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ソルビン酸~意味や目的から安全性まで

 キャットフードのラベルに記された「ソルビン酸」。この成分の意味・目的から安全性までを詳しく解説します。何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

ソルビン酸とは何か?

 ソルビン酸(sorbic acid)とは不飽和脂肪酸の一種です。カビ、イースト、菌類の発育を抑える効果があります。天然のベリー類に多く含まれており、土壌中では速やかに分解されるため環境に優しいという面があります。哺乳類の体内においては、最終的に水と二酸化炭素となると予測されていますが「十分な炭水化物があれば」という条件付きです。化学構造式は以下です。 ソルビン酸の分子式  成分の分類上は「保存料」に属し、フードの鮮度や質を保つ作用を持っています。
ソルビン酸の安全性情報・概要
  • 厚生労働省=指定添加物
  • IARC=発がん性なし
  • EFSA=使用基準3mg/体重1kg/日
  • JECFA=使用基準25mg/体重1kg/日
  • ペットフード1kg当たりソルビン酸として2,500mg、ソルビン酸カリウムとして3,400mg

日本での安全性情報

 日本では厚生労働省によって指定添加物として1955年に「ソルビン酸」、1960年に「ソルビン酸カリウム」が認可されており、ソルビン酸カリウムがチーズ、ソルビン酸カルシウムがうに・魚肉ねり製品・くん製品・漬物・みそなどに用いられています。食品安全委員会ではソルビン酸およびその塩類(ソルビン酸カリウム・ソルビン酸カルシウム)の1日摂取許容量を25mg/kg体重/日に設定しています。
 一部の人ではソルビン酸およびソルビン酸カリウムが接触性蕁麻疹の原因になっている可能性が示唆されています。また乳酸に過敏な人はソルビン酸に対してもアレルギー反応を示すケースがあるとも。慢性蕁麻疹を抱えた90症例を調べた所、4%でソルビン酸もしくは他の食品添加物(安息香酸、タートラジン、サンセットイエロー)にアレルギー反応を示したとの報告もあります出典資料:食品安全委員会

海外での安全性情報

 ソルビン酸はIARC(国際がん研究機関)によって発がん性は確認されていません。
 JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)における一日摂取許容量(ADI)は体重1kg当たり25mgです。
 EFSA(欧州食品安全機関)における一日摂取許容量(ADI)は、ラットの調査から得られたソルビン酸(およびその塩類)のNOAEL300mg/kg/日という値から、体重1kg当たり3mgとされています。なおNOAEL(無毒性量)とは「動物を使った毒性試験において何ら有害作用が認められなかった用量レベル」という意味です。

キャットフードに入れると危険?

 EFSA(欧州食品安全機関)が行った別の調査報告では、ソルビン酸のLD50(半数致死量)がオスのラットで12.5g/kg、メスのラットで9.6~12.5g/kgとされており、これらの値から類推して猫の給餌上限量はエサ1kg当たりソルビン酸として2,500mg、ソルビン酸カリウムとして3,400mgと設定しています。
 犬を対象としたソルビン酸の毒性調査では、体重1kg当たり1日1gを90日間給餌した所、体調、体重、血液中のヘモグロビン濃度、各種臓器や組織の検査結果に関し影響は見られなかったと報告されています。また同じく犬を対象としたソルビン酸カリウムの毒性調査では、体重1kg当たり1日250~500mgを3ヶ月間給餌した所、影響は見られなかったとのこと。
 一方、猫を対象とした給餌試験は行われていないようです。肝臓における酵素活性や代謝能力に違いがありますので、少なくとも上記したような犬における試験結果をまるごと猫に転用するのは危険でしょう。
日本のペットフード安全法では使用基準が設定されていませんが、農林水産省は科学的知見を慎重にモニタリングし、場合によっては含有量に制限を設けるかもしれない要注意成分として扱っています。