猫の表情と感情価(ポジとネガ)
調査を行ったのはカナダにあるグエルフ大学アニマルバイオサイエンス学部のチーム。インターネットを介したオンラインのアンケートシステムを利用し、一般的に「何を考えているのかわからない」と評されることが多い猫の表情に関する検証実験を行いました。
調査に参加したのは英語圏を中心とした85ヶ国に暮らす合計6,329人の人たち(女性74%)。18歳以上であれば猫の飼育歴は不問とされました。具体的なテスト内容は、YouTube動画を元に編集された1本2秒ほどのビデオクリップを20本見て、猫の表情をポジティブかネガティブかのどちらかに判別するというものです。サンプルは「Cat Faces Quiz」で公開されています。
ビデオクリップ集は1バージョン20本(ポジティブ10本+ネガティブ10本)からなる2つのバージョンが作られ、どちらのバージョンに回答するかはランダムで振り分けられました。また動画を編集する段階における「ポジティブ」および「ネガティブ」の基準は以下です。実際のクリップでは文脈の明白なヒントとなるような鳴き声、表情、背景などが全てカットされています。
こうしたデータから調査チームは、一般的に猫の表情は読み取りにくいとされているものの 、少なくとも全く無表情というわけではないという事実を明らかにしました。ただし調査チーム自身も被験者たちが一体何を判断材料にしてポジティブとネガティブを判定したのかはわからないとしています。 Humans can identify cats' affective states from subtle facial expressions
Animal Welfare, Volume 28, Number 4, Dawson LC, Cheal J, Niel L, Mason G, DOI: 10.7120/09627286.28.4.519
調査に参加したのは英語圏を中心とした85ヶ国に暮らす合計6,329人の人たち(女性74%)。18歳以上であれば猫の飼育歴は不問とされました。具体的なテスト内容は、YouTube動画を元に編集された1本2秒ほどのビデオクリップを20本見て、猫の表情をポジティブかネガティブかのどちらかに判別するというものです。サンプルは「Cat Faces Quiz」で公開されています。
ビデオクリップ集は1バージョン20本(ポジティブ10本+ネガティブ10本)からなる2つのバージョンが作られ、どちらのバージョンに回答するかはランダムで振り分けられました。また動画を編集する段階における「ポジティブ」および「ネガティブ」の基準は以下です。実際のクリップでは文脈の明白なヒントとなるような鳴き声、表情、背景などが全てカットされています。
猫の感情価とその文脈
- ネガティブな文脈明白に何かを避けている(逃げている・隠れているなど)/何かに目的遂行を邪魔されている(開かないドアなど)/うなる/シャーと威嚇する/驚く
- ポジティブな文脈自発的に何かに接近している/しっぽを上げている/負の感情を示すいかなるシグナルも見せていない
こうしたデータから調査チームは、一般的に猫の表情は読み取りにくいとされているものの 、少なくとも全く無表情というわけではないという事実を明らかにしました。ただし調査チーム自身も被験者たちが一体何を判断材料にしてポジティブとネガティブを判定したのかはわからないとしています。 Humans can identify cats' affective states from subtle facial expressions
Animal Welfare, Volume 28, Number 4, Dawson LC, Cheal J, Niel L, Mason G, DOI: 10.7120/09627286.28.4.519
猫の表情を読むのが上手い人
正答率が高い人たちの予見因子を調査チームが検証したところ、ある属性をもった人たちはとりわけ猫の表情を読むことが上手である可能性が浮上してきました。
女性
「15問以上正解」という成績優秀層に限ってみたところ、この層に入る人が女性である確率は男性より61%ほど高かったといいます。背景としてチームが言及しているのが「主養育者仮説」です。これは表情を読み取る能力に長けた女性の子孫の方が生存率が高まるとするもので、女性が非言語的なサインに敏感であることの説明としてよく引き合いに出されます。人間のみならず、猫の微妙な表情の変化を捉えることもできるのでしょうか。
猫と働く人
「女性」という性別のほかでは「猫との職歴」が強い予見因子として挙げられました。「15問以上正解」という成績優秀層に限ってみたところ、何らかの形で猫と関わる仕事についたことがある人は、そうでない人に比べて41%ほどこの層に入る確率が高かったそうです。
猫関連の仕事はたくさんありますが、シェルター(保護施設)のスタッフ、キャットシッター、キャットトレーナーなどと比較し、獣医師や獣医療技術者の成績がとりわけ良かったとのこと。この原因として調査チームは「そもそも動物好きの人が選ぶ仕事だから」「経験やトレーニングを通じて学ぶ機会が多いから」「引っかかれるのを防ぐため熱心に観察するから」などを想定しています。
猫関連の仕事はたくさんありますが、シェルター(保護施設)のスタッフ、キャットシッター、キャットトレーナーなどと比較し、獣医師や獣医療技術者の成績がとりわけ良かったとのこと。この原因として調査チームは「そもそも動物好きの人が選ぶ仕事だから」「経験やトレーニングを通じて学ぶ機会が多いから」「引っかかれるのを防ぐため熱心に観察するから」などを想定しています。
猫の表情を誤解しないで
表情筋が発達している人間に比べ、猫の表情が乏しいのは否めない事実です。コロニーを形成したメス猫を除き、基本的に猫は表情によって集団内の他のメンバーに自分の心的な状況を伝える必然性がないので、進化の過程上致し方ないでしょう。たとえば以下は形態計測的分析によって明らかになった「痛みを感じているときの猫の表情」です(L.Finca, 2019)。あまりにも微妙すぎてよくよく観察しないと見落としてしまいますね。
SNSでも猫の表情を誤解している投稿をよく見かけます。最も多いのが「ストレスや恐怖で瞳孔が開いている→黒目がちで可愛い」という誤解です。残念なことに、猫の保護や譲渡に関わる人たちの中にも、こうした誤解を持っている人がいるようです。上で紹介した表情の変化とは違い、瞳孔の大きさや耳の形はかなりわかりやすいストレスサインですので、読み違えないよう注意したいところですね。
猫の表情や姿勢から感情を読み取る方法に関しては「猫の心を読む訓練」で詳しく解説してあります。ぜひご一読を。