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塗り薬や湿布に含まれる抗炎症成分「フルルビプロフェン」は猫に危険

 2015年、アメリカ食品医薬品局(FDA)が注意喚起を行った抗炎症薬「フルルビプロフェン」に関し、猫の詳しい中毒症例が報告されました(2017.9.28/アメリカ)。

詳細

 「フルルビプロフェン」(Flurbiprofen)は非ステロイド系抗炎症薬「NSAIDs」の一種。人医学の分野では関節痛や筋肉痛の緩和を目的として使用されています。2017年、カリフォルニア州サンディエゴにある「VCA Emergency Animal Hospital and Referral Cente」が、この薬剤が原因と考えられる猫の中毒症例を報告しましたので概要をご紹介します。
 3歳になるオス猫(去勢済み・短毛種)が突然の元気消失、食欲不振、吐血など急性中毒が強く疑われる症状で来院した。飼い主に聞くと、完全室内飼いで拾い食いによる誤飲の可能性はないと言う。また家の中には薬箱が置かれていたものの、猫が接近できないようしっかりと保存されていたとのこと。唯一残された可能性は、飼い主が頭部に使用している抗炎症性の塗り薬だった(フルルビプロフェン10% | ケタミン5% | シクロベンザプリン2%)。猫が飼い主を直接舐めたという事実は確認できなかったが、夜は首元で寝ることが多かったという。
 状況証拠や症状などから、塗り薬に含まれる「フルルビプロフェン」中毒が疑われたため、積極的な治療を開始した。貧血に対しては赤血球の輸血、十二指腸の穿孔に対しては外科的な修復、高窒素血症には輸液治療を行った所、9日目には回復。採取した尿をラボに送って精密検査した所、予想通り「フルルビプロフェン」が検出された。
Topical flurbiprofen toxicosis in a cat
Elizabeth M. Yi et al., Journal of Veterinary Emergency and Critical Care 00(0) 2017, pp 1?6, doi: 10.1111/vec.12638

解説

 今回の症例では幸いにも猫が一命をとりとめましたが、過去には死亡事例も報告されています。例えば1987年の報告では、フルルビプロフェンの錠剤を誤飲した犬が消化管穿孔で死亡していますし、2015年にFDAが行った報告では、同一家庭内で暮らす猫3頭全てが腎不全や消化器不全で死亡したとされています(→出典)。フルルビプロフェンは「0.03%溶液」という形で犬猫の目薬として使用されているものの、使い方や用量を誤ると重大な副作用引き起こし、場合によっては死亡してしまうこともあるようです。
 猫がどのようにフルルビプロフェンを摂取したのかに関しては結局わからずじまいでした。状況から考え、以下の3つの可能性が考えられます。
塗り薬の摂取ルート
  • 飼い主の頭を直接舐めた
  • 塗り薬が猫の被毛に付着し、間接的に舐めた
  • 塗り薬が猫の体に付着し、皮膚を通して吸収された
 過去4ヶ月間は何ら症状を示していなかったことから考えると、何らかのアクシデントにより薬を摂取してしまったものと推測されます。例えば「塗りむらがべっとりと被毛に付いて大量になめとってしまった」とか「薬を吸収しやすい耳介に付いてしまった」などです。 猫が毛づくろいを通して毒物を摂取するグルーミング性中毒には要注意  日本国内では「フルルビプロフェン」自体は存在していますが、「塗り薬」という形では販売されていません。ただし人間用の湿布薬としては普通に処方されていますので、猫が誤って舐めてしまわないよう十分な注意が必要です。湿布を猫の被毛に貼るという間抜けな飼い主はいないでしょうが、猫がスフィンクスのような無毛品種の場合、ひょっとすると炎症部分に人間用の湿布を貼ってしまうというアクシデントが起こるかもしれません。塗り薬だろうが湿布薬だろうが、成分に「フルルビプロフェン」(Flurbiprofen)と記載されている製品にはくれぐれも要注意です。 猫にとって危険な毒物