トップ猫の栄養と食事キャットフード成分・大辞典酸化防止剤BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)

BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)~毒性から安全性まで

 キャットフードのラベルに記された「BHT」(ジブチルヒドロキシトルエン)。この成分の意味・目的から安全性までを詳しく解説します。何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)とは何か?

 BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)とは脂溶性の酸化防止剤です。白色、結晶、無臭固体で、水には溶けないものの脂にはよく溶け、4mLのエタノールにおよそ1gが溶解します。化学構造式は以下です。BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)の構造式 成分の分類上は「酸化防止剤」に属し、食品が酸素と結合して品質が低下することを防ぐ作用を持っています。用途は脂肪を含んだ食品のパッケージ材のほか、化粧品、ボディソープ、医薬品、ゴム製品、石油製品、エンバーミング剤(遺体保存剤)などです。
BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)の安全性情報・概要
  • 厚生労働省=指定添加物
  • IARC=発がん性なし
  • EFSA=使用基準0.25mg/体重1kg/日
  • JECFA=使用基準0.3mg/体重1kg/日
  • ペットフード=エトキシキン、BHA、BHTの合計量がペットフード1g中150μgまで

日本での安全性情報

 BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)は厚生労働省によって指定添加物として認可されており、「魚介冷凍品(生食用の冷凍鮮魚介類および生食用の冷凍かきを除く)」の浸漬液に対して1g/kg、「チューインガム」に対して0.75g/kg、「油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩蔵品、乾燥裏ごしいも」に対して0.20g/kgの使用基準が設定されています。ただしブチルヒドロキシアニソールと併用する場合は両成分の合計量が基準値を越えてはいけません。
 ちなみに2013年、マーケットバスケット方式で行われた日本人の酸化防止剤摂取量調査では、20歳を超えた成人の1日平均摂取量は「0.008mg」と推計されています出典資料:厚生労働省

海外での安全性情報

 BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)はIARC(国際がん研究機関)によって発がん性は確認されていません。アメリカ食品医薬品局(FDA)は基準に沿って使用した場合に限り、食品添加物としては「一般的に安全」(GRAS)とみなしています。しかしBHTとガン、喘息、行動障害との因果関係を否定出来ないという観点から、消費者グループの中には使用を控えるよう推奨しているところもあります。
 JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)における一日摂取許容量(ADI)は体重1kg当たり0.3mgです。一方、EFSA(欧州食品安全機関)では、ラットにおけるNOAEL(動物を使った毒性試験において何ら有害作用が認められなかった用量レベル)が25mg/kg体重/日であることから、人間におけるADIをその1/100の0.25mg/kg体重/日としています。

キャットフードに入れると危険?

 日本のペットフード安全法では、エトキシキン、BHA、BHTの合計量がペットフード1g中150μgを超えてはならないと設定されています。
 犬に関しては、体重1kg当たり1.4~4.7gのBHTを2~4日おきに4週間に渡って投与したところ、軽度から中程度の下痢が誘発されたとの報告があります。またラットにおけるLD50(半数致死量)は1,700~1,970mg/kg(体重)です。概略致死量はモルモットが10~700mg/kg(体重)、ウサギが2,100~3,200mg/kg(体重)、猫940~2,100mg/kg(体重)程度と報告されています(食品安全委員会)
ペットフード1kgに換算するとエトキシキン、BHA、BHTの合計量が150mgを超えてはなりません。またエトキシキンの使用基準は75mgまでと規定されています。