コショウとは何か?
コショウ(Piper nigrum)はコショウ科コショウ属に属するつる性植物。一般的には果実を原料として作られた香辛料のことを指します。原産地はインドで、日本へは少なくとも奈良時代(8世紀)には伝来していたと考えられています。
コショウは製造方法により以下の4種類に分けられます。
コショウの種類
- 黒胡椒完熟前の緑色の果実を収穫し、天日干しで乾燥させたもの。ブラックペッパー。
- 白胡椒赤色に完熟した果実を水に浸して発酵させた後、柔らかくなった外果皮を剥がしたもの。ホワイトペッパー。
- 青胡椒完熟前の緑色の果実をゆでた後、塩蔵またはフリーズドライ加工したもの。グリーンペッパー。
- 赤コショウ赤色に完熟した果実を収穫するが、白胡椒とは異なり外皮をはがさずにそのまま塩蔵したものや天日乾燥したもの。レッドペッパー。
コショウの安全性情報・概要
- 厚生労働省=既存添加物
- IARC=評価なし
- EFSA=コショウの安全性参照
- JECFA=使用基準なし
- ペットフード=データなし
コショウの安全性・危険性
コショウを猫に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?
2022年、EFSA(欧州食品安全機関)がコショウ(Piper nigrum)を原料とする3つの添加物に関する安全性評価を行いました。結論だけ記載すると、猫の完全飼料1kg中における含有量が以下の数値以内であれば健康に悪影響を及ぼすことはないだろうとの結論に至っています。
2022年、EFSA(欧州食品安全機関)がコショウ(Piper nigrum)を原料とする3つの添加物に関する安全性評価を行いました。結論だけ記載すると、猫の完全飼料1kg中における含有量が以下の数値以内であれば健康に悪影響を及ぼすことはないだろうとの結論に至っています。
コショウの使用基準(猫)
- オイル完全飼料1kg中20mgまで
- 超臨界流体抽出液完全飼料1kg中1.5mgまで
- オレオレジン完全飼料1kg中3.8mgまで
黒コショウオイル
黒コショウオイル(black pepper oil)とは未成熟の黒コショウ果実を乾燥して砕き、水蒸気蒸留にかけて揮発性成分を濃縮したエッセンシャルオイル。全体の50%を超える主要成分は以下で、それ以外は微量成分38種が占めています。ただしすべての製品が同じクオリティとは限りませんので、あくまで目安です。
こうしたシミュレーションからEFSAは、猫における黒コショウオイルの使用基準を完全飼料1中20mgまでとの結論に至っています。ちなみにこれは猫の肝臓におけるグルクロン酸抱合能力が低いという事実を加味した上での結論です。
主要成分(全体の56.3%)
- β-Caryophyllene=25.6%
- Limonene=12.5%
- Sabinene (4(10)-thujene)=9.4%
- α-Pinene (pin-2(3)-ene)=8.9%
こうしたシミュレーションからEFSAは、猫における黒コショウオイルの使用基準を完全飼料1中20mgまでとの結論に至っています。ちなみにこれは猫の肝臓におけるグルクロン酸抱合能力が低いという事実を加味した上での結論です。
超臨界流体抽出液
超臨界流体抽出法(supercritical extract)とは、臨界温度および臨界圧力を超えた状態の流体を溶媒とし、液体や固体の中にある成分を分離・抽出する技術。主な利点は加熱不要、抽出速度が速い、製品中に有害な溶媒が残留しないなどで、香辛料の抽出(コショウ・ナツメグ・シナモン・クローブ etc)にも応用されています。
全体の50%程度を占める主要成分は以下で、それ以外は微量成分41種が占めています。ただしすべての製品が同じクオリティとは限りませんので、あくまで目安です。
こうしたシミュレーションからEFSAは、猫における黒コショウの超臨界流体抽出液の使用基準を完全飼料1kg中1.5mgまでとの結論に至っています。
全体の50%程度を占める主要成分は以下で、それ以外は微量成分41種が占めています。ただしすべての製品が同じクオリティとは限りませんので、あくまで目安です。
主要成分(全体の49.2%)
- β-Caryophyllene=15.1%
- Limonene=12.2%
- Sabinene (4(10)-thujene)=10.6%
- α-Pinene (pin-2(3)-ene)=11.4%
こうしたシミュレーションからEFSAは、猫における黒コショウの超臨界流体抽出液の使用基準を完全飼料1kg中1.5mgまでとの結論に至っています。
オレオレジン
オレオレジン(oleoresin)とは乾燥した黒コショウの未成熟果実に含まれる成分を溶媒で抽出した後、溶媒を濾過もしくは蒸発させて残った半固体状の抽出物。
