トップ猫の栄養と食事キャットフード成分・大辞典着色料ベータカロテン

ベータカロテン(βカロチン)~意味や目的から安全性まで

 キャットフードのラベルに記された「ベータカロテン」。この成分の意味・目的から安全性までを詳しく解説します。何のために含まれ、猫の健康にどのような作用があるのでしょうか?

ベータカロテンとは何か?

 ベータカロテン(βカロチン)とは食品を赤~橙色に染めるときに用いられる着色料です。ベータカロテンはまた、猫を除くほとんどの動物の体内でビタミンA(レチノール)を生成する際に用いられます。野菜に最も多く含まれている色素の一つで、メロン、マンゴー、カボチャ、パパイヤ、ニンジン、サツマイモなどに豊富に含まれています。ベータカロテンを豊富に含むニンジンやパームオイル 成分の分類上は「着色料」に属し、フードの色合いを調整して猫の食いつきを良くする作用を持っています。
ベータカロテンの安全性情報・概要
  • 厚生労働省=既存添加物
  • IARC=発がん性なし
  • EFSA=使用基準15mg/体重1kg/日
  • JECFA=使用基準0~5mg/体重1kg/日
  • ペットフード=不明

日本での安全性情報

 日本においてベータカロテン(βカロチン)は厚生労働省によって指定添加物および既存添加物(着色料)として認可されており、緑藻の一種「デュナリエラ」(Dunaliella)の全藻から得られたデュナリエラカロテン、サツマイモの塊根から得られたイモカロテン、ニンジンの根から得られたニンジンカロテン、アブラヤシの果実から得られたパーム油カロテンなどがあります。
 使用基準は特に設定されていませんが、こんぶ類、食肉、鮮魚介類(鯨肉を含む)、茶、のり類、豆類、野菜およびわかめ類に使用してはならないと規定されています。また「栄養機能食品」の対象成分にも指定されています。

海外での安全性情報

 ベータカロテン(βカロチン)はIARC(国際がん研究機関)によって発がん性は確認されていません。JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)基準における一日摂取許容量(ADI)は天然でも人工でも体重1kg当たり0~5mgです。EFSA(欧州食品安全機関)では15mg未満なら問題ないだろうとしています。

キャットフードに入れると危険?

 ベータカロテン(βカロチン)を猫に対して長期的に与えた場合の安全性や危険性に関してはよくわかっていません。人間においては1日300mg以上を摂取すると、皮膚が黄色~オレンジに変色する「柑皮症」(かんぴしょう)になる可能性があります。
 なお犬や人間とは違い、猫はカロテノイドからビタミンAを生成することができません。カロテノイド(carotenoid, カロチノイドとも)は天然色素の一群。黄色、だいだい色、赤色などを示す野菜や果物に豊富に含まれている成分で、ベータカロテン(βカロチン)もその一種です。
 犬や人間においては消化管にあるカロテンジオキシゲナーゼと呼ばれる酵素の働きにより、カロテノイドが体内でビタミンAに変換されます。しかし酵素活性が非常に低いため、ベータカロテンを摂取してもその多くは変換されないまま血液中に止まったままです出典資料:Defretin, 1994
 猫に至っては酵素自体が検出不能なレベルまで極端に少ないため、ベータカロテンを摂取してもビタミンAを生成することができません(Gershoff, 1957)。ですからビタミンAが不足しないよう食品を通して摂取する必要があります。これは犬や人間と猫との間で見られる栄養要求の大きな違いの一つです。
ベータカロテン(βカロチン)は微量栄養素と着色料という二面性を持った成分です。猫はベータカロテンからビタミンAを生成できませんので、使用されている場合は必然的に着色料ということになります。