徳之島における外猫の食生活
鹿児島県の徳之島は大島郡に属する離島の1つ。アマミノクロウサギ(Pentalagus furnessi)、ケナガネズミ(Diplothrix legata)、トクノシマトゲネズミ(Tokudaia tokunoshimensis)といった固有生物種が数多く生息する島として知られています。
京都大学野生動物研究センターの調査チームは、徳之島において屋外を自由に放浪することができる猫が生態系に及ぼす影響を明らかにするため、安定同位体分析と呼ばれる手法を用いた食生活調査を行いました
- 安定同位体分析
- 安定同位体分析とは、被毛や糞便に含まれる元素の安定同位体比を調べることで、日頃の食生活が平均的にどのような傾向にあるのかを明らかにする手法のこと。同位体とは特定の元素と陽子数が同じだが中性子数が異なる原子のことで、同位体の中で放射線を出さず、なおかつ半永久的に存在量が変わらないものは安定同位体と呼ばれる。
- ノネコ✓人為起源=67.8%
✓農地動物=17.9%
✓森林動物=14.3% - ノラネコ✓人為起源=69.0%
✓農地動物=18.5%
✓森林動物=12.4%
外猫を養っているのは島民?
調査チームは、徳之島におけるハイパープリデーションを支えているのは人間が与えている人為起源の食料(=キャットフードなど)なのではないかと推測しています。
一例として調査チームは、2014年から18年までの間に2,797頭の屋外放浪猫が捕獲され、そのうちさくらねこは13%で割合が高まっていない点を指摘しています。不妊手術を受けていない猫が人為起源の食料で繁殖を繰り返しているため、TNRをやってもやっても生殖能力を保った猫が一向に減らないという図式です。
徳之島においては「飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」によって室内飼いと屋外放浪猫への餌付け禁止が努力義務として規定されているものの、こうしたローカルルールが遵守されていない現状が浮き彫りとなりました。 Predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on Tokunoshima Island.
Maeda, T., Nakashita, R., Shionosaki, K. et al., Sci Rep 9, 16200 (2019), https://doi.org/10.1038/s41598-019-52472-3
- ハイパープリデーション
- ハイパープリデーション(Hyper-predation, 直訳すると過剰捕食)とは、捕食動物の増加や一次被食動物の急減により、二次被食動物に対する捕食圧が高まる現象。例えばオーストラリアのマッコーリー島では60年以上に渡ってノネコとパラキート(インコの一種)が共存してきたが、島内にウサギを持ち込んだことによりノネコの数が急増し、結果としてパラキートの激減につながった。
一例として調査チームは、2014年から18年までの間に2,797頭の屋外放浪猫が捕獲され、そのうちさくらねこは13%で割合が高まっていない点を指摘しています。不妊手術を受けていない猫が人為起源の食料で繁殖を繰り返しているため、TNRをやってもやっても生殖能力を保った猫が一向に減らないという図式です。
徳之島においては「飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」によって室内飼いと屋外放浪猫への餌付け禁止が努力義務として規定されているものの、こうしたローカルルールが遵守されていない現状が浮き彫りとなりました。 Predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on Tokunoshima Island.
Maeda, T., Nakashita, R., Shionosaki, K. et al., Sci Rep 9, 16200 (2019), https://doi.org/10.1038/s41598-019-52472-3