詳細
調査を行ったのは、アメリカ・オハイオ州立大学を中心としたチーム。インフルエンザウイルスを媒介する動物としての猫の役割を明らかにするため、種類の異なる3つのウイルス陽性率を、2009年9月~2010年9月と2011年6月~2012年8月という2つの時期に分けて調査しました。具体的な調査対象となったのは「新型ヒトインフルエンザウイルスH1N1」、「季節性ヒトインフルエンザウイルH1N1」、「季節性ヒトインフルエンザウイルスH3N2」の3種です。
こうした結果から調査チームは、ヒトインフルエンザウイルスが猫に感染したとしても重篤な症状を引き起こすことはないものの、感染者からいったん猫にウイルスが移り、その猫を媒介して別の人間にウイルスが移る可能性を否定できないとの結論に至りました。つまりヒトインフルエンザウイルスは、人間の身近に存在している猫を、ちょうど「飛び石」のように利用して勢力を拡大しているという図式です。 Post-pandemic seroprevalence of human influenza viruses in domestic cats.
Ibrahim M, Ali A, Daniels JB, Lee C-W. Journal of Veterinary Science. 2016;17(4):515-521. doi:10.4142/jvs.2016.17.4.515.
2009年9月~2010年9月(400頭)
- 新型H1N1感染率=22.5%
- 季節性H1N1感染率=33.0%
- 季節性H3N2感染率=43.5%
2011年6月~2012年8月(432頭)
- 新型H1N1感染率=33.6%
- 季節性H1N1感染率=10.9%
- 季節性H3N2感染率=17.6%
こうした結果から調査チームは、ヒトインフルエンザウイルスが猫に感染したとしても重篤な症状を引き起こすことはないものの、感染者からいったん猫にウイルスが移り、その猫を媒介して別の人間にウイルスが移る可能性を否定できないとの結論に至りました。つまりヒトインフルエンザウイルスは、人間の身近に存在している猫を、ちょうど「飛び石」のように利用して勢力を拡大しているという図式です。 Post-pandemic seroprevalence of human influenza viruses in domestic cats.
Ibrahim M, Ali A, Daniels JB, Lee C-W. Journal of Veterinary Science. 2016;17(4):515-521. doi:10.4142/jvs.2016.17.4.515.
解説
変異型が多くて世界的な大流行を起こしやすいA型インフルエンザウイルスは、一般的に種特異性が高いとされていますが、異なる動物種間における伝播も確認されています。例えば以下は、今回の調査対象となったヒトインフルエンザウイルス3種以外で、猫における感染が確認されたことがあるウイルスの一覧です。直近では、2016年12月に「トリH7N2」の感染が確認されました。
猫への感染が確認されたインフルエンザウイルス一覧
- ヒトH2N2
- ヒトH3N2
- アザラシH7N7
- トリH1N9
- トリH4N6
- トリH5N1
- トリH7N2
- トリH7N3
- トリH7N7
- トリH9N2
- イヌH3N2
猫のインフルエンザ予防
- 人間から猫に感染する インフルエンザウイルスに感染した人間がくしゃみや咳をすると、ウイルスを含んだしぶきが前方2mくらいに飛び散ります。このしぶきが猫の被毛に降りかかってしまうと、グルーミングを通じて感