アストロウイルスとは?
アストロウイルス(astrovirus)とはアストロウイルス科に属するエンベロープを持たない一本鎖RNAウイルスの一種。直径はおよそ30nmで、粒子表面に星状の構造を有していることから「astro(星の)」という名を冠しています。1975年、急性胃腸炎を発症した幼児の便から検出されて以来徐々に知名度を高め、現在では数~10%という高い保有率からロタウイルスおよびノロウイルスに次いで普遍的なウイルスと考えられています。
鳥類に感染するアストロウイルス属と哺乳類に感染するマムアストロウイルス属という2つの属に大別され、人間においては若年者、高齢者、免疫力が低下した人において胃腸炎の原因になることが確認されています。
ネコアストロウイルス
猫に感染するものは1981年、下痢症状を示した子猫の便サンプル中から電子顕微鏡検査を通じて初めて確認され、「ネコアストロウイルス」(Feline astrovirus, FeAstV)と呼ばれています(:Hoshino, 1981)。検出例はアメリカ、イギリス、ニュージーランド、イタリア、トルコ、香港、中国、韓国、オーストラリアなど世界各地です。
臨床上健康な猫を対象とした調査で下痢症状が実験的に引き起こされること(:Harbour, 1987)、およびフィールド調査でも下痢症状を示す猫において高い感染率が確認されていることから、消化管に対する病原性を有していると推測されています。
例えば吉林農業大学の調査チームは中国北部にある5つの都市から下痢症状を示した猫105頭および臨床上健康な猫92頭の便サンプルを採取し、ネコアストロウイルスの感染率を調べました(:Yi, 2018)。その結果、全体の感染率は23.4%(46/197)で、下痢症状を示した猫における感染率は36.2%(38/105)、健康な猫における感染率は8.7%(8/92)だったといいます。前者における感染率は統計的に有意なレベルで後者より高いと判断されました。
例えば吉林農業大学の調査チームは中国北部にある5つの都市から下痢症状を示した猫105頭および臨床上健康な猫92頭の便サンプルを採取し、ネコアストロウイルスの感染率を調べました(:Yi, 2018)。その結果、全体の感染率は23.4%(46/197)で、下痢症状を示した猫における感染率は36.2%(38/105)、健康な猫における感染率は8.7%(8/92)だったといいます。前者における感染率は統計的に有意なレベルで後者より高いと判断されました。
日本における感染率
世界各地で感染例が報告されているネコアストロウイルス。では日本においてはどうなのでしょうか?2014年から2019年の期間、ネコパルボウイルス検査のため大阪にあるラボに送られてきた合計204の便サンプルを対象とし、RT-PCRと呼ばれる手法を用いてDNAレベルでアストロウイルスを調べたところ、全体の21.1%に相当する43サンプルから検出されたと言います(:Soma, 2020)。
冬(12月から翌2月)における検出率が44.4%と最も高く、他の季節に比べ統計的に有意なレベルで多いことも併せて確認されました。さらに1歳以上の年齢層(12.4%, 11/89頭)に比べ1歳未満の年齢層(27.8%, 32/115頭)における感染率が倍以上も高かったとのこと。
23の単離株の塩基配列を解析した結果、過去に報告のある18のウイルス株と遺伝的に極めて近似していると判断されました。この事実から、日本国内で独自に発達した株ではなく他の国から何らかのルートを通じて持ち込まれた可能性が高いと推測されています。
冬(12月から翌2月)における検出率が44.4%と最も高く、他の季節に比べ統計的に有意なレベルで多いことも併せて確認されました。さらに1歳以上の年齢層(12.4%, 11/89頭)に比べ1歳未満の年齢層(27.8%, 32/115頭)における感染率が倍以上も高かったとのこと。
23の単離株の塩基配列を解析した結果、過去に報告のある18のウイルス株と遺伝的に極めて近似していると判断されました。この事実から、日本国内で独自に発達した株ではなく他の国から何らかのルートを通じて持ち込まれた可能性が高いと推測されています。
気をつけることは?
ネコアストロウイルスは下痢を始めとした消化管の不調を引き起こす原因ウイルスと考えられていますが、病原性がはっきりと証明されているわけではありません。体内から駆逐する抗ウイルス薬が開発されているわけでもないので、現時点では静観するのが選択肢となります。
とは言え、ウイルスは便の中に排出されることから、多頭飼育家庭においてはトイレをこまめに掃除して猫同士の水平感染が起こらないよう気をつけることは有意義です。特に1歳未満の子猫がいる世帯においては、トイレの中にウンチが残ったまま長時間放置されないよう気をつけます。また猫を屋外に出している場合はどこでウイルスをもらってしまうか分からないため完全室内飼いに切り替えます。
とは言え、ウイルスは便の中に排出されることから、多頭飼育家庭においてはトイレをこまめに掃除して猫同士の水平感染が起こらないよう気をつけることは有意義です。特に1歳未満の子猫がいる世帯においては、トイレの中にウンチが残ったまま長時間放置されないよう気をつけます。また猫を屋外に出している場合はどこでウイルスをもらってしまうか分からないため完全室内飼いに切り替えます。