猫の加齢と尿比重値
調査を行ったのはオハイオ州立大学獣医校を中心としたチーム。臨床上健康な猫における加齢に伴う尿比重の変化を調べるため、膨大な医療記録を対象とした後ろ向き調査を行いました。
調査対象
調査対象となったのは全米43州に分散した1000を超えるBanfield pet hospitalの系列病院。2010年1月1日から2020年12月31日までの11年間に渡って蓄積された医療記録を回顧的に参照し、臨床上健康な猫における尿比重値と加齢の関係性を統計的に精査しました。
参加条件は尿検査、ヘマトクリット、CBC、生化学検査、総サイロキシン(7歳超のみ)の値が揃っていること。除外条件は糖尿病、甲状腺機能亢進症、採尿時の輸液治療、尿糖陽性などとされました。またメチマゾール(抗甲状腺薬)、ステロイド、利尿薬、インスリン投与を受けている場合も除外されました。
参加条件は尿検査、ヘマトクリット、CBC、生化学検査、総サイロキシン(7歳超のみ)の値が揃っていること。除外条件は糖尿病、甲状腺機能亢進症、採尿時の輸液治療、尿糖陽性などとされました。またメチマゾール(抗甲状腺薬)、ステロイド、利尿薬、インスリン投与を受けている場合も除外されました。
調査結果
合計159,378件に及ぶ元データをフィルターにかけた結果、最終的に15,027件が解析に回されました。
腎臓による尿の濃縮能に関し、正常を尿比重1.035超、異常を1.035以下と定義して区分したところ、正常が91.1%(13,694)、異常が8.9%(1,333)という内訳になり、年齢層別では以下のようになったといいます。
Journal of Feline Medicine and Surgery(2024), Adam J Rudinsky, Valerie J Parker, et al., DOI:10.1177/1098612X2412564
腎臓による尿の濃縮能に関し、正常を尿比重1.035超、異常を1.035以下と定義して区分したところ、正常が91.1%(13,694)、異常が8.9%(1,333)という内訳になり、年齢層別では以下のようになったといいます。
正常濃縮能の割合
- 1歳未満=95.2%
- 1~6歳未満=94.3%
- 7~10歳未満=93.4%
- 11~15歳未満=77.5%
- 15歳超=57.9%
統計差
- 正常群5.4歳<異常群9.7歳
- 11~15歳未満(1.044)<1.049群
- 15歳超(1.038)<1.049群
- 15歳超(1.038)<11~15歳未満(1.044)
Journal of Feline Medicine and Surgery(2024), Adam J Rudinsky, Valerie J Parker, et al., DOI:10.1177/1098612X2412564
9歳過ぎたら定期検診を
加齢に伴う腎臓の劣化は人間で確認されており、糸球体硬化、間質性線維症、尿細管萎縮、動脈硬化などが含まれます。十分調査されているわけではないものの、猫を対象とした当調査で浮かび上がってきた加齢に伴う濃縮能の低下にも、上記経年変化のどれかが大なり小なり関わっている可能性があります。
尿比重の平均値に着目した場合、少なくとも18歳を過ぎるまではかろうじて濃縮能力が保たれるようです。しかし正常個体の割合に着目した場合、11~15歳未満では77.5%、15歳超では57.9%となっていますので、腎不全とまではいかないまでも11歳以降は尿が薄くなって体内に毒素が溜まりやすくなるリスクが潜在的にあるものと推測されます。
尿比重が低下し始める9歳頃を目安に、定期的な健康診断をしておくと持病の早期発見につながるでしょう。特に猫では慢性腎臓病の有病率が多いこと、および慢性腎臓病の進行を遅らせる薬が開発されていることから、早期発見が寿命にもつながりうる極めて重要な項目となります。
尿比重の平均値に着目した場合、少なくとも18歳を過ぎるまではかろうじて濃縮能力が保たれるようです。しかし正常個体の割合に着目した場合、11~15歳未満では77.5%、15歳超では57.9%となっていますので、腎不全とまではいかないまでも11歳以降は尿が薄くなって体内に毒素が溜まりやすくなるリスクが潜在的にあるものと推測されます。
尿比重が低下し始める9歳頃を目安に、定期的な健康診断をしておくと持病の早期発見につながるでしょう。特に猫では慢性腎臓病の有病率が多いこと、および慢性腎臓病の進行を遅らせる薬が開発されていることから、早期発見が寿命にもつながりうる極めて重要な項目となります。
尿比重値は15時間あけて測定しただけで変動しうるけっこう流動的なものですので、経時的に計測して値の上下動をモニタリングすることが重要となります。