猫の繁殖期
繁殖期(はんしょくき)とは、交尾をして子孫を残そうとする欲求が高まる限定的な時期のことです。メス猫は「季節性の多発情動物」と言われます。「季節性」とは、季節に連動して繁殖期が訪れることを意味し、「多発情」とは1年の内に複数回の発情期を迎えることを意味します。
猫の繁殖期はいつ?
1年中交尾が可能な人間とは違い、犬や猫は繁殖に適した時期というものがあります。この時期を万全な状態で迎えるには、まず春機発動を終えなければなりません。
春機発動
「春機発動」(しゅんきはつどう)とは、異性を受け入れる準備が整うことです。
メス猫の春機発動時期は、年齢、オス猫の存在、発情メス猫の存在、季節、天候などの影響を受けて変動します。例えば、飼い猫の場合は3.5~12ヶ月齢、平均すると5~9ヶ月齢で現れるのに対し、野良猫の場合は15~18ヶ月とやや遅れて現れます。
オス猫の春機発動時期は、飼い猫の場合は約9~12ヶ月齢、野良猫ではやや遅れる傾向があり、約18ヶ月齢です。男性ホルモンの一種であるテストステロン濃度が体内で上昇し、他のオス猫に対する攻撃性が増すと同時に、スプレーの頻度が高まります。
なお、オス猫の一般的な性成熟過程は以下です。
メス猫の春機発動時期は、年齢、オス猫の存在、発情メス猫の存在、季節、天候などの影響を受けて変動します。例えば、飼い猫の場合は3.5~12ヶ月齢、平均すると5~9ヶ月齢で現れるのに対し、野良猫の場合は15~18ヶ月とやや遅れて現れます。
オス猫の春機発動時期は、飼い猫の場合は約9~12ヶ月齢、野良猫ではやや遅れる傾向があり、約18ヶ月齢です。男性ホルモンの一種であるテストステロン濃度が体内で上昇し、他のオス猫に対する攻撃性が増すと同時に、スプレーの頻度が高まります。
なお、オス猫の一般的な性成熟過程は以下です。
オス猫の性成熟
- 3.5ヶ月齢テストステロンの作用で、陰茎棘(いんけいきょく)が発育し始める。陰茎棘とはペニスの表面にあるトゲのこと。
- 4ヶ月齢マウンティング(腰に乗る)、ペルヴィックスラスト(腰を振る)、ネックグリップ(うなじに噛み付く)など、交尾行動の予行演習とも言える動きを見せるようになる。
- 5ヶ月齢精巣が十分に成熟して精子を形成できるようになる。
- 6~7ヶ月齢ペニスが成猫レベルに達し、精細管内に精子が出現するようになる。
メス猫の繁殖期
メス猫の繁殖期のピークは2~4月上旬、および6~8月の間に多く見られます。繁殖期が比較的温暖な時期に集中しているのは、エサが少なく環境の厳しい冬よりも、エサが豊富で環境が温順な季節に出産した方が新生子の生存率が高まるためです。イギリス・エジンバラ大学のロジャー・ショート教授は「季節繁殖とは、自然による避妊メカニズムである」と表現しています。
繁殖期のピークは、緯度が北に寄れば寄るほど、上記したものより遅くなり、逆に南に寄れば寄るほど早まると言われます。繁殖期の回数は通常2回ですが、野良猫の場合は年1回、短毛種の場合は3回以上など、生活環境や種によってまちまちです。なお、年齢的に繁殖のピークは2~8歳ですが、30歳で出産したという世界記録もあります。
オス猫の繁殖期
猫を始め、ウマ、ヒツジ、ヤギなど、メスの繁殖期が固定されている動物種の場合、オスの発情期もそれに連動する傾向が生まれます。具体的には、メスが発情する季節に合わせてオスのテストステロン濃度が上昇するというものです。こうしたメカニズムは、繁殖期におけるオス同士の「メス争奪戦」を促す一方、非繁殖期においては無駄な争いを避けるという効率性につながっています。
猫の繁殖期を左右するもの
春機発動を迎えた猫は、以後、1年の一定の時期に訪れる繁殖期に合わせて異性を受け入れるようになります。しかし、繁殖期の開始時期は様々な要因によって左右されます。
例えば、1日の日照時間が12~14時間程度になると、その44~45日後に発情が誘発されると言われます。光と発情が連動する理由は、光をとらえる網膜、メラトニンと呼ばれるホルモン、脳の視床下部などが複雑に作用し合っているからです。光は太陽光でも人工灯でも同等で、数週間、日照時間を約9時間に制限した後、人為的に14時間にまで延長すると、たとえ時期が冬でも猫に発情が訪れるそうです。一部のブリーダーは、このようにして猫の繁殖期をコントロールすることがあります。
