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ユッカ(抽出物・シジゲラ)~安全性と危険性から適正量まで

 キャットフードのラベルに記された「ユッカ」(抽出物・シジゲラ)。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも猫に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

ユッカの成分

 ユッカ(yucca)はリュウゼツラン科イトラン属(ユッカ属)の植物の総称。剣のような鋭い葉先を特徴としており、メキシコ、西インド諸島、北アメリカの南東部などでおよそ50種類が確認されています。中でも最も有名なのは「ユッカシジゲラ」(Yucca schidigera)です。キャットフードの成分として用いられる「ユッカ」  日本では「ユッカフォーム抽出物」が厚生労働省によって既存添加物として認可されており、「乳化剤」や「製造用剤」として利用されています。定義は「ユッカ・ブレビフォリア(Yucca brevifolia Engelmann)又はユッカ・シジゲラ(Yucca schidigera Roezl ex Ortgies)の全草から得られた、サポニンを主成分とするもの」です。
 ラットを対象とし、エサの中に 0.1%、0.3%、1%、3%の濃度でユッカ抽出物を混入して90日間給餌したところ、一般的な健康状態、体重、摂餌量に変化は認められなかったといいます。またラットに体重1kg当たり2000mgの割合でユッカフォーム抽出物を経口投与しても、遺伝毒性は認められなかったとも出典資料:薬事・食品衛生審議会

ユッカは安全?危険?

 ユッカを猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはユッカに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

人に対する効果

 人間においては抗原虫効果や抗炎症作用があるのではないかと推測されています出典資料:Cheeke, 2006
 メキシコ原産のユッカシジゲラは、古くから民間療法として関節炎の治療などに用いられてきました。ユッカに含まれるファイトケミカル(ポリフェノールやレスベラトロールといった植物由来の化学物質)、およびステロイド性サポニンが有効物質だと考えられています。
 スチルベンに属し「ユッカオール」と総称される物質は、核転写因子kappaB(NFkB)の働きを阻害し、結果として炎症性物質である一酸化窒素の生成を抑えるのではないかと推測されています。またフェノール類には、生体内で炎症反応を促進する活性酸素を抑制する働きがあると考えられています。

猫に対する効果

 キャットフードにユッカが含まれる場合、「ユッカシジゲラ」や「ユッカ抽出物」といった表記がされています。 しかしユッカには非常にたくさんの物質が含まれているため、具体的にどの成分が猫に対して影響をもたらすのかに関してはよく分かっていません。
 人間に対しては抗炎症作用を発揮する可能性が示されていますが、猫において期待されているのはおならや糞便臭を抑えるという消臭剤としての効果です。

Lowe, 1997

 ユッカ抽出物を含むフードを猫に給餌し、糞便の臭いが変化するかどうかが検証されました出典資料:Lowe, 1997。ユッカの添加は市販のサプリメントを通して行われ、フード1kg当たり37.5mgになるよう調整されました。
 その結果、人間の主観的な評価では糞便の臭いが軽減したといいます。また臭いを客観的に評価するガスクロマトグラフィーと呼ばれるデバイスを用いて臭いを調べたところ、いわゆる糞便臭の元となっているメチルスルフィドの構成比率に明白な違いが見られたとも出典資料:Lowe, 1997
 一方、糞便のpH、フードの体内滞在時間、血球数などに変化は見られなかったものの、血中の尿素増加が確認されました。ラットにサポニンを給餌したときや家禽および家畜にユッカ抽出物を給餌したときは、逆に血中尿素が低下することから、猫においてはユッカ抽出物に含まれるサポニンが消化管の透過性を変化させると推測されています。

Roque, 2011

 21頭の猫を対象とし、基本フードにユッカシジゲラもしくはゼオライトをいろいろな濃度で添加した給餌試験が行われました出典資料:Roque, 2011。ユッカシジゲラの濃度は125ppm、250ppm、375ppm、ゼオライトの濃度は0.5%、0.75%、1.0%です。
 その結果、見かけの消化吸収率、摂取エネルギー、尿のpH、血液の検査項目にフード間で変化は見られなかったと言います。一方、ユッカシジゲラ125ppmと375ppmの添加では糞便臭の減少が確認されました。またゼオライト0.5%と0.75%では糞便臭の減少だけでなく糞便スコアの改善もあわせて見られたといいます。
キャットフードに含まれているユッカは猫のためというより人間のためのものです。うんちの臭いが気にならない人にとっては必要ありません。また猫における安全性、危険性、および適正量に関してはよくわかっていません。