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マンナンオリゴ糖(MOS)~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「マンナンオリゴ糖」(MOS)。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

マンナンオリゴ糖の成分

 マンナンオリゴ糖はグルコースとマンノースがβ結合した水溶性食物繊維の一種。英語の「MannanOligoSaccharides」から「MOS」とも呼ばれます。またグルコマンナンとも呼ばれ、こんにゃくの主な構成成分として有名です。 キャットフードの成分として用いられる「マンナンオリゴ糖」  マンナンオリゴ糖(MOS)の安全性は比較的高く、こんにゃく由来のグルコマンナンのラットにおけるNOEL(無影響量)は体重1kg当たり1日1,250mgとされています。下痢や便秘が出始めるのは3,000mg/kg/日を超えてからです。なおEFSA(欧州食品安全機関)における一日摂取許容量(ADI)は体重1kg当たり10gに設定されています。
 一方2010年、カナダ保健省は国内で市販されているグルコマンナンを含む健康食品(錠剤・カプセル・パウダー)について、少なくとも240mLの水や液体と一緒に服用しなければ窒息、食道閉塞、腸閉塞の危険があるとの注意喚起を行っています出典資料:食品安全委員会。また日本においても2008年、こんにゃく入りゼリーを食べた幼児(当時1歳9ヶ月)が窒息死するという事故が起こっていますので、サプリメントやゼリーという形で食べる場合はそれなりの注意が必要でしょう出典資料:国民生活センター

マンナンオリゴ糖は安全?危険?

 マンナンオリゴ糖を猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはマンナンオリゴ糖に関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

人間に対する作用・影響

 マンナンオリゴ糖(MOS)に関しては、人間を対象とした膨大な数の実験や調査が行われています。しかしその結果はクリアとは言えず、影響があったというものから全くなかったというものまで様々です。
 効果を示唆するものとしては、14の調査報告(合計531人)をメタ分析したものがあります出典資料:Sood N, 2008。この分析では、糖尿病や肥満を抱えた患者にマンナンオリゴ糖(MOS)を投与したところ、総コレステロール値、LDLコレステロール値、中性脂肪値、体重、空腹時血糖値に改善が見られたとしています。
 逆に効果がなかったとするものとしては、二重盲検無作為化プラセボ比較試験が採用された9つの調査報告をメタ分析したものがあります出典資料:Onakpoya I, 2014。この分析では、マンナンオリゴ糖(MOS)を肥満患者に与えても、統計的に有意な体重減少は見られなかったと結論づけています。
 中間的な報告をしているものとしては、無作為化プラセボ比較試験が採用された6つの調査報告をメタ分析したものがあります出典資料:Zalewski BM, 2015。この分析では、マンナンオリゴ糖(MOS)を肥満患者に投与した所、2~5週間後のタイミングで体重が減少したとする報告がある一方、8~12週間後のタイミングでは体重減少が見られなかったという相反する報告があることを認めています。
 上記したように、マンナンオリゴ糖(MOS)の人間に対する効果や作用ははっきりしていないのが現状です。もし何らかの作用があるのだとすると、肥満体型にある人の血中コレステロール、トリグリセリド濃度、血糖値の低下だと考えられます。また空腹時や食後の血糖値を低下させる可能性も示唆されています。

猫に対する作用・影響

 犬を対象としたマンナンオリゴ糖(MOS)の給餌試験はかなりの数が行われています。その結果は人間の場合と同様、お腹の調子を整えると言い切れないのが現状です。詳しくは姉妹サイト「子犬のへや」の中の「マンナンオリゴ糖」というページをご参照ください。
 一方、猫を対象としたマンナンオリゴ糖の給餌試験は見つかりませんでした。ですから現時点では猫における安全性、危険性、および適正量に関してはよくわかっていません。もしキャットフードにMOSが添加されている場合、人間や犬において示されている「何となくおなかに良いらしい」というイメージだけで加えられているものと推測されます。
キャットフードのラベルでは「Bio-Mos®」と記載されているかもしれません。これは「Alltech」というアメリカの会社が出芽酵母を原料として生成したマンナンオリゴ糖のことです。猫を対象とした給餌試験結果は公開されていません。