オス猫や発情しているメス猫が近くにいると、3~4日の内に繁殖期に入るとも言われています(Deagら, 1988)。発情したメス猫の膣分泌液に「吉草酸」が増えることから、この物質が関わっているのではないかと推定されています。
メス猫の発情周期
発情周期(はつじょうしゅうき)とは、繁殖期中における発情サイクルのことです。具体的には「発情前期」「発情期」「発情後期」「発情休止期」から成ります。この発情周期は一巡するのに5~73日間と非常に大きな個体差がありますが、多くは14~21日の間です。
健康なメス猫の場合、定期的に発情周期を繰り返しますが、時に鈍性発情(どんせいはつじょう)と呼ばれる現象が起こることもあります。鈍性発情とは、卵巣の働きは正常であるにもかかわらず、通常は見られるはずの様々な発情徴候が観察されない状態のことです。原因は定かではありませんが、性ホルモンの分泌異常、生殖器の病気、精神的ストレスなどが関わっていると考えられています。
発情前期
発情前期は約1~3日間しか続かない比較的短い期間です。全ての猫に見られるわけではなく、83.9%の猫では欠落しているという観察結果もあります(Shille, 1979)。この時期におけるメス猫の特徴的な行動は以下です。
まずメス猫は、フェロモンによってなるべく多くのオス猫を引き付け、わざとケンカが起こりやすい状況を作ります。そして「メス猫争奪戦」を勃発させ、最も強いオス猫を見定めようとしているのです。最終的に勝ち残った優勝者は、メス猫の目には「生存能力が高いステキな殿方」と映り、交尾の第一候補になるというわけです。ただし、争奪戦で優勝したオス猫が必ずしも交配の権利を得られるわけではなく、観客として傍観していた全く無関係なオス猫が、なぜかメスに選ばれることもあるとか。
発情前期のメス猫の行動
- わずかに活発になる女性ホルモンの一種「エストロゲン」の作用で活動性が増します。万歩計を使って人間の女性の活動量を調べたところ、排卵の直前、すなわちエストロゲン濃度が体内で上昇する時期に合わせて歩行量が増加したといいます。この時期のメス猫も、恐らく同じメカニズムを通して活動性が増すのでしょう。
- こすり付け行動が増えるこすり付け行動は、のどをゴロゴロ鳴らしながら爪を出し入れしたり、身もだえしたり床の上を転がったりしたりすることです。この行動を飼い主が見ると「妙に人懐こくなった」という印象を与えるかもしれません。こすり付けの対象は物だったり、人だったり、オス猫だったり様々です。
- オス猫に優しくなるオス猫が腰に乗る「マウンティング」や、うなじに噛み付く「ネックグリップ」を受け入れるようになります。ただし、まだ交尾までは許しません。
- 「盛り」の鳴き声を発する抑揚の無い、犬の遠吠えのような「盛り」の鳴き声を発するようになります。この声をオス猫が真似し、それにメス猫が応え、さらにオス猫が応答するというやりとりが見られることもあります。最長では1回の鳴きで3分以上続くことも。
- スプレーをするスプレーによってオス猫をひきつけます。スプレーとは通常のおしっことは違い、しっぽを上げて後方に撒き散らすように放出する尿のことです。この尿には「フェロモン」と呼ばれる、オス猫を引き付けてやまない成分が含まれています。
まずメス猫は、フェロモンによってなるべく多くのオス猫を引き付け、わざとケンカが起こりやすい状況を作ります。そして「メス猫争奪戦」を勃発させ、最も強いオス猫を見定めようとしているのです。最終的に勝ち残った優勝者は、メス猫の目には「生存能力が高いステキな殿方」と映り、交尾の第一候補になるというわけです。ただし、争奪戦で優勝したオス猫が必ずしも交配の権利を得られるわけではなく、観客として傍観していた全く無関係なオス猫が、なぜかメスに選ばれることもあるとか。
発情期
発情期は、メス猫がオス猫のアプローチを受け入れる時期です。交尾があれば約4日、交尾がなければ5~10日程度続きます。オス猫を最も受け入れやすくなるのは開始3~4日目と言われます。
発情期初日に1度だけ交尾したメス猫の排卵率が60%であるのに対し、5日目では83%にまで高まると言います(Tsutsui, 2009)。メス猫が発情期の初期においてなかなかオスを受け入れようとしないのは、自分の排卵しやすいタイミングを本能的に知っているからかもしれません。なお、発情5日目で3回交尾した場合の排卵率は100%にまで高まるとのこと。 発情期を迎えたメス猫は、オス猫のマウンティングに対してロードーシスと呼ばれる態度を示すようになります。ロードーシス(lordosis)とは、日本語で「脊柱前彎」(せきちゅうぜんわん)と言い、メス猫がこの時期にだけに見せる特徴的な受け入れ姿勢のことです。具体的には両方の前足を伸ばして上半身を地面につけ、お尻を持ち上げて膝を曲げます。そして、しっぽを左右のどちらかに巻きつけるようにして外陰部を露出し、後肢で足踏みしながら体を揺らします。なお、このロードーシスは、背中、太もも、首筋などをなでることでも誘発することができるとか。
