詳細
2017年7月、カリフォルニア大学デイヴィス校は「今月の症例」という形で、猫の大腿動脈からフィラリア成虫を取り除くという世界初の外科手術例を報告しました。概要は以下です。
カリフォルニア州ロサンゼルスに暮らしている猫の「ストーミー」(シャム | 4歳 | メス)が、突如として右後足に力が入らないという症状を示した。驚いた飼い主がバークリーにある救急外来を受診してエックス線検査を行ったところ、肺動脈内にフィラリアの成虫が確認され、抗原テストでも追認された。しかし駆虫薬を用いての治療は危険を伴うため、本格的な治療はカリフォルニア大学デイヴィス校の専門医に任されることになった。
大学病院はさっそく特別治療チームを編成。超音波検査を行って肺動脈の中に虫がいること、および虫が原因で肺高血圧症が引き起こされていることを確認した。さらに腹部の超音波検査を行い、腹部大動脈を経由して右後ろ足の大腿動脈に成虫が紛れこみ、血流を阻害していることも突き止めた。
このままでは切断を余儀なくされると判断したチームは、CTスキャン検査を行ってフィラリアの正確な位置を把握。大腿動脈を切開し、体長およそ13cmにも及ぶ成虫を取り出すことに成功した。 虫を除去してからは血流が元に戻ったものの、依然として予断を許さない状況で、神経や筋肉が正常に回復しない場合は、下肢切断という可能性を考慮する必要がある。 UC Davis Veterinarians Remove Heartworm from Cat's Femoral Artery
このままでは切断を余儀なくされると判断したチームは、CTスキャン検査を行ってフィラリアの正確な位置を把握。大腿動脈を切開し、体長およそ13cmにも及ぶ成虫を取り出すことに成功した。 虫を除去してからは血流が元に戻ったものの、依然として予断を許さない状況で、神経や筋肉が正常に回復しない場合は、下肢切断という可能性を考慮する必要がある。 UC Davis Veterinarians Remove Heartworm from Cat's Femoral Artery
解説
猫の場合、仮にフィラリアに感染しても自然治癒力によって駆除されることが多いといいます。しかし、感染した虫の数が多かったり免疫力が十分でない場合は、今回の症例のように体長10cmを超える成虫が体の中を経巡り、我が物顔で末端の動脈に君臨するということが起こりうるようです。
猫は体が小さく、駆虫薬でフィラリアをバラバラに分解してしまうと破片が血管内で目詰まりを起こし、生命を脅かしてしまいます。成虫を外科的に取り出してくれるような専門性の高い病院はそこら中にあるというわけではありませんので、飼い主による責任ある飼育が最高の予防医学と言えるでしょう。ちなみに大腿動脈からフィラリアを除去するという手術例は、これまで犬で数例報告されているだけで、猫では世界初ということです。
猫は体が小さく、駆虫薬でフィラリアをバラバラに分解してしまうと破片が血管内で目詰まりを起こし、生命を脅かしてしまいます。成虫を外科的に取り出してくれるような専門性の高い病院はそこら中にあるというわけではありませんので、飼い主による責任ある飼育が最高の予防医学と言えるでしょう。ちなみに大腿動脈からフィラリアを除去するという手術例は、これまで犬で数例報告されているだけで、猫では世界初ということです。