すべての製品が同じクオリティとは限りませんのであくまで目安ですが、圧倒的な主要成分はピペリンで全体の20~50%を占めています。その他、各種揮発性成分が15~40%を占めている他、0.1%以上含まれる微量成分が53種、0.1%未満が43種とかなり多様な物質から構成されています。
成分解析では製造工程においてキャリアとして用いられたプロピレングリコールがGC-MSで2.84%検出されました。また微量ではあるものの水銀、鉛、カドミウム、ヒ素といった重金属のほか、殺虫剤残渣、マイコトキシン、アフラトキシン、ダイオキシン、ダイオキシン様PCBなど数多くの不純物が検出されました。 猫の体重を3kg、1日の食事量を乾燥重量ベースで60gとした場合、いったいどの程度の黒コショウオレオレジンが許容されるのかがシミュレーションされました。ラットから導き出したピペリンのNOAEL(体重1kg当たり1日5mg)を基準とし、肝臓におけるグルクロン酸抱合能力が低いという事実を加味して計算したところ、完全飼料1kg中のオレオレジンが3.8mgを超えないレベルであれば、どの成分も最低MOETが500超を満たすと判断されました。これはどの成分に関しても、安全ギリギリの量をさらに500で割った微量しか摂取されないという意味です。
こうしたシミュレーションからEFSAは、猫における黒コショウオレオレジンの使用基準を完全飼料1中3.8mgまでとの結論に至っています。
すべての製品が同じクオリティとは限りませんのであくまで目安ですが、圧倒的な主要成分はピペリンで全体の20~50%を占めています。その他、各種揮発性成分が15~40%を占めている他、0.1%以上含まれる微量成分が53種、0.1%未満が43種とかなり多様な物質から構成されています。
成分解析では製造工程においてキャリアとして用いられたプロピレングリコールがGC-MSで2.84%検出されました。また微量ではあるものの水銀、鉛、カドミウム、ヒ素といった重金属のほか、殺虫剤残渣、マイコトキシン、アフラトキシン、ダイオキシン、ダイオキシン様PCBなど数多くの不純物が検出されました。 猫の体重を3kg、1日の食事量を乾燥重量ベースで60gとした場合、いったいどの程度の黒コショウオレオレジンが許容されるのかがシミュレーションされました。ラットから導き出したピペリンのNOAEL(体重1kg当たり1日5mg)を基準とし、肝臓におけるグルクロン酸抱合能力が低いという事実を加味して計算したところ、完全飼料1kg中のオレオレジンが3.8mgを超えないレベルであれば、どの成分も最低MOETが500超を満たすと判断されました。これはどの成分に関しても、安全ギリギリの量をさらに500で割った微量しか摂取されないという意味です。
こうしたシミュレーションからEFSAは、猫における黒コショウオレオレジンの使用基準を完全飼料1中3.8mgまでとの結論に至っています。
ピペリンの安全性と効果
コショウの有効成分として引き合いに出されることが多いピペリン(piperine)に関しては、製品によって含有率にほぼ0~50%という大きなばらつきが見られました。そもそもこの成分は安全なのでしょうか?危険なのでしょうか?
ピペリンの安全性
ピペリンの効果
ピペリンが持つ生理作用に関しては2020年、がん、糖尿病、肥満、心血管疾患、加齢、アレルギー、免疫不全、炎症、肝障害に対する包括的なレビューが論文として発表されており、おおむね好意的な結論が述べられています(:Iahtisham-Ul Haq, 2020)。
しかし給餌試験の対象となっているのはほとんどがラットかマウスであり、給餌量も黒コショウなら体重1kg当たり1日250~500mg、ピペリン単体なら20~40mgとかなりの大用量です。
現時点では、何らかの生理作用が期待できる用量とEFSAが提示する安全使用基準との間で整合性が取れていませんので、ピペリンを大量に含むコショウ製品を猫に与えるのはお控えください。健康を考えて与えたものが、逆に健康を害するという本末転倒な結果を招きかねません。またオレオレジンに関しては微量ながら、猫に有害なプロピレングリコールを始めとする多くの不純物が含まれている可能性があります。
しかし給餌試験の対象となっているのはほとんどがラットかマウスであり、給餌量も黒コショウなら体重1kg当たり1日250~500mg、ピペリン単体なら20~40mgとかなりの大用量です。
現時点では、何らかの生理作用が期待できる用量とEFSAが提示する安全使用基準との間で整合性が取れていませんので、ピペリンを大量に含むコショウ製品を猫に与えるのはお控えください。健康を考えて与えたものが、逆に健康を害するという本末転倒な結果を招きかねません。またオレオレジンに関しては微量ながら、猫に有害なプロピレングリコールを始めとする多くの不純物が含まれている可能性があります。
ラーメンに振りかけるような一般的な粉コショウはオイル製品よりも成分濃度が低いと考えられます。しかしわざわざ猫に与える理由が見当たりませんね。