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スフィンクスに多い病気~原因・遺伝性から検査・治療法まで

 スフィンクスがかかりやすい病気を原因、遺伝性、検査法、治療法などに分けて一覧リストでご紹介します。なお出典データには海外のものも含まれているため日本に暮らしている猫には必ずしも当てはまらないことがあります。

先天性心疾患

 先天性心疾患とは生まれつき心臓に障害を抱え、血液をうまく全身に送り出すことができない病気。心臓の筋肉が障害を受ける心筋症や心臓の弁が障害を受ける弁形成不全、心臓の壁が障害を受ける中隔欠損症などがあります。猫の心臓の病気

有病率

  2004年から2011年の期間、114頭のスフィンクス(平均2.62歳)を対象として身体検査、心エコー検査、そして可能な場合は組織カラードップラー検査を行った所、心エコー検査で39頭(34.2%)に異常が見られ、先天性心疾患16頭、肥大性心筋症23頭という内訳だったといいます。先天性心疾患では94%(15/16頭)で僧帽弁形成不全が見られ、年齢の増加とともに心筋症の有病率が上昇する傾向が確認されたとも。この品種における肥大性心筋症と僧帽弁形成不全は常染色体優性遺伝による遺伝病の一種と考えられるものの、具体的な遺伝型を確定するためにはもっと多くの調査対象が必要だとしています(→出典)。

色素性蕁麻疹(?)

 色素性蕁麻疹とは皮膚の中で増えた肥満(マスト)細胞が化学物質を放出することで、広い範囲に色素沈着を伴うぶつぶつができてしまう病気。スフィンクスで見られる色素性蕁麻疹

疾患遺伝子(?)

 1996年、アメリカ・カリフォルニア大学デイヴィス校のチームが、人医学の色素性蕁麻疹と同じ臨床症状を示す血のつながりがある3頭のスフィンクスの症例を報告しました。症状は両側対称性の斑点状丘疹が体幹、四肢、首、頭に発生するというもので、斑の中には痂皮(かさぶた)を伴うものや色素が沈着しているものがあったとも。祖父母にあたる猫が共通していたものの、はっきりとした遺伝性があるのかどうかはわからないとしています(→出典)。

脂漏性皮膚炎

 脂漏性皮膚炎は皮脂が分泌される部位に限局性で発症する皮膚炎のこと。マラセチア菌との関連が疑われていることから、皮膚細胞診などを通して診断が下されます。治療は抗菌薬の投与や抗菌作用を持った薬剤によるシャンプー(薬浴)がメインです。 脂漏性皮膚炎の症状・原因・治療

マラセチアとの関係

 2010年、イギリス王立獣医大学の調査チームがスフィンクス18頭を対象とし、外耳、肛門、爪の根元にあるシワ、脇、股間からサンプルを採取してマラセチアが検出されるかどうかを確認しました。その結果、18頭すべてからマラセチアが検出され、内訳はM pachydermatisが圧倒的に多かったといいます。特に爪の根元、脇、股間から検出されたM pachydermatisは、同時に調査された短毛種、コーニッシュレックス、デボンレックスに比較して多く、過去に脂漏性皮膚炎を発症したデボンレックスと同レベルだったといいます(→出典)。
 2009年、スウェーデンの調査チームが32頭のスフィンクスと10頭の普通の短毛種を対象とし、体の7ヶ所(左右の脇と股間、左の外耳、左前足の爪の根元にあるシワ、左前足の指間にあるみずかき状皮膚)におけるマラセチアの保有状態を調べた所、短毛種での保有率が0%だったのに対し、スフィンクスのそれは81%(26/32)に達したといいます。また26頭中21頭では複数箇所から検出されたとも。さらに種類としてはMalassezia pachydermatisが圧倒的に多く、脂っぽい皮脂が確認された5頭では全頭で複数箇所からこの亜種が検出されたそうです。脂漏性皮膚炎を発症したデボンレックスと同レベルだったことから、マラセチア性の脂漏性皮膚炎に対する脆弱性を有しているのではないかと推測されています(→出典)。

先天性筋無力症

 先天性筋無力症とは神経と筋肉の接合部に何らかの機能不全が起こり、筋力や持久力の低下をきたす病気。 スフィンクスの品種特有疾患「先天性筋無力症」(CMS)

疾患遺伝子

 患猫ではネコC2染色体にあるCOLQ遺伝子に異常があり、神経と筋肉をつなぐモーターユニット終末部におけるα-ジストログリカンの発現に異常が起こり、筋肉がうまく収縮しないことが判明しています(→出典)。また遺伝形式は常染色体劣性遺伝で、スフィンクスとデボンレックス以外の14品種に属する合計333頭の猫では見られなかったとも(→出典)。

子宮蓄膿症

 子宮蓄膿症とは、メス猫の子宮内に病原体が入り込み、炎症反応が起こって膿が溜まってしまう病気。診断は血液検査や尿検査、エックス線や超音波検査を通して下します。治療は抗生物質による投薬治療や外科的な子宮摘出がメインです。 子宮蓄膿症の症状・原因・治療

有病率

 2014年、スイス農科学大学の調査チームはペット保険会社に対する1999年~2006年の請求データを元に、猫における子宮蓄膿症の発生率を調査しました(→出典)。その結果、猫全体における発生率が1万頭中17ケースだったのに対し、スフィンクスでは433ケースと標準の25倍近い発症が確認されたといいます。調査チームは明確なメカニズムまではわからないものの、猫の中には当疾患を発症しやすい品種があるようだとしています。

尿酸塩尿石症(?)

 下部尿路症候群(LUTD)とは、膀胱から尿道口をつなぐまでのどこかに結石などを生じてしまう病気。猫ではシュウ酸カルシウム結石やストラバイト結石が大半を占めていますが、まれに尿酸塩(アンモニア・ナトリウム・シスチン・キサンチン)が結石を形成することもあります。診断は尿内の結晶検査やエックス線撮影で下します。治療は結石の除去と食事療法がメインです。 下部尿路症候群の症状・原因・治療

発症リスク

 1981年1月から2008年12月の期間中、ミネソタ尿石センターに蓄積されたデータの中から尿酸塩結石を発症した猫5,072頭と発症していない比較対照群437,228頭とを選び出し、結石の発症リスクを高めている要因を検証しました(→出典)。その結果、純血種、不妊手術(12倍)、4~7歳の年齢層(51倍)という因子が浮かび上がってきたといいます。さらに品種ごとにリスクを計算した所、スフィンクスで12.9倍(4/28)のリスクが確認されたとも。ただし調査対象となった猫の数が28頭とそもそも少ないことから、確定的なデータではないとしています。