み込んでしまうかもしれません。また授乳中の子猫においてはミルクと一緒に空気を飲み込んでしまうことが多いため、胃に溜まった空気をゲップとして吐き出させてあげる必要があります。
食後や毛づくろいをした後に軽く1~2回ゲップをするくらいでしたら正常の範囲内です。しかし食事のたびごとに何回も続けて出るようでしたら、フードのボリュームを増すために混入された混ぜ物が消化不良を起こしてる可能性があります。少し高級なものに切り替えてみましょう。またゲップが1日以上続くようでしたら、さまざまな胃腸の障害が考えられますので獣医さんに相談します。
ゲップから考えられる病気
人間では空気嚥下症(呑気症, どんきしょう)と呼ばれる状態があります。これは口から飲み込んだ空気が食道を通過して胃にまで到達してしまう現象のことです。原因としてはガム、喫煙、炭酸飲料、早食いのほか、不安を軽減するための転嫁行動などが想定されています。主な症状は腹部の膨満感、腹痛、胸の圧迫感、胸焼け、吐き気、嘔吐、息切れ、頻繁なゲップなどです。 猫にガム、喫煙、炭酸飲料は無関係でしょうが、あまりにも早食いの場合は餌と一緒に空気を飲み込んでしまうかもしれません。また授乳中の子猫においてはミルクと一緒に空気を飲み込んでしまうことが多いため、胃に溜まった空気をゲップとして吐き出させてあげる必要があります。
音はなくても頻繁に口を開けて空気を吐き出すような仕草をしている場合は要注意です。