詳細
調査を行ったのは、オランダ・ユトレヒト大学獣医学部のチーム。日常的に生肉を給餌されている猫19頭と加工済みのフードを給餌されている猫17頭を対象とし、食事内容と糞便に含まれるESBL/AmpC産生菌との関連性を検証しました。
こうした結果から調査チームは、猫に対して生のフードを与えることがESBL/AmpC産生菌の感染リスクを高めているという可能性を明らかにしました。また生肉を扱っている飼い主も同等のリスクにさらされているとも。 Raw pet food as a risk factor for shedding of extended-spectrum beta-lactamase-producing Enterobacteriaceae in household cats
Baede VO, Broens EM, Spaninks MP, Timmerman AJ, Graveland H, Wagenaar JA, et al. (2017) PLoS ONE12(11): e0187239. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0187239
- ESBL/AmpC産生菌
- 多剤耐性菌の一種。「ESBL」も「AmpC」もβラクタム系の薬剤を分解する「βラクタマーゼ」と呼ばれる酵素。これらの酵素を産生できるESBL/AmpC産生菌に対しては従来の抗菌薬が効かないことから、感染者の増加や症状の重症化が懸念されている。
加工食と生食
- 加工食グループドライ15食(ブランド)とウェット20食(8ブランド)のうち、菌が検出されたものはなかった。
合計51の糞便サンプル中、陽性は3つ。この3つは3頭の猫から採取されたものだった。 - 生食グループ生肉食18食では14食(77.8%)でESBL/AmpC産生菌が検出された。
合計57の糞便サンプル中37個が陽性。この37個は17頭の猫から採取されたものだった。
こうした結果から調査チームは、猫に対して生のフードを与えることがESBL/AmpC産生菌の感染リスクを高めているという可能性を明らかにしました。また生肉を扱っている飼い主も同等のリスクにさらされているとも。 Raw pet food as a risk factor for shedding of extended-spectrum beta-lactamase-producing Enterobacteriaceae in household cats
Baede VO, Broens EM, Spaninks MP, Timmerman AJ, Graveland H, Wagenaar JA, et al. (2017) PLoS ONE12(11): e0187239. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0187239
解説
猫が感染するリスクとして唯一残ったのは「生肉の給餌」でした。加工食の検出率が0%だったのに対し生肉食のそれが77.8%だったことから、未加工食(ローフード)が感染源であることは間違いないと考えられます。猫の場合は口から食べることで、人間の場合は素手で触ることで菌を体内に取り込みますので、「生肉食神話」を頭ごなしに信用してしまうのも問題でしょう。
生活空間を共有している人とペットの腸内細菌叢(フローラ)が近似化してくるという現象は、過去に行われた非常に多くの調査で確認されています。以下は一例です。
ESBL/AmpC産生菌は病原性が低く、免疫力が正常な人ではほとんど症状を示しません。しかし老齢、若齢、ストレス、免疫抑制剤の服用といったきっかけによって日和見感染することがありますので猫も人間も要注意です。以下は姉妹サイト「子犬のへや」からの関連記事です。 多剤耐性菌の脅威は犬や猫にも迫ってきている 犬と飼い主は「ESCRE」を共有するようになる
細菌近似化現象
- 60組の犬と飼い主のペアを調査した所、10%のペアが同じ系統の大腸菌を保有していた(→出典)。
- 6ヶ月に及ぶ長期的な調査では、8世帯中4世帯において共通の大腸菌が確認された (→出典)。
- 48世帯を対象とした調査では、17%の人-犬ペアで同系統の大腸菌が確認された(→出典)。
ESBL/AmpC産生菌は病原性が低く、免疫力が正常な人ではほとんど症状を示しません。しかし老齢、若齢、ストレス、免疫抑制剤の服用といったきっかけによって日和見感染することがありますので猫も人間も要注意です。以下は姉妹サイト「子犬のへや」からの関連記事です。 多剤耐性菌の脅威は犬や猫にも迫ってきている 犬と飼い主は「ESCRE」を共有するようになる