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猫の被毛中のニコチン濃度は飼い主のタバコ喫煙量に応じて上昇する

 猫の被毛に含まれるニコチン濃度は、飼い主が吸うタバコの本数に応じて上昇することが明らかになりました(2017.1.23/スコットランド)。

詳細

 調査を行ったのは、スコットランド・グラスゴー大学の獣医生命科学部チーム。2014年7月から2015年3月までの期間、タバコの煙と接触する機会がある猫37頭と、接触機会がない猫40頭から被毛を採取すると同時に飼い主にアンケート調査を行い、飼い主と猫双方の生活環境を明らかにしました。猫の被毛の内外に含まれるニコチンの総量と、生活環境中のタバコ煙との関連性を統計的に検証したところ、以下のような因子がニコチン濃度を上昇させていることが明らかになったといいます。
ニコチン濃度増加因子
  • 飼い主が喫煙者 飼い主が煙草を吸わない「非暴露グループ」の中央値が0.064ng/mgだったのに対し、飼い主が煙草を吸う「暴露グループ」の中央値は0.281ng/mg。 猫の被毛中のニコチン濃度は飼い主が煙草を吸うかどうかで左右される
  • 煙との接触頻度 猫から離れて煙草を吸う「間接暴露グループ」(8頭/21.6%)の中央値は0.092ng/mg、猫の近くでしばしばタバコを吸う「断続的直接暴露グループ」(14頭/37.8%)の中央値は0.170ng/mg、猫の近くでいつもタバコを吸う「継続的直接暴露グループ」(15頭/40.5%)の中央値は0.223ng/mg。 猫の被毛中のニコチン濃度は猫と煙の接触頻度によって左右される
  • 喫煙本数 1日10本以下の「ライトスモーカーグループ」(16頭/43.2%)の中央値は0.259ng/mg、1日10本超の「ヘビースモーカーグループ」(16頭/43.2%)の中央値は0.833ng/mg。 猫の被毛中のニコチン濃度は飼い主が吸うタバコの本数によって左右される
 「飼い主との同居期間」、「猫の被毛色」(黒・白・その他)、「猫の外出の有無」、「屋外環境」(都市部・郊外)といった因子は被毛中のニコチン濃度とそれほど連動していないことが明らかになりました。一方、「飼い主が喫煙者がどうか」、「猫がどの程度煙と接する機会があるか」、「飼い主はどの程度タバコを吸うか」という因子は、猫の被毛に含まれるニコチン濃度を上昇させる可能性が示されました。
 タバコの煙と接触するはずがない「非暴露グループ」の猫のうち、ニコチン濃度が0だったのは全体のわずか25%に過ぎなかったことから、調査チームはたとえ家庭内に喫煙者がいなくても、猫たちは飼い主の知らない場所で二次喫煙や三次喫煙の被害に遭っているかもしれないと警告しています。またニコチン濃度「0.1ng/mg」を基準とした場合、感度98%でタバコ煙への暴露を判定できることから、この値をバイオマーカーにして他の研究に応用していきたいとのこと。
Hair nicotine concentration measurement in cats and its relationship to owner-reported environmental tobacco smoke exposure.
Smith, V. A., McBrearty, A. R., Watson, D. G., Mellor, D. J., Spence, S. and Knottenbelt, C. (2017), J Small Anim Pract, 58: 3?9. doi:10.1111/jsap.12616

解説

 過去に犬を対象として行われた同様の調査と比較すると、猫のほうが多量のニコチンを被毛中に含んでいるようです。具体的には、非暴露グループにおける中央値に関し、犬では「0.010ng/mg」だったのに対し当調査の猫では「0.064ng/mg」でした。また暴露グループにおける中央値に関し、犬では「0.910ng/mg」だったのに対し猫では「1.223ng/mg」でした。このような猫の被毛における高いニコチン濃度は、グルーミングという習性によって引き起こされているものと推測されます。
 タバコを消した後、室内に残った煙が蓄積し、数ヶ月から数年後になって接触してしまうことを「三次喫煙」と言います。タバコ由来の化学物質は壁や床にあるひび割れや隙間、配管や電線を通じて他の場所に移動することもあるそうです。猫においてはおそらく、被毛がタバコの煙や壁、カーペット、カーテンなどと接触し、化学物質をトラップしてしまうものと推測されます。グルーミングによってその化学物質を体内に取り込むと、血流を通じて毛包に到達し、被毛の中に含まれるようになります。つまり喫煙者がいる家庭においては、体をきれいにするつもりで行っているグルーミングが、逆に猫の体を汚染してしまっているのです。 猫はグルーミングを通して被毛に付いたニコチンを経口的に摂取する  過去に行われた調査では、タバコの煙が猫の口腔癌(Snyder et al. 2004)やリンパ腫(Bertone et al. 2002)の発症率を高めると報告されています。近年国内では受動喫煙を防止するための法整備が進んでいますが、ペットの健康を守るため、家庭内においても禁煙を徹底した方が良いようです。 猫を飼う室内環境の整え方 猫のガン