詳細
調査を行ったのは、オーストラリアクイーンズランド大学のチーム。2016年6月から8月の期間、オンラインで47項目からなるアンケート調査を猫の飼い主に対して行い、迷子猫合計1,210頭分のデータを収集しました。猫たちの内訳はアメリカ(59%)、オーストラリア(20%)、カナダ(14%)、その他の国です。その結果、以下のような事実が明らかになったといいます。カッコ内は元データとなった猫の頭数です。
Search Methods Used to Locate Missing Cats and Locations Where Missing Cats Are Found
Liyan Huang et al., Animals 2018, 8(1), 5; doi:10.3390/ani8010005
Liyan Huang et al., Animals 2018, 8(1), 5; doi:10.3390/ani8010005
猫の飼育方法(1,210頭)
猫が家の中と外を自由に行き来できる「放し飼い」という飼育方法の割合が44.5%という高い値を示しました。しかし完全室内飼い(26.6%)や、監督下で外に出ることができる変則的な放し飼い(22.4%)の合計が49%ですので、「放し飼いは危険/室内飼いは安全」という図式は成立しません。
- 放し飼い=44.5%
- 完全室内飼い=26.6%
- 監督時以外は室内=11.4%
- キャティオ以外は室内=6.2%
- 散歩時以外は室内=4.8%
- 不明=3.6%
- 完全外飼い=2.9%
飼い主の居住エリア(1,210頭)
庭付きの住居が7割近い圧倒的多数でした。庭に猫を出しているときに敷地内から飛び出し、そのまま迷子になってしまうというパターンが目に浮かびます。
- 庭付き(賃貸・一戸建て)=68.7%
- 不明=11.2%
- 農場=5.8%
- 2-5F建て賃貸=5.0%
- 平屋の賃貸=4.7%
- 庭なし=2.5%
- トレイラー=1.5%
- その他=0.3%
- 6-10F建て賃貸=0.2%
- 11F以上ある賃貸=0.1%
猫がいなくなった時の状況(1,210頭)
屋外もしくは出入り自由の状況で行方不明になった猫の割合がおよそ半分でした。その一方で室内にいたにもかかわらずいなくなるケースが33.3%という高い値を示しています。
- 室内にいた=33.3%
- 出入り自由=27.9%
- 屋外にいた=22.5%
- 不明=9.5%
- 馴染みのない場所=4.7%
- 移動中=2.1%
室内から逃げた時の状況(403頭)
67.5%と圧倒的な多数を占めているのが「ドアやガレージの隙間から逃げ出す」というパターンです。飼い主がうっかり閉め忘れるとか、訪問客が来た時に扉を開け、その隙をついて猫が逃げ出すという状況が考えられます。
- ドアやガレージの隙間=67.5%
- 窓からジャンプ=10.4%
- 不明=8.2%
- 壊れた窓や網戸=5.2%
- バルコニーからジャンプ=4.7%
- 壊れた猫用扉=1.5%
- 室内で発見=1.0%
- その他=0.7%
- 敷地内からの移動中=0.5%
- 外にいる時=0.2%
屋外から逃げた時の状況(272頭)
移動中に逃げた時の状況(25頭)
キャリーから逃げ出すというパターンが全体の半分以上を占めています。不用意にキャリーを開けてしまい、驚いた猫がそこから飛び出してしまうものと推測されます。「乗り物の窓やドア」や「腕から」逃げ出すパターンもありますので、猫を家の外に連れ出すときは細心の注意が必要となります。
- キャリーから=52.0%
- 乗り物の窓やドア=16.0%
- 腕から=12.0%
- リードで移動中=8.0%
- その他=8.0%
- 交通事故で=4.0%
馴染みのない場所で逃げた時の状況(57頭)
引っ越して新居に移ったときに迷子になる割合が半数を超えていました。「猫は家につく」という言葉がありますが、新しい家が気に食わなかったのかもしれません。