発情期は、交尾があった場合24時間以内に突然終了しますが、なかった場合は発情周期に合わせ、5~10日間継続します。なお、実際の交尾行動に関しては後のセクションで詳述します。
発情期初日に1度だけ交尾したメス猫の排卵率が60%であるのに対し、5日目では83%にまで高まると言います(Tsutsui, 2009)。メス猫が発情期の初期においてなかなかオスを受け入れようとしないのは、自分の排卵しやすいタイミングを本能的に知っているからかもしれません。なお、発情5日目で3回交尾した場合の排卵率は100%にまで高まるとのこと。 発情期を迎えたメス猫は、オス猫のマウンティングに対してロードーシスと呼ばれる態度を示すようになります。ロードーシス(lordosis)とは、日本語で「脊柱前彎」(せきちゅうぜんわん)と言い、メス猫がこの時期にだけに見せる特徴的な受け入れ姿勢のことです。具体的には両方の前足を伸ばして上半身を地面につけ、お尻を持ち上げて膝を曲げます。そして、しっぽを左右のどちらかに巻きつけるようにして外陰部を露出し、後肢で足踏みしながら体を揺らします。なお、このロードーシスは、背中、太もも、首筋などをなでることでも誘発することができるとか。
発情期は、交尾があった場合24時間以内に突然終了しますが、なかった場合は発情周期に合わせ、5~10日間継続します。なお、実際の交尾行動に関しては後のセクションで詳述します。
発情後期
発情後期は、膣垢(スメア)に白血球が出現することで特徴付けられる時期です。通常は24時間以内に終了します。この時期のメス猫は発情前期同様、オス猫のマウンティングは許容するものの挿入は拒絶するようになります。
注意すべきは、この時期に子宮蓄膿症を発症することがあるという点です。メス猫の体重は徐々に重くなり、腹部が腫れるため、あたかも妊娠したかのような様相を呈します。原因としては、発情期における過剰なプロゲステロン分泌が子宮内膜を増殖させ、そこで細菌が増殖してしまうことだと考えられています。「水をたくさん飲む」「熱がある」「おなかが膨らむ」「陰部から膿が出る」などの症状が見られた場合は、この疾患を疑ったほうがよいでしょう。
注意すべきは、この時期に子宮蓄膿症を発症することがあるという点です。メス猫の体重は徐々に重くなり、腹部が腫れるため、あたかも妊娠したかのような様相を呈します。原因としては、発情期における過剰なプロゲステロン分泌が子宮内膜を増殖させ、そこで細菌が増殖してしまうことだと考えられています。「水をたくさん飲む」「熱がある」「おなかが膨らむ」「陰部から膿が出る」などの症状が見られた場合は、この疾患を疑ったほうがよいでしょう。
発情休止期
発情休止期とは、メス猫がオス猫に対する関心を失う時期のことです。避妊手術で卵巣を除去したメス猫においては、1年中ずっと「発情休止期」ということになります。
発情休止期におけるメス猫は、基本的にオス猫を邪険に扱い、よくてもせいぜい無関心です。もし血気盛んなオス猫がマウンティングでもしようものなら、しっぽで陰部を隠し「シャー!」という威嚇音を出してネコパンチを繰り出すことさえあります。当然、ロードーシス姿勢を取ることもありません。
また、この時期におけるメス猫の陰部の臭いを嗅いだ後、オス猫がすぐさま引き返す行動が見られると言います。
発情休止期におけるメス猫は、基本的にオス猫を邪険に扱い、よくてもせいぜい無関心です。もし血気盛んなオス猫がマウンティングでもしようものなら、しっぽで陰部を隠し「シャー!」という威嚇音を出してネコパンチを繰り出すことさえあります。当然、ロードーシス姿勢を取ることもありません。
また、この時期におけるメス猫の陰部の臭いを嗅いだ後、オス猫がすぐさま引き返す行動が見られると言います。
このことから、メス猫は何かしら不快なにおいを発することで、積極的にオス猫の接近を拒絶している可能性もあります(Michael RP, 1961)。「逆フェロモン」なのでしょうか?
