糖尿病
糖尿病とは血流中の糖分(グルコース)をうまく細胞内に取り込むことができず、血糖値が高い状態で維持されてしまう病気。診断は身体検査や血糖値の測定を通して下します。治療法はインスリンの投与と食事療法がメインです。
有病率と発症リスク
2009年9月~2014年8月の期間、王立獣医大学のチームがイギリス国内にある118の動物病院を受診した合計194,563頭の猫を対象として大規模な疫学調査を行った所、シャムの有病率は0.49%、発症リスクは標準の1.1倍になることが明らかになりました(→詳細)。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫(リンパ肉腫)とは、リンパ組織に含まれる細胞が悪性化して腫瘍になったもの。診断は採取した組織サンプルを組織学的に調査することで下します。治療法は外科的な切除や抗癌剤による投薬治療などがメインです。
発症リスク
カリフォルニア大学デイヴィス校は1983年から2003年の期間、大学付属の動物病院において悪性リンパ腫と診断された猫たちの医療データを元に、発症リスクに関係のある因子が何であるかを検証しました(→出典)。調査チームが猫の品種ごとにリスクを計算していった所、若いシャムでは縦隔の悪性リンパ腫を発症しやすいことが明らかになったといいます。このタイプの腫瘍はペルシャやその血統が混じった品種では全くと行っていいほど見られなかったことから、シャム特有の何らかの遺伝子が関わっているものと推測されています。また年老いたシャムでは消化管の腺腫が標準の8倍近く発症しているという事実にも行き当たりました。縦隔腫瘍とは好発年齢が違うことから、こちらには全く別の遺伝的な要因が強く疑われるとしています。
難産
難産とは出産に際して胎子をスムーズに体外に分娩することができない状態のこと。胎子が大きすぎて母猫の産道を通過できない場合は、帝王切開が行われることもあります。
発症率
進行性網膜萎縮症
疾患遺伝子保有率
2009年、アメリカにあるフレデリック国立がん研究所の調査チームは、アビシニアンやソマリを対象とした遺伝子検査によって進行性網膜萎縮症の原因遺伝子と確認されている「CEP290」の変異(rdAc)に関する大規模な調査を行いました(→出典)。41品種に属する846頭の猫を対象として遺伝子調査を行った所、最低1本保有している個体が16品種で確認されたといいます。また特に欧米のシャムにおいては33%(3頭に1頭)という非常に高い割合で保有していることが明らかになったとも。調査チームは、変異遺伝子によって引き起こされる進行性網膜萎縮症はアビシニアンやソマリに限定されるものではなく、他の純血種においても起こりうるものだと警告しています。
子宮蓄膿症
子宮蓄膿症とは、メス猫の子宮内に病原体が入り込み、炎症反応が起こって膿が溜まってしまう病気。診断は血液検査や尿検査、エックス線や超音波検査を通して下します。治療は抗生物質による投薬治療や外科的な子宮摘出がメインです。
発症リスク
2014年、スイス農科学大学の調査チームはペット保険会社に対する1999年~2006年の請求データを元に、猫における子宮蓄膿症の発生率を調査しました(→出典)。その結果、猫全体における発生率が1万頭中17ケースだったのに対し、シャムでは84ケースと4.9倍近い発症が確認されたといいます。調査チームは明確なメカニズムまではわからないものの、猫の中には当疾患を発症しやすい品種があるようだとしています。
ウールサッキング
ウールサッキングとは、明白な理由もなく羊毛など栄養成分を持たないものに吸い付く異常行動のこと。「異食症」(pica)とも呼ばれます。
発症要因
2015年、アメリカ・マサチューセッツ州にある複数の大学は、ウールサッキングを発症したシャム(患猫50+健常猫52頭)とバーマン(患猫52頭+健常猫50頭)合計204頭を対象とした比較調査を行いました(→出典)。猫たちの来歴や生活環境と発症との関係性を統計的に検証していった所、医療問題を抱えているシャムの発症率が58%だったのに対し、抱えていないシャムのそれが38.5%と大きな開きが見られたといいます。医療問題の具体的な内容は多様で、歯科系疾患、消化器の不調、ヘルニア、肺炎、結膜炎、肛門嚢炎、尿路結石、上気道疾患、ガンなどバラバラでした。
調査チームは明確な理由までは分からないものの、シャムにおいては何らかの健康上のトラブルがウールサッキングの発症率を高めているのではないかと推測しています。
調査チームは明確な理由までは分からないものの、シャムにおいては何らかの健康上のトラブルがウールサッキングの発症率を高めているのではないかと推測しています。
皮膚腫瘍
腫瘍とは細胞が異常に増殖してできた塊のこと。他の臓器にまで悪影響をおよぼす場合は悪性腫瘍(がん)とも呼ばれ、皮膚にできた場合は特に皮膚腫瘍と呼ばれます。診断は採取した組織サンプルを組織学的に調査することで下します。治療法は外科的な切除や抗癌剤による投薬治療などがメインです。
発症リスク
ミズーリ大学の獣医療診断ラボは1986年1月から1989年5月の期間、合計3,564頭の組織サンプル解析を行い、皮膚の悪性腫瘍に関する疫学調査を行いました(→出典)。その結果、340頭で悪性腫瘍が見つかり、基底細胞腫89頭(26%/平均10.3歳)、肥満細胞腫72頭(21%/平均8.6歳)、扁平上皮腫52頭(15%/平均11.6歳)、線維肉腫50頭(15%/10.2歳)という内訳だったといいます。線維肉腫は足、その他の腫瘍は頭が最も多く、品種ごとに発症リスクを検証した所、シャムでは標準の3倍近い腫瘍発症率が確認されたとのこと。ただし扁平上皮腫に関しては標準の四分の一しかなかったそうです。