写真と動画と譲渡スコア
調査を行ったのはノースカロライナ州立大学を中心とした共同チーム。猫の里親候補者に写真を見せた時と動画を見せた時とで、譲渡される可能性に違いが生じるかどうかを検証するため、大規模なインターネットアンケート(Amazon Mechanical Turk)を行いました。
調査に用いられたのは被毛の色とパターンが異なる猫3頭の写真と動画。写真を見た人が猫の性格を表す12項目を5段階で評価すると同時に、「この猫をどのくらいペットとして迎えたいと思うか?」という質問に対して 5段階で評価するという内容です。
逆に写真にしても動画にしても「攻撃的」のスコアと譲渡スコアとが負の相関関係にあることが判明しました。つまり猫が「攻撃的」と判断されたとき、譲渡される可能性が下がってしまうということです。
写真と動画を比較した時、ある特定の性格スコアにおいてわずかな格差が見られました。具体的には以下で、カッコ内は格差の度合いを示しています。
Schoenfeld-Tacher R, Kogan LR, Carney PC. Front Vet Sci. 2019;6:87. Published 2019 Mar 27. doi:10.3389/fvets.2019.00087
猫の性格特性12項目
- 遊び好き
- よく鳴く
- 愛らしい
- 人懐こい
- 人見知り
- 攻撃的
- 優しい
- 物静か
- 要求が激しい
- 抱っこ好き
- 活発
- 好奇心旺盛
【📷写真】譲渡スコアを高める性格特性8項目
- 遊び好き
- よく鳴く
- 愛らしい
- 人懐こい
- 優しい
- 抱っこ好き
- 活発
- 好奇心旺盛
【📹動画】譲渡スコアを高める性格特性8項目
- 遊び好き
- よく鳴く
- 愛らしい
- 人懐こい
- 優しい
- 抱っこ好き
- 活発
- 好奇心旺盛
逆に写真にしても動画にしても「攻撃的」のスコアと譲渡スコアとが負の相関関係にあることが判明しました。つまり猫が「攻撃的」と判断されたとき、譲渡される可能性が下がってしまうということです。
写真と動画を比較した時、ある特定の性格スコアにおいてわずかな格差が見られました。具体的には以下で、カッコ内は格差の度合いを示しています。
写真>動画の性格特性
- 愛らしい(軽度~中等度)
- 優しい(強度)
- 物静か(軽度)
- 抱っこ好き(軽度~中等度)
動画>写真の性格特性
- 遊び好き(強度)
- 人懐こい(軽度)
- 攻撃的(軽度~中等度)
- 活発(強度)
- 好奇心旺盛(中等度~強度)
Schoenfeld-Tacher R, Kogan LR, Carney PC. Front Vet Sci. 2019;6:87. Published 2019 Mar 27. doi:10.3389/fvets.2019.00087
猫の譲渡率を高めるコツ
写真でも動画でも、猫の8つの性格特性と譲渡スコアとの間に正の相関関係が見られました。最も強い相関が確認された共通項目「愛らしい」「人懐こい」「優しい」の3つを里親希望者に対しうまくアピールすることができれば、譲渡率が上がるかもしれません。
写真と動画を比較した時、主として猫の活動性を表す性格特性は動画において高いスコアを獲得することがわかりました。猫のキャラクターがやんちゃで活動的な場合は、積極的に動画を撮って「遊び好き」「活発」「好奇心旺盛」といった譲渡スコアを高める特性を里親候補者に見せた方が良いでしょう。
逆に、主として猫の穏やかさを表す性格特性は静止写真において高いスコアを獲得することがわかりました。猫のキャラクターが物静かな場合は、動画よりも写真を見せて「人懐こい」「優しい」「抱っこ好き」といった譲渡スコアを高める特性をアピールするのが有効かもしれません。
写真でも動画でも「攻撃的」と譲渡スコアが負の相関関係にありました。「人見知りが激しい」とか「よくシャーシャー言う」といった情報を里親候補者に公正に伝えることは重要です。しかしそれをわざわざ写真や動画に撮って示す必要はないでしょう。見た人が「いつもこんな調子なのかな?」と早合点し、猫の譲渡機会がいたずらに奪われてしまう危険性があります。
写真と動画を比較した時、主として猫の活動性を表す性格特性は動画において高いスコアを獲得することがわかりました。猫のキャラクターがやんちゃで活動的な場合は、積極的に動画を撮って「遊び好き」「活発」「好奇心旺盛」といった譲渡スコアを高める特性を里親候補者に見せた方が良いでしょう。
逆に、主として猫の穏やかさを表す性格特性は静止写真において高いスコアを獲得することがわかりました。猫のキャラクターが物静かな場合は、動画よりも写真を見せて「人懐こい」「優しい」「抱っこ好き」といった譲渡スコアを高める特性をアピールするのが有効かもしれません。
写真でも動画でも「攻撃的」と譲渡スコアが負の相関関係にありました。「人見知りが激しい」とか「よくシャーシャー言う」といった情報を里親候補者に公正に伝えることは重要です。しかしそれをわざわざ写真や動画に撮って示す必要はないでしょう。見た人が「いつもこんな調子なのかな?」と早合点し、猫の譲渡機会がいたずらに奪われてしまう危険性があります。
写真と動画をうまく活用しよう!
