下部尿路症候群
下部尿路症候群(LUTD)とは、膀胱から尿道口をつなぐまでのどこかに結石などを生じてしまう病気。猫ではシュウ酸カルシウム結石やストラバイト結石が大半を占めています。診断は尿内の結晶検査やエックス線撮影で下します。治療は結石の除去と食事療法がメインです。
発症リスク
ミネソタ大学の調査チームが1981年から1997年の期間、ミネソタ尿石センターを受診した尿路疾患を抱えた猫(シュウ酸カルシウム結石7,895頭+ストラバイト結石7,334頭)と北米とカナダの動物病院を受診した尿路疾患を抱えていない猫150,482頭のデータを比較したところ、オリエンタルがシュウ酸カルシウムを発症する確率は標準の3.2倍、ストラバイト結石を発症する確率は標準の3.5倍に達することが明らかになったといいます(→出典)。
進行性網膜萎縮症
疾患遺伝子
2009年、進行性網膜萎縮症を引き起こすとされるCEP290遺伝子の変異に関し、41品種に属する846頭の猫を調べた所、ヨーロッパのオリエンタル群における遺伝子頻度が「0.25」、アメリカの個体群における遺伝子頻度が「0.34」という高い値だったといいます。アビシニアンとソマリに特有の疾患とされていますが、シャム関連品種(カラーポイントショートヘア、オリエンタル、バリニーズ、ジャヴァニーズ)においても起こりうると指摘しています(→出典)。
糖尿病
糖尿病とは血流中の糖分(グルコース)をうまく細胞内に取り込むことができず、血糖値が高い状態で維持されてしまう病気。診断は身体検査や血糖値の測定を通して下します。治療法はインスリンの投与と食事療法がメインです。
有病率と発症リスク
2009年9月~2014年8月の期間、王立獣医大学のチームがイギリス国内にある118の動物病院を受診した合計194,563頭の猫を対象として大規模な疫学調査を行った所、オリエンタルの有病率は0.96%、発症リスクは標準の1.8倍になることが明らかになりました(→詳細)。
難産
難産とは出産に際して胎子をスムーズに体外に分娩することができない状態のこと。胎子が大きすぎて母猫の産道を通過できない場合は、帝王切開が行われることもあります。
発症リスク
スウェーデン農科学大学の調査チームが1999年から2006年までの期間、国内のペット保険会社に寄せられた「難産」に対する払い戻し請求を基にして、品種ごとの発生率を調査したところ、猫全体における発生率は1万頭につき22件(0.22%)、純血種では67件(0.67%)、雑種では7件(0.07%)という結果が出たと言います。さらにこの発生率を品種ごとに調べたところ、オリエンタルでは標準の2.2倍も難産に陥りやすいことが明らかになりました
腫瘍
腫瘍とは細胞が異常に増殖してできた塊のこと。他の臓器にまで悪影響をおよぼす場合は悪性腫瘍(がん)とも呼ばれます。診断は採取した組織サンプルを組織学的に調査することで下します。治療法は外科的な切除や抗癌剤による投薬治療などがメインです。
発症リスク
2015年、スイスにあるチューリッヒ大学は、1965年から2008年の期間、国内の動物病院等で収集された医療データを後ろ向きに調べ、腫瘍に関する疫学調査を行いました(→出典)。その結果、猫51,322頭のうち腫瘍(悪性+良性)と診断された数は18,375頭に及び、そのうち悪性は80.3%(14,759)だったといいます。また品種ごとに発症率を比較した所、短毛種(ヨーロピアンショートヘア)を標準の「1」としたとき、ある品種では1を下回ったものの、他の品種では1を上回るものが確認されたとのこと。具体的にはソマリが1.11、オリエンタルが1.24というものでした。なお最も多かった腫瘍の発生場所は皮膚(4,970ケース | 27.05%)で、腫瘍のタイプは上皮種(7,913ケース | 43.06%)と報告されています。
尿酸塩尿石症
尿酸塩尿石症とは、体内に含まれる尿酸塩がうまく体外に排出されず、結晶化して石になってしまった状態のこと。尿酸塩にはアンモニア、ナトリウム、シスチン、キサンチンなどが含まれます。診断は尿内の結晶検査やエックス線撮影で下します。治療は結石の除去と食事療法がメインです。
発症リスク
1981年1月から2008年12月の期間中、ミネソタ尿石センターに蓄積されたデータの中から尿酸塩結石を発症した猫5,072頭と発症していない比較対照群437,228頭とを選び出し、結石の発症リスクを高めている要因を検証しました(→出典)。その結果、純血種、不妊手術(12倍)、4~7歳の年齢層(51倍)という因子が浮かび上がってきたといいます。さらに品種ごとにリスクを計算した所、オリエンタルで3.8倍(6/142)のリスクが確認されたとも。