新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」とは?
「SARS-CoV-2」(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2)は2019年12月に中国武漢市で発生し世界的なパンデミックを引き起こしているウイルス。2002年に大流行を見せた「SARS」に似ていることから命名されましたが、一般的には「新型コロナウイルス」と呼ばれています。またこのウイルスが引き起こす症状全般はWHO(世界保健機構)によって「COVID-19」(coronavirus disease 2019)と命名されました。
具体的には「猫のそばでゲホゲホ咳をしたりくしゃみをしない」「こまめに手を洗う」「鼻や口元をなめさせない」「顔をうずめてモフモフしない」などです。また常識問題ですが、屋外からウイルスを拾ってくる危険性があるため放し飼いは厳禁です。
ざっくりまとめると
- 飼い主が感染すると、ウイルスを含んだ呼吸器からの分泌物が猫の体表に付くことがある
- 体表についたウイルスを他の人が触れると感染する可能性がある
- 人間ほどではないが猫自身もウイルスに感染して抗体を形成する
- ウイルスの増殖はおそらく若齢猫のほうが激しい
- 人間のような重症には至らず、咳や食欲不振程度
- 呼吸器からの分泌物を介して猫から猫への感染は成立するかも
- 人から猫、猫から人への感染は理論上は起こりうる
- 感染成立量は人でも猫でもまだわかっていない
具体的には「猫のそばでゲホゲホ咳をしたりくしゃみをしない」「こまめに手を洗う」「鼻や口元をなめさせない」「顔をうずめてモフモフしない」などです。また常識問題ですが、屋外からウイルスを拾ってくる危険性があるため放し飼いは厳禁です。
逸話的な猫の感染例
新型コロナウイルスに感染したという逸話的な報告が世界中にいくつかあります。ネコ科動物に限ると以下です。
猫・ベルギー
2020年3月下旬、イタリア北部を旅行して帰宅した女性がベルギーの自宅でCOVID-19を発症した後、飼い猫も呼吸障害、吐き気、下痢といった症状を見せ始めました。便と嘔吐物をラボに送って遺伝子的に検査してもらったところ、高レベルの「SARS-CoV-2」が検出されたといいます。
ただしこの逸話ではサンプルを採取したのが女性自身ですので、「うんちを拾っているときにゲホゲホ咳をしてツバがかかってしまった」などの可能性を否定できません。猫自身を対象とした診察が行われる予定でしたが、その後の続報はないようです(2020年4月10日時点)。 Science News(2020.4.6)
ただしこの逸話ではサンプルを採取したのが女性自身ですので、「うんちを拾っているときにゲホゲホ咳をしてツバがかかってしまった」などの可能性を否定できません。猫自身を対象とした診察が行われる予定でしたが、その後の続報はないようです(2020年4月10日時点)。 Science News(2020.4.6)
猫・香港
新型コロナウイルスに感染した飼い主が3月30日、ペット猫の口腔、鼻腔、直腸から採取したサンプルをラボに送って調べてもらったところ、ウイルス陽性だったと報告されています。
Reuters(2020.4.1)
トラ・アメリカ
2020年4月上旬、アメリカニューヨーク州にあるブロンクス動物園のマレートラ「ネイディア」(4歳)が乾性咳と食欲不振の症状を見せたため健康診断したところ、新型コロナウイルスに感染していることが判明したといいます。症状は軽く、感染経路も不明のままです。トラと接触する機会があった他のトラ3頭とライオン3頭も呼吸器系の症状を示していたとのこと。
その後の検査により4月15日、農務省(USDA)によってライオンもウイルス陽性であることが発表されました。 New York Times(2020.4.6) Confirmed cases of SARS-CoV-2 in Animals in the United States
その後の検査により4月15日、農務省(USDA)によってライオンもウイルス陽性であることが発表されました。 New York Times(2020.4.6) Confirmed cases of SARS-CoV-2 in Animals in the United States
猫・アメリカ
4月22日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)と農務省(USDA)が共同声明を出し、ニューヨーク州に暮らす2頭の猫において「SARS-CoV-2」への感染が確認されたことを公表しました。
1頭は軽度の呼吸器系疾患(具体的な症状は不明)を示した後、感染を疑った飼い主が動物病院に連れていき、簡易検査で陽性判定を受けました。飼育環境(完全室内 or 放し飼い)は明らかにされておらず、少なくとも飼い主に新型コロナウイルスによる症状(COVID-19)は出ていなかったとのこと。
全く別の場所に暮らすもう1頭は、飼い主の「SARS-CoV-2」感染が明らかになった後、軽度の呼吸器系疾患(具体的な症状は不明)を示すようになったといいます。心配した飼い主が動物病院につれていき、そこで陽性判定を受けました。同居猫に症状はなかったそうです。
これら2頭の猫たちは改めて「National Veterinary Services Laboratories」(NVSL)による検査が行われ、最終的に感染が確認されたとのこと。いずれも症状は軽く回復する見込みだといいます。 USDA(2020.4.22) ミネソタ州に暮らす飼い主のSARS-CoV-2感染が確認されてから7日後、同居していた猫が40.5℃の高熱と上気道の症状を示したため病院を受診したところ、ウイルス陽性と診断されました。猫は5日後には自然回復したとのこと。2020年6月1日、アメリカ農務省により正式に動物における新型コロナウイルス感染事例として発表されました。 FOX9(2020.6.3)
1頭は軽度の呼吸器系疾患(具体的な症状は不明)を示した後、感染を疑った飼い主が動物病院に連れていき、簡易検査で陽性判定を受けました。飼育環境(完全室内 or 放し飼い)は明らかにされておらず、少なくとも飼い主に新型コロナウイルスによる症状(COVID-19)は出ていなかったとのこと。
全く別の場所に暮らすもう1頭は、飼い主の「SARS-CoV-2」感染が明らかになった後、軽度の呼吸器系疾患(具体的な症状は不明)を示すようになったといいます。心配した飼い主が動物病院につれていき、そこで陽性判定を受けました。同居猫に症状はなかったそうです。
これら2頭の猫たちは改めて「National Veterinary Services Laboratories」(NVSL)による検査が行われ、最終的に感染が確認されたとのこと。いずれも症状は軽く回復する見込みだといいます。 USDA(2020.4.22) ミネソタ州に暮らす飼い主のSARS-CoV-2感染が確認されてから7日後、同居していた猫が40.5℃の高熱と上気道の症状を示したため病院を受診したところ、ウイルス陽性と診断されました。猫は5日後には自然回復したとのこと。2020年6月1日、アメリカ農務省により正式に動物における新型コロナウイルス感染事例として発表されました。 FOX9(2020.6.3)
犬と猫・オランダ
新型コロナウイルスに感染した患者に飼われていたブルドッグ(8歳)の血液からウイルスに対する抗体が検出され、症状が悪化したため4月の末に安楽死になったといいます。感染源はおそらく飼い主だと推定されています
また新型コロナウイルス陽性と判定されたアイントホーフェンのミンク農場の近くで、放し飼いにされていた猫3頭が抗体陽性と診断されました。こちらの感染ルートは不明のままです。 Telegraph(2020.5.21)
また新型コロナウイルス陽性と判定されたアイントホーフェンのミンク農場の近くで、放し飼いにされていた猫3頭が抗体陽性と診断されました。こちらの感染ルートは不明のままです。 Telegraph(2020.5.21)
猫における感染性・論文集
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は猫にも感染するのでしょうか?もし感染したとすると、どのような症状を引き起こすのでしょうか?また人から猫、猫から人への感染は成立するのでしょうか?以下は猫におけるウイルスの感染性に関する論文(科学的エビデンス)集です。
感染時の急性症状
中国農業科学院哈爾浜獣医研究所の調査チームは、一般的に新型コロナウイルスと呼ばれている「SARS-CoV-2」が、人間以外の動物にも感染し、症状を引き起こすのかどうかを検証しました。
調査に用いられたのは人間の感染患者から単離された「CTan-H」と呼ばれるウイルス株。生後8ヶ月齢の猫5頭を対象とし、10万PFU(※プラーク形成ユニットの略で1mLあたりのウイルス粒子の数のこと)の「CTan-H」を鼻腔から人為的に感染させたところ、6日後には感染能を有したウイルスが鼻甲介、軟口蓋、扁桃腺、気管から検出されたといいます。一方、小腸からはウイルスRNAが検出されたものの感染能は有していなかったとのこと。
また感染した猫と感染していない猫をケージで隔離し、隣り合う形で配置しておいたところ、未感染だったはずの猫からウイルスが検出されたといいます。この事実から、呼吸器から排出された体液を通じて猫から猫への感染が成立するものと推測されています。
同様の感染実験を生後70~100日齢の子猫4頭に行ったところ、3日後の時点で鼻腔、気管上皮粘膜、肺に病変が確認されたといいます。この事実から、年齢が若い猫ほどウイルスが増殖しやすいのではないかと推測されています。 Susceptibility of ferrets, cats, dogs, and different domestic animals to SARS-coronavirus-2
Jianzhong Shi, Zhiyuan Wen, Gongxun Zhong, et al., doi: https://doi.org/10.1101/2020.03.30.015347
調査に用いられたのは人間の感染患者から単離された「CTan-H」と呼ばれるウイルス株。生後8ヶ月齢の猫5頭を対象とし、10万PFU(※プラーク形成ユニットの略で1mLあたりのウイルス粒子の数のこと)の「CTan-H」を鼻腔から人為的に感染させたところ、6日後には感染能を有したウイルスが鼻甲介、軟口蓋、扁桃腺、気管から検出されたといいます。一方、小腸からはウイルスRNAが検出されたものの感染能は有していなかったとのこと。
また感染した猫と感染していない猫をケージで隔離し、隣り合う形で配置しておいたところ、未感染だったはずの猫からウイルスが検出されたといいます。この事実から、呼吸器から排出された体液を通じて猫から猫への感染が成立するものと推測されています。
同様の感染実験を生後70~100日齢の子猫4頭に行ったところ、3日後の時点で鼻腔、気管上皮粘膜、肺に病変が確認されたといいます。この事実から、年齢が若い猫ほどウイルスが増殖しやすいのではないかと推測されています。 Susceptibility of ferrets, cats, dogs, and different domestic animals to SARS-coronavirus-2
Jianzhong Shi, Zhiyuan Wen, Gongxun Zhong, et al., doi: https://doi.org/10.1101/2020.03.30.015347
感染後の慢性症状
東京大学医科学研究所のチームは猫たちを人為的に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染させ、3、6、10日後のタイミングで全身の臓器における感染性ウイルスの有無を調べました。その結果、鼻や気管といった上部呼吸器では感染6日目までウイルスの増殖が継続していたのに対し、肺以下の下部呼吸器では感染3日目でのみ局所的な増殖が確認されたにとどまったといいます。
一方、感染から3、6、10日後の被験猫たちの肺を病理解析したところ、感染性ウイルスが肺から検出されたかどうかにかかわらずなぜか炎症が観察されたとも。この現象の理由としては、ウイルスを排除しよう免疫システムが活性化し、放出された炎症性サイトカインが自身の組織にダメージを与えたからだと推測されています。
さらに感染から無症状のまま回復した被験猫の肺を、感染から4週間後のタイミングで病理解析したところ、何ら症状を示していなかったにもかかわらず慢性炎症の証拠が見つかったそうです。この病変ダメージは人間における重症患者と同等のものと判断されました。 Protective Immunity and Persistent Lung Sequelae in Domestic Cats after SARS-CoV-2 Infection
Shiho Chiba, Peter J. Halfmann, Masato Hatta, Yoshihiro Kawaoka et al., Emerging Infectious Diseases journal(2021), DOI:10.3201/eid2702.203884
一方、感染から3、6、10日後の被験猫たちの肺を病理解析したところ、感染性ウイルスが肺から検出されたかどうかにかかわらずなぜか炎症が観察されたとも。この現象の理由としては、ウイルスを排除しよう免疫システムが活性化し、放出された炎症性サイトカインが自身の組織にダメージを与えたからだと推測されています。
さらに感染から無症状のまま回復した被験猫の肺を、感染から4週間後のタイミングで病理解析したところ、何ら症状を示していなかったにもかかわらず慢性炎症の証拠が見つかったそうです。この病変ダメージは人間における重症患者と同等のものと判断されました。 Protective Immunity and Persistent Lung Sequelae in Domestic Cats after SARS-CoV-2 Infection
Shiho Chiba, Peter J. Halfmann, Masato Hatta, Yoshihiro Kawaoka et al., Emerging Infectious Diseases journal(2021), DOI:10.3201/eid2702.203884
感染メカニズム
ミネソタ大学の調査チームは2002年に大流行を見せた「SARS-CoV」と「SARS-CoV-2」(新型コロナウイルス)の遺伝的な類似性に着目し、同じメカニズムで感染しているかどうかを検証しました。仮説は「SARS-CoVと同じように動物の体内にあるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を結合対象として感染している」というものです。
明らかになったSARS-CoV-2のシーケンス(塩基配列)を利用し、ウイルスのスパイクタンパク上にある受容体結合ドメイン(RBD)を調べたところ、SARS-CoVと同じであることが判明したといいます。また特に人間のACE2と結合しやすい特性を有していたとも。さらに人間ほどではないにしても、マウスやラットを除く他の動物が持つACE2とも結合する能力を有していることから、媒介動物になりうる可能性があると指摘しています。具体的にはブタ、フェレット、霊長類、そして猫などです。
Receptor Recognition by the Novel Coronavirus from Wuhan:
an Analysis Based on Decade-Long Structural Studies of
SARS Coronavirus
Yushun Wan, Jian Shang, Rachel Graham, Ralph S. Baric, Fang Li, Journal of Virology, DOI: 10.1128/JVI.00127-20
Yushun Wan, Jian Shang, Rachel Graham, Ralph S. Baric, Fang Li, Journal of Virology, DOI: 10.1128/JVI.00127-20
感染後の抗体形成
華中農業大学は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の大流行を見せた中国・武漢市に暮らす102頭の猫(うち39頭は大流行前のタイミングで採取)から血液サンプルを採取し、ELISA間接法と呼ばれる方法でSARS-CoV-2のスパイクタンパク上にあるRBDと呼ばれる部位が検出されるかどうかを調べました。その結果、全体の14.7%に当たる15頭が陽性で、ウイルスへの感染が強く疑われることが判明したといいます。これら15頭はすべて大流行後のタイミングで血液採取されていました。
次に感染の疑いが強い15頭を対象とし、ウイルス中和テストと呼ばれる方法で血清中の抗体を調べた結果、11頭(73%)において1/20~1/1080の抗体価レベルが検知されたとのこと。これらの抗体は猫伝染性腹膜炎ウイルス(※猫にだけ感染するコロナウイルスの一種で血清型にはI型とII型がある)との交差反応を示さなかったことから、新型コロナウイルスに対する特異的な抗体である可能性が高いと判断されました。なお抗体価レベルがとりわけ高かった3頭に関しては、飼い主が新型コロナウイルス感染者でした。
これらの事実から、何らかの接触を通じて人間から猫にウイルスが移ってしまった可能性が高いこと、およびウイルスに対して猫が特異的な抗体を形成できる可能性が高いことが判明しました(※4月13日の時点では査読前です)。 SARS-CoV-2 neutralizing serum antibodies in cats: a serological investigation
Qiang Zhang, Huajun Zhang, Kun Huang, Yong Yang, Xianfeng Hui, doi.org/10.1101/2020.04.01.021196
次に感染の疑いが強い15頭を対象とし、ウイルス中和テストと呼ばれる方法で血清中の抗体を調べた結果、11頭(73%)において1/20~1/1080の抗体価レベルが検知されたとのこと。これらの抗体は猫伝染性腹膜炎ウイルス(※猫にだけ感染するコロナウイルスの一種で血清型にはI型とII型がある)との交差反応を示さなかったことから、新型コロナウイルスに対する特異的な抗体である可能性が高いと判断されました。なお抗体価レベルがとりわけ高かった3頭に関しては、飼い主が新型コロナウイルス感染者でした。
これらの事実から、何らかの接触を通じて人間から猫にウイルスが移ってしまった可能性が高いこと、およびウイルスに対して猫が特異的な抗体を形成できる可能性が高いことが判明しました(※4月13日の時点では査読前です)。 SARS-CoV-2 neutralizing serum antibodies in cats: a serological investigation
Qiang Zhang, Huajun Zhang, Kun Huang, Yong Yang, Xianfeng Hui, doi.org/10.1101/2020.04.01.021196
ヒトからペットへの感染性
フランスにあるパスツール研究所・病原体検出ラボの調査チームは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が人からペットに感染するかどうかを検証しました。調査対象となったのは獣医療関連の学生20人と、そのうち18人が飼育しているペット(猫9頭+犬12頭)。学生のうち2人はPCRで陽性、11人は未検査だが陽性の疑いあり、7人は無症状という内訳です。
フランス国内においてエンデミックが発生した後の2月25日から3月18日の期間、21頭の動物たちから血液を採取して感染の指標である抗体を免疫沈降分析で調べたところ、全頭が陰性だったといいます。 また鼻腔と直腸からスワブで組織サンプルを採取し、RT-PCRと呼ばれる方法でウイルスのDNAを調べましたが、検出されたペットは1頭もいなかったとも。猫の飼い主のうち、一緒に寝ていた人の割合は100%、顔や手をなめさせていた割合は78%。同様に、犬の飼い主では33%と92%で、かなり密な接触があったそうです。さらにエンデミックの前の2015年10月~2018年10月の期間中に採取された58頭(犬51頭+猫7頭)の血液サンプルを調べたところ、エンデミック後の21頭と統計的な違いは見られなかったとしています。
こうした結果から調査チームは、理論上はありうるもののヒトから犬や猫へのSARS-CoV-2感染は実際にはかなり起こりにくいのではないかと推論しています。 Absence of SARS-CoV-2 infection in cats and dogs in close contact with a cluster of COVID-19 patients in a veterinary campus
Sarah Temmam, Alix Barbarino, Djerene Maso, et al., DOI:10.1016/j.onehlt.2020.100164 スペインにあるサン・ペドロ大学病院の調査チームは2020年4月8日、新型コロナウイルスの流行により都市封鎖と自宅待機命令が出されたスペイン北部のラ・リオハ州において、ウイルスの感染が確認された19人の患者(17世帯)に飼育されていたペット動物における感染率調査を行いました。動物たちの内訳は犬12頭、猫8頭、モルモット1匹、ウサギ2羽で、一体につき口腔咽頭スワブと直腸スワブを採取してRT-qPCRと呼ばれる手法でウイルスのRNAを検出したところ、重症患者(男性)に飼育されていた猫1頭(メス・8歳)で陽性反応が出たといいます。しかし同居していた猫(オス・7歳)は陰性だったとも。初回検査から26日後の5月4日、2頭から改めて鼻腔咽頭スワブを採取して再検査したところ、2頭とも陰性だったそうです。
飼い主がコロナ感染と診断されてから初回検査までのタイムラグは4日で、猫は持病以外の呼吸器系症状は示していませんでした(2020年5月30日時点では査読前)。 Detection of SARS-CoV-2 in pets living with COVID-19 owners diagnosed during the COVID-19 lockdown in Spain: A case of an asymptomatic cat with SARS-CoV-2 in Europe
Ignacio Ruiz-Arrondo, Aranzazu Portillo, Ana M. Palomar, Sonia Santibanez, Paula Santibanez, Cristina Cervera, Jose A. Oteo, DOI:10.1111/tbed.13803
フランス国内においてエンデミックが発生した後の2月25日から3月18日の期間、21頭の動物たちから血液を採取して感染の指標である抗体を免疫沈降分析で調べたところ、全頭が陰性だったといいます。 また鼻腔と直腸からスワブで組織サンプルを採取し、RT-PCRと呼ばれる方法でウイルスのDNAを調べましたが、検出されたペットは1頭もいなかったとも。猫の飼い主のうち、一緒に寝ていた人の割合は100%、顔や手をなめさせていた割合は78%。同様に、犬の飼い主では33%と92%で、かなり密な接触があったそうです。さらにエンデミックの前の2015年10月~2018年10月の期間中に採取された58頭(犬51頭+猫7頭)の血液サンプルを調べたところ、エンデミック後の21頭と統計的な違いは見られなかったとしています。
こうした結果から調査チームは、理論上はありうるもののヒトから犬や猫へのSARS-CoV-2感染は実際にはかなり起こりにくいのではないかと推論しています。 Absence of SARS-CoV-2 infection in cats and dogs in close contact with a cluster of COVID-19 patients in a veterinary campus
Sarah Temmam, Alix Barbarino, Djerene Maso, et al., DOI:10.1016/j.onehlt.2020.100164 スペインにあるサン・ペドロ大学病院の調査チームは2020年4月8日、新型コロナウイルスの流行により都市封鎖と自宅待機命令が出されたスペイン北部のラ・リオハ州において、ウイルスの感染が確認された19人の患者(17世帯)に飼育されていたペット動物における感染率調査を行いました。動物たちの内訳は犬12頭、猫8頭、モルモット1匹、ウサギ2羽で、一体につき口腔咽頭スワブと直腸スワブを採取してRT-qPCRと呼ばれる手法でウイルスのRNAを検出したところ、重症患者(男性)に飼育されていた猫1頭(メス・8歳)で陽性反応が出たといいます。しかし同居していた猫(オス・7歳)は陰性だったとも。初回検査から26日後の5月4日、2頭から改めて鼻腔咽頭スワブを採取して再検査したところ、2頭とも陰性だったそうです。
飼い主がコロナ感染と診断されてから初回検査までのタイムラグは4日で、猫は持病以外の呼吸器系症状は示していませんでした(2020年5月30日時点では査読前)。 Detection of SARS-CoV-2 in pets living with COVID-19 owners diagnosed during the COVID-19 lockdown in Spain: A case of an asymptomatic cat with SARS-CoV-2 in Europe
Ignacio Ruiz-Arrondo, Aranzazu Portillo, Ana M. Palomar, Sonia Santibanez, Paula Santibanez, Cristina Cervera, Jose A. Oteo, DOI:10.1111/tbed.13803
猫から猫への感染性
日米複数の大学からなる共同研究チームは子猫3頭(生後15~18週齢)の鼻腔、気管、口腔、眼球を通じて合計5.2×105PFUの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に人為的に曝露し、ウイルスとは未接触の猫3頭と組み合わせた上で3つのペアを作りました。
ペア同士が接触しないような環境で生活させ、鼻腔及び直腸を10日間に渡って毎日スワブ検査してウイルスの有無を確認したところ、曝露を受けた猫だけでなく、生活空間を共にしていただけの未感染猫においてもウイルスが検出されるようになったといいます(※鼻腔からのみ)。時間軸は以下です。 曝露から24日後に猫たちの血液を採取して抗体検査をしたところ、IgG抗体価は全頭において1:5120~1:20480の範囲内だったとのこと。発熱、体重減少、結膜炎といった症状は一切見られなかったそうです。
こうした結果から、ウイルスの排出期間は4~6日と短いものの、おそらくはウイルス含有の飛沫を介した猫同士の感染が容易に起こりうる可能性が示されました。また猫と生活をともにしている人間にまでウイルスが移行してしまう危険性が追認されることとなりました。 Transmission of SARS-CoV-2 in Domestic Cats
The new england journal of medicine, DOI: 10.1056/NEJMc2013400
ペア同士が接触しないような環境で生活させ、鼻腔及び直腸を10日間に渡って毎日スワブ検査してウイルスの有無を確認したところ、曝露を受けた猫だけでなく、生活空間を共にしていただけの未感染猫においてもウイルスが検出されるようになったといいます(※鼻腔からのみ)。時間軸は以下です。 曝露から24日後に猫たちの血液を採取して抗体検査をしたところ、IgG抗体価は全頭において1:5120~1:20480の範囲内だったとのこと。発熱、体重減少、結膜炎といった症状は一切見られなかったそうです。
こうした結果から、ウイルスの排出期間は4~6日と短いものの、おそらくはウイルス含有の飛沫を介した猫同士の感染が容易に起こりうる可能性が示されました。また猫と生活をともにしている人間にまでウイルスが移行してしまう危険性が追認されることとなりました。 Transmission of SARS-CoV-2 in Domestic Cats
The new england journal of medicine, DOI: 10.1056/NEJMc2013400
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