詳細
調査を行ったのは韓国の国立大学・仁川大学校。2009年から2011年の期間、ソウルと京畿道(キョンギド=首都近郊)にある9つの動物病院を受診した猫のうち、何らかの消化管疾患(急性下痢・慢性下痢・腹痛・体重減少・腹部膨満・栄養失調)を抱えた235頭を対象とし、ウマやブタの増殖性腸炎を引き起こす細菌「ローソニア・イントラセルラリス」(Lawsonia intracellularis)の大規模な抗体検査を行いました。その結果、以下のような陽性率が出たといいます。
Jung-Yong Yeh et al., Intern J Appl Res Vet Med Vol.15,No.1,2017
首都圏猫のローソニア陽性率
- ソウル=3.7%
- キョンギド=6.2%
- 全体=5.2%
Jung-Yong Yeh et al., Intern J Appl Res Vet Med Vol.15,No.1,2017
解説
ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)はS字型をしたグラム陰性の小桿菌。ブタやウマに感染して増殖性腸炎を引き起こすほか、ヒツジ、ハムスター、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、フェレット、イヌ、ブルーフォックス、オジロジカ、ダチョウ、エミュー、アカゲザル、ニホンザルでの感染例が確認されています。
感染例のほとんどがブタやウマに集中していることから、その他の動物における疫学調査はほとんど行われておらず、何らかの消化管疾患の原因になっているのかどうかは全くわかっていません。過去に行われた少数の調査では、犬や猫の陽性率に関し以下のような結果が出ています。
犬猫のローソニア陽性率
- ドイツ・2003年ドイツのさまざまな地域から犬57頭分、猫50頭分の糞便サンプルを集めて調べた所、陽性率は犬が7.0%、猫が0%だった(→出典)。
- チェコ・2007年消化管症状(慢性もしくは断続的な下痢)のある犬54頭のうち、陽性だったのは40頭(74.1%)だった。一方、症状を示していない犬17頭のうち陽性だったのは13頭(76.5%)とそれほど変わらなかった(→出典)。
- 韓国・2008年102頭のげっ歯類と24頭の野良猫を、韓国北東部にある9つの養豚場近くから集めて陽性率を調べた所、げっ歯類が15.7%、猫が12.5%だった(→出典)。
- アメリカ・2008年2006年8月から2007年1月の期間、さまざまな哺乳動物を対象として陽性率調査を行った所、テリムクドリモドキ、アライグマ、ジリス、野猫(14頭)ではいずれも0%だった(→出典)。
- アメリカ・2012年ウマの増殖性腸炎が確認された10の農場近くで、さまざまな哺乳動物を対象として陽性率調査を行った所、2つの農場に属する3頭の猫で陽性だった(→出典)。
- ブラジル・2015年40頭の下痢症状を示す犬と18頭の健康な犬を対象として陽性率を調べた所、症状群が7.5%(3頭・すべて3ヶ月齢の子犬)、無症状群が0%だった(→出典)。