猫の交尾
交尾(こうび)とは、オス猫がメス猫の膣内にペニスを挿入し、射精することです。発情周期のうち、メス猫の気持ちが最も高まっている発情期において行われます。
交尾行動の前段階
実際の交尾に入る前に、オス猫もメス猫も特徴的な振る舞いをします。
メス猫の場合は、先述した通り「発情前期」における「こすり付け」「鳴き叫び」「スプレー」などの行動パターンがそれです。一方、オス猫の場合は「縄張り意識の高まり」や「他のオス猫への攻撃性上昇」が顕著になります。
縄張りはスプレーによって強調されます。スプレーとは、通常のおしっことは違い、お尻を高く持ち上げて後方に撒き散らすように放出する尿のことです。このスプレーは、縄張りの辺縁で頻繁に観察されるため、他のオス猫を跳ねつける「赤信号」としての意味をもっていると推測されています。つまり「そのまま進むと痛い目に遭うぞ!」と、他のオス猫に対し警告を発しているのです。通常、オス猫は見知らぬ場所で交尾を行うことがないため、時間を掛けて十分に自分の匂いをつけた縄張りは、交尾を成功させる上で極めて重要な場所と言えるでしょう。 攻撃性の上昇は、通常オス猫同士のケンカという形になって現れます。盛りの付いたオス猫が繁殖区域内で出会うと、至近距離でにらみ合い、奇妙な甲高い声を上げてお互いを威嚇します。もし相手が引き下がらないような場合は、実際の攻撃行動に移ることもしばしばです。ただし、一度決着が付いてしまうと、仮に一戦を交えたオス同士が他の場所で再び出会っても改めてケンカを始めるということはないとのこと(Natoli, 1991)。
メス猫の場合は、先述した通り「発情前期」における「こすり付け」「鳴き叫び」「スプレー」などの行動パターンがそれです。一方、オス猫の場合は「縄張り意識の高まり」や「他のオス猫への攻撃性上昇」が顕著になります。
縄張りはスプレーによって強調されます。スプレーとは、通常のおしっことは違い、お尻を高く持ち上げて後方に撒き散らすように放出する尿のことです。このスプレーは、縄張りの辺縁で頻繁に観察されるため、他のオス猫を跳ねつける「赤信号」としての意味をもっていると推測されています。つまり「そのまま進むと痛い目に遭うぞ!」と、他のオス猫に対し警告を発しているのです。通常、オス猫は見知らぬ場所で交尾を行うことがないため、時間を掛けて十分に自分の匂いをつけた縄張りは、交尾を成功させる上で極めて重要な場所と言えるでしょう。 攻撃性の上昇は、通常オス猫同士のケンカという形になって現れます。盛りの付いたオス猫が繁殖区域内で出会うと、至近距離でにらみ合い、奇妙な甲高い声を上げてお互いを威嚇します。もし相手が引き下がらないような場合は、実際の攻撃行動に移ることもしばしばです。ただし、一度決着が付いてしまうと、仮に一戦を交えたオス同士が他の場所で再び出会っても改めてケンカを始めるということはないとのこと(Natoli, 1991)。
繁殖期のオス猫のケンカ
なお、メス猫が発情期にある間のオス猫を観察したところ、何とオス猫同士が合計26回ものマウンティング行為を見せたといいます(Yamane, 1999)。また上に乗るのは、体が大きく年長で、支配的な性格を持った猫だったとのこと。研究者たちは仮説として「メス猫と間違えた」「優位性の誇示」「予行演習」「単なるケンカ」「欲求のはけ口」などを挙げていますが、恐らく最後の「欲求のはけ口」だろうとしています。メス猫が発情期にあるときのオス猫同士のマウンティングは、それほど異常な行為ではないようです。
猫の交尾行動
ライバルとの競り合いに勝ったオス猫は、フェロモンや鳴き声を発しているメス猫に近づき、いよいよ念願の交尾行動を開始します。交尾行動は平均して1~9分間続き、経験を積んだオス猫の場合、挿入までには1.8分あれば十分だと言います。
最初の2時間がもっとも活発で3~6回交尾し、その後休憩を挟みながら24時間で15回程度行うことも珍しくありません。中には36時間で36回交尾したという猛者(もさ)の記録もあります。