- 新居=50.9%
- 知り合いやシッターの家=33.3%
- 旅行先=10.5%
- その他=3.5%
- 不明=1.8%
- ペットホテル=0.0%
- 動物病院=0.0%
- グルーマー=0.0%
失踪時における在宅状況(1,210頭)
猫が迷子になったとき、飼い主もしくは第三者が家の中にいた割合は71.8%という高い値を示しました。家の中に人がいようがいまいが、迷子対策しっかりしていないと猫が逃げ出してしまうという事実を如実に物語っています。
- 誰かがいた=71.8%
- 12時間無人=14.8%
- 不明=6.9%
- シッターに任せていた=4.1%
- 13-24時間無人=1.3%
- 24時間以上無人=1.1%
猫の発見場所(602頭)
屋外で発見される割合が8割を超えていました。その一方で他人の家の中に勝手に上がり込むという猫も1割程度いるようです。迷子猫を探すときに、近隣の住宅を訪問することの重要性がうかがえます。
- 屋外=80.6%
- 他人の家の中=10.3%
- 家の中=4.5%
- 不明=3.2%
- 公共の建物=1.5%
屋外における発見場所(485頭)
民家の庭で発見される割合が19.6%だったのに対し、自宅の前で発見される割合が18.1%とかなり高い値を示しました。いつでも戻ってこられるよう、飼い主の匂いがついたものや普段使っている猫の寝具を出しておくとよいかもしれません。
- 庭=19.6%
- 自宅の前=18.1%
- 植え込みや低木=15.7%
- パティオやポーチの下=9.7%
- 家の下=5.2%
- 下水溝=3.9%
- ガレージ=3.5%
- 猫用扉=3.5%
- 不明=3.5%
- 小屋や納屋=2.7%
- 建物の外=2.7%
- 乗り物の下=2.5%
- 農場・林・森の中=1.6%
- 小屋の下=1.6%
- ガレージの下=1.2%
- 道路脇=1.2%
- フェンスの中や隙間=1.0%
- 木の上=0.8%
- 野良猫のコロニー=0.8%
- バルコニー=0.6%
- 乗り物の中=0.2%
- 材木の中=0.2%
解説
データを統計的に計算した所、いくつかの重要なポイントが見えてきました。具体的には以下です。
失踪からの経過時間と発見率
- 7日以内に発見される割合は、およそ33%
- 2ヶ月以内に発見できる割合は56%
- 90日(3ヶ月)を超えると発見率は上昇しない
- 1年以内に発見できる割合は61%
発見率を高める要因
- 飼い主が足を使って探し回ると発見できる確率は49%増加する
- 何らかの迷子札をしていると発見できる確率は12%増加する
失踪場所と発見率
- 50m以内で発見される割合は50%
- 500m以内で発見される割合は75%
完全室内飼いの猫と家の中と外を自由に行き来できる猫を比べた時、行動範囲に圧倒的な格差が見られました。前者の75%は失踪場所から137m以内で発見されたのに対し、後者の75%は1609mで発見されたと言います。普段から外で歩いていると行動範囲が広くなり、いなくなってしまった場合の捜索範囲が劇的に増加してしまうということが伺えます。
猫の性格と発見場所
飼い主の主観で「好奇心旺盛」と評される猫は他人の家に上がりこんでいる確率が高いことが明らかになりました。「好奇心旺盛」とは漠然とした表現ですが、おそらく人懐こくて誰にでも擦り寄っていくタイプの猫を指しているものと推測されます。そういった性格の猫が万が一迷子になってしまったときは、近隣住人の家の中に入り込んでいる可能性を考慮し、迷子チラシをもって近所を回るのが良いでしょう。
まとめ
今回の調査により、猫の飼い主として心がけるべきことが見えてきました。どれも当たり前のことですが、改めて復習してみましょう。
迷子猫を出さないために
- 完全室内飼いにする
- 室内の迷子対策をしっかり行う
- 迷子札を装着する
- いなくなったら半径50m以内を重点的に捜索する
- 迷子チラシを持って近所を回る