鋭利な異物の脊髄内迷入
報告を行ったのは韓国にある猫専門病院Baeksan Feline Medical Center。
3歳になるオスの短毛種が突発性の四肢麻痺で来院したといいます。麻痺は硬直を伴うものでプロプリオセプション(体や関節の位置、方向、動きに関する感覚)と皮膚反射の喪失も見られました。非特異的な症状として元気喪失と進行性の食欲不振が見られたものの、血液検査で感染症や心機能に異常は見られず、胸部および腹部レントゲン検査でも異常はなかったといいます。
明白な原因を特定できないまま精密検査のためCTスキャンとMRIでダブルチェックしたところ、脊髄内に非金属製の鋭利な異物(厚さ2~2.5 mm/長さ2cm程度)が視認されました。また脊髄の実質領域に出血と炎症が、口咽頭と前頭直筋に空気が確認されました。 画像診断から2日後、前方から広頸筋をかいくぐって患部にアプローチし除去手術は成功。異物を取り出した際、体液の漏出が見られたものの病原体は検出されませんでした。二次感染症を予防するため抗生物質を静脈経由で7日間投与し、その後経口に切り替えてさらに7日間の投与が行われました。飼い主がキッチンで先端の折れた箸を発見したことから、最終的に異物は箸の切片と断定されました。 手術の翌日には前後肢とも軽度のプロプリオセプション改善が見られ、2日後には完全回復。7日後には退院し、14日後に抜糸を行った際は補助付きで自分の体重を支えられるまでに回復しました。3週間後には安定した自力歩行が可能となり、2ヶ月後にはジャンプができるまで運動機能を取り戻したといいます。 Surgical removal of an intramedullary chopstick fragment penetrating the spinal cord in a cat
The Journal of Veterinary Medical Science(2021), Kihoon Kim
明白な原因を特定できないまま精密検査のためCTスキャンとMRIでダブルチェックしたところ、脊髄内に非金属製の鋭利な異物(厚さ2~2.5 mm/長さ2cm程度)が視認されました。また脊髄の実質領域に出血と炎症が、口咽頭と前頭直筋に空気が確認されました。 画像診断から2日後、前方から広頸筋をかいくぐって患部にアプローチし除去手術は成功。異物を取り出した際、体液の漏出が見られたものの病原体は検出されませんでした。二次感染症を予防するため抗生物質を静脈経由で7日間投与し、その後経口に切り替えてさらに7日間の投与が行われました。飼い主がキッチンで先端の折れた箸を発見したことから、最終的に異物は箸の切片と断定されました。 手術の翌日には前後肢とも軽度のプロプリオセプション改善が見られ、2日後には完全回復。7日後には退院し、14日後に抜糸を行った際は補助付きで自分の体重を支えられるまでに回復しました。3週間後には安定した自力歩行が可能となり、2ヶ月後にはジャンプができるまで運動機能を取り戻したといいます。 Surgical removal of an intramedullary chopstick fragment penetrating the spinal cord in a cat
The Journal of Veterinary Medical Science(2021), Kihoon Kim
口の奥を貫通した?
過去、マイクロチップが脊柱管に迷入したり、誤飲した木片が髄外に迷入するという症例が報告されています。皮膚を通じて迷入するルートと口腔を通じて迷入するルートがありますが、明白な外傷の形跡がなかったため当症例では後者が有力と判断されました。
考えられるのは、猫が箸の先端をガジガジとかんでいる時に突然折れ、そのまま飲み込んでしまうという状況です。背骨で囲まれているはずの脊柱管(脊髄を収納しているチューブ構造)に入り込むという状況はにわかには信じがたいですが、鋭利なノギ(イネ科植物の先端部)が皮膚や消化管を突き破って体内を移動するという実例や、誤飲した針が脳内に迷入するという実例もあるくらいですので、ありえない話ではありません。
たとえばアメリカでは上部気道感染症に似た症状と体の右側の麻痺を主訴とした1歳になるメス猫の症例が報告されています(:E.J.Cottam, 2015)。 レントゲンに写ったのは脳と脊髄の境目あたりに突き刺さった縫い針で、緊急手術によって一命をとりとめたとのこと。摘出から数日後には症状が軽快し、5ヶ月後に行った追跡調査でも症状の再発は見られなかったそうです。
考えられるのは、猫が箸の先端をガジガジとかんでいる時に突然折れ、そのまま飲み込んでしまうという状況です。背骨で囲まれているはずの脊柱管(脊髄を収納しているチューブ構造)に入り込むという状況はにわかには信じがたいですが、鋭利なノギ(イネ科植物の先端部)が皮膚や消化管を突き破って体内を移動するという実例や、誤飲した針が脳内に迷入するという実例もあるくらいですので、ありえない話ではありません。
たとえばアメリカでは上部気道感染症に似た症状と体の右側の麻痺を主訴とした1歳になるメス猫の症例が報告されています(:E.J.Cottam, 2015)。 レントゲンに写ったのは脳と脊髄の境目あたりに突き刺さった縫い針で、緊急手術によって一命をとりとめたとのこと。摘出から数日後には症状が軽快し、5ヶ月後に行った追跡調査でも症状の再発は見られなかったそうです。
幸いお箸にしても針にしても、飼い主がしっかり管理すれば予防は簡単です。猫がアクセスできない場所にしまっておきましょう。