猫の交尾において見られる行動パターンは以下です。
猫の場合、オス猫がメスの膣内からペニスを引き抜く刺激が引き金となり、排卵が起こると考えられています。オスのペニスにたくさんの小さなトゲがついているのは、恐らく効果的に排卵を誘発するためなのでしょう。ちなみに、猫の排卵はガラス棒による人工刺激でも誘発できます。
最初の2時間がもっとも活発で3~6回交尾し、その後休憩を挟みながら24時間で15回程度行うことも珍しくありません。中には36時間で36回交尾したという猛者(もさ)の記録もあります。
猫の交尾において見られる行動パターンは以下です。
猫の交尾行動(射精まで)
- 騒々しく鳴く交尾に入る直前、オス猫はギャーギャーと騒々しい声で鳴きます。この鳴き声は、メス猫に対しては自分の位置を教えると同時に、オス猫に対して「近づくなよ!」というメッセージを伝えます。
- ネックグリップメス猫のうなじ部分にある、たるんだ皮膚を口にくわえます。これが「ネックグリップ」です。子猫は首筋の皮膚をつかまれると全身の力が抜け「不動化反射」を起こします。オス猫のネックグリップも、恐らくこの反射を利用してメス猫を制御しやすくしているのでしょう。
- マウンティングオス猫は前足でメスの上半身を抱え込み、後足を体の両脇にセットします。これが「マウンティング」です。オス猫の抱え込みが始まると、メスは上半身をより一層地面に押し付けるようにし、下半身をより高く持ち上げます。オスは背中を弓なりに曲げ、後足で足踏みするようにして体を左右に振ります。
- ペルヴィックスラストオス猫は勃起したペニスを挿入する前、腰を何度か突き出すように動かし、メスの性器の位置を確認します。これが「ペルヴィックスラスト」です。実際にペニスが挿入されるのは、最後のやや力強い突き出しの後で、挿入後、オスは5~15秒間、活発に腰を動かし射精に至ります。交尾中のメス猫は、怒りや恐怖を感じているかのような苦悶の表情を見せることがあります。
猫の交尾行動(射精以降)
- アフターリアクション射精が終わると、オス猫はすばやくメスの体から飛びのきます。それと前後して、メス猫は激しく声を上げ振り返り、オスに一撃を加えようとします。これが「アフターリアクション」です。オス猫がペニスを抜くと、50%以上のメスは甲高い声で叫び、7割以上がオスの方を振り返って攻撃行動を示すというデータもあります(Root, 1995)。
- アフターケア交尾後、両者は生殖器周辺を自分で舐めてきれいにします。これが「アフターケア」です。
- 不応期交尾の終わったメス猫は床の上で転げまわり、伸びをしたり自分の生殖器を舐めたりします。これは1~7分程度です。一時的に相手に対する興味を失うのが「不応期」で、長さは11~95分、平均すると19分程度です。不応期が過ぎると、再び交尾に入ります。
なお、慣れたペア同士の場合、20分間で8回、1時間で10回交尾することもあるとか。また、メス猫は発情期を通じて50回以上交尾することも珍しくありません。
猫の交尾動画
猫は毎月定期的に自然排卵する人間とは違い、交尾を行って初めて排卵が起こる交尾排卵動物(こうびはいらんどうぶつ)です。同じ特性を持った動物としては、ウサギやラクダなどが挙げられます。猫の場合、オス猫がメスの膣内からペニスを引き抜く刺激が引き金となり、排卵が起こると考えられています。オスのペニスにたくさんの小さなトゲがついているのは、恐らく効果的に排卵を誘発するためなのでしょう。ちなみに、猫の排卵はガラス棒による人工刺激でも誘発できます。
交尾後、約24~27時間で排卵が起こりますが、これはオス猫の精子が受精能を獲得するまでの時間とほぼ一致しています。結果として、受精の確率が最大限に高まるという仕組みです。猫が持つ高い繁殖力を支えている巧妙なメカニズムですね!