1990年代以降、公共の動物保護施設(保健所や動物愛護センター)にしても民間の保護団体にしても、インターネットを通じて保護した動物たちの情報を発信できるようになりました。しかしその利点を最大限に活かせているわけではありません。
例えば行政機関では、捕獲してすぐのタイミングで撮った犬や猫の写真を載せることが多々あります。しかしこうした写真に写っているのは、毛がボサボサで収容ケージの奥に引きこもり、警戒心と恐怖からイカ耳状態の猫の姿です。これが猫本来の姿とは到底言えないでしょう。 また民間保護団体の多くはホームページやブログを開設していますが、写真ばかりで動画が見られないことがあります。動画をほぼ無制限にアップロードできるYouTubeという動画共有サイトがあるのですから、もう少し活用した方が良いのではないでしょうか。
猫のキャラクターに合わせて静止画や動画をうまく活用すれば、適切なマッチングにつながってくれると考えられます。例えば活発で遊び好きな猫を希望している人に対しては、動画を通してアクティブな様子をアピールしたり、穏やかで昼寝が大好きな「膝乗り猫」(lap cat)を希望している人に対しては画像を通して物静かな様子をアピールするなどです。
また譲渡会においては、猫がケージの奥に引きこもったまま普段のキャラクターを見せてくれないことが多々あります。あらかじめ録画しておいた猫の様子を里親候補者に見せ、「緊張がほぐれたらこんな感じですよ」と説明するやり方もあるでしょう。
例えば行政機関では、捕獲してすぐのタイミングで撮った犬や猫の写真を載せることが多々あります。しかしこうした写真に写っているのは、毛がボサボサで収容ケージの奥に引きこもり、警戒心と恐怖からイカ耳状態の猫の姿です。これが猫本来の姿とは到底言えないでしょう。 また民間保護団体の多くはホームページやブログを開設していますが、写真ばかりで動画が見られないことがあります。動画をほぼ無制限にアップロードできるYouTubeという動画共有サイトがあるのですから、もう少し活用した方が良いのではないでしょうか。
猫のキャラクターに合わせて静止画や動画をうまく活用すれば、適切なマッチングにつながってくれると考えられます。例えば活発で遊び好きな猫を希望している人に対しては、動画を通してアクティブな様子をアピールしたり、穏やかで昼寝が大好きな「膝乗り猫」(lap cat)を希望している人に対しては画像を通して物静かな様子をアピールするなどです。
また譲渡会においては、猫がケージの奥に引きこもったまま普段のキャラクターを見せてくれないことが多々あります。あらかじめ録画しておいた猫の様子を里親候補者に見せ、「緊張がほぐれたらこんな感じですよ」と説明するやり方もあるでしょう。
理想は、里親候補者の希望と猫の性格特性を事前に把握し、ベストな譲渡を実現する「Feline-ality™」のようなマッチングシステムです。保護施設内における滞在期間が長くなればなるほど猫の健康状態が悪化し、譲渡率が下がるといいます。その他「維持費用がかかる」「マンパワーを取られる」「収容数が少なくなる」といった数々のデメリットがありますので、写真と動画をうまく活用して譲渡率を高めるための工夫は公共施設においても民間団体においても急務です。添い寝が大好きな甘えん坊「しゅう」ちゃん~譲渡会場では隅っこに隠れていないふり…。普段の姿を存分に見てもらえないのが譲渡会の痛い所。
— 子猫のへや (@konekono_heya) 2018年11月30日
【ねりまねこ】→https://t.co/ftmOXp1Qjd