沖縄のやんばる地域とは?
やんばる(山原)地域とは沖縄の名護市以北に位置するエリア。国頭村(くにがみそん)、東村(ひがしそん)、大宜味村(おおぎみそん)という3村からなり、 ヤンバルクイナ、ノグチゲラ、オキナワトゲネズミといった希少な野生動物の生息地として知られています。
3村は2005年、森林地帯の生態系を守るため、歩みを合わせる形で「ネコの愛護及び管理に関する条例」を制定し、飼養登録と首輪などによる明示を村民の義務とするほか、繁殖制限や室内飼育を努力義務として定めました。
ネコの愛護及び管理に関する条例(国頭村)
しかし条例制定後も村内を放浪する猫の姿を目撃することは日常茶飯事で、森林地帯に生息する野生動物たちへの悪影響(捕食による個体数の減少など)を完全には防ぎきれていないというのが現状です。
やんばる地域の集落猫・実態調査
やんばる地域における集落猫の実態を把握するため、NPO法人どうぶつたちの病院沖縄は3村の中で最も人口が多い国頭村に焦点を絞った個体数調査を行いました。ここで言う「集落猫」とは、飼い主の有無に関わらず屋外を自由に放浪している猫のことです。
2018年5月から8月の期間、村の中にある全20集落に定点カメラを設置すると同時に、フィールドの目視調査(18:30~21:00)を行ったところ、全体の95%に当たる19集落で少なくとも1頭の猫が確認されたといいます。合計数は、複数の集落で目撃された1頭を含めると133頭にまで達しました。 首輪の装着を確認できた個体は25頭(18.8%)、村民への聞き取り調査から飼い猫と判明した個体は18頭(13.5%)でした。しかし飼い猫の中には首輪をつけていないものもいたため、装着を確認できなかった108頭のうちの何割かは、実際には飼い猫であると推測されます。
村民の逸話から、放浪猫に見られる以下のような典型的な行動パターンが確認されました。
2018年5月から8月の期間、村の中にある全20集落に定点カメラを設置すると同時に、フィールドの目視調査(18:30~21:00)を行ったところ、全体の95%に当たる19集落で少なくとも1頭の猫が確認されたといいます。合計数は、複数の集落で目撃された1頭を含めると133頭にまで達しました。 首輪の装着を確認できた個体は25頭(18.8%)、村民への聞き取り調査から飼い猫と判明した個体は18頭(13.5%)でした。しかし飼い猫の中には首輪をつけていないものもいたため、装着を確認できなかった108頭のうちの何割かは、実際には飼い猫であると推測されます。
村民の逸話から、放浪猫に見られる以下のような典型的な行動パターンが確認されました。
集落猫の問題行動
- 未去勢のオスが長距離を移動し、先々でメス猫と交尾する
- 屋外繁殖で生まれた子猫に母猫が授乳する姿を目にする
- 多頭飼育家庭が屋外に遺棄したと思われる猫がいる
- 外に出た猫が怪我をして戻ってくる
- 見知らぬ集落猫による糞尿被害がある
- 家の中に見知らぬ集落猫が入ってくる
放浪猫の課題と対策
個体数調査を通じ、国頭村のほぼ全域にまんべんなく集落猫が生息している現状が浮き彫りとなりました。調査チームは以下のような対策を提言しています。
室内飼育の義務化
先述したように、やんばる地域の3村には通称「ネコ条例」と呼ばれる地方条例が敷かれています。しかし室内飼育に関しては努力義務止まりであり、なおかつ飼養登録申請書の中にも飼育場所として「屋外」という文言が残されています。これでは「別に放し飼いにしてもいいよ」というゴーサインを出しているのと同じです。
完全室内飼育に対する村民のモチベーションを高めると同時に、行政機関による介入・指導力を高めるため、調査チームは室内飼育を努力義務から義務に格上げする必要があるだろうと提言しています。
普及啓発活動
広報誌やイベントなどを通じた知識の普及啓発活動も、地味ながら重要だろうとしています。調査チームは実際2018年8月18~19日、国頭村で開催された第3回国頭村祭りにブースを出展し、猫の適正飼養に関する啓発活動を行ったといいます。具体的には以下です。
- 集落猫が関わる問題をまとめたポスターを掲示
- 猫を飼うときに気をつけてほしいことをクイズ形式でまとめたスゴロクの作成
- 挿入が義務とされているマイクロチップの読み取り体験
ノネコのモニタリング
飼い主のいない野猫(ノネコ)に関しては継続的なモニタリングが必要だろうと指摘しています。多くの自治体が推奨しているTNRでは生態系への悪影響を予防できないため、特に希少動物が生息している地域においては捕獲後に野外にリリースするのではなく、譲渡(Adoption)を基本にしなければならないでしょう。
何かに急かされるように短期間で個体数コントロールを達成しようとすると、ReleaseでもAdoptionでもなくDestroy(殺処分)が基軸になり、世界中で先例のある感情的なディベートにつながってしまいます。 ネコの適正飼養がやんばるの希少野生動物を守る
自然保護助成基金助成成果報告書28巻(2020)/ NPO法人どうぶつたちの病院沖縄
何かに急かされるように短期間で個体数コントロールを達成しようとすると、ReleaseでもAdoptionでもなくDestroy(殺処分)が基軸になり、世界中で先例のある感情的なディベートにつながってしまいます。 ネコの適正飼養がやんばるの希少野生動物を守る
自然保護助成基金助成成果報告書28巻(2020)/ NPO法人どうぶつたちの病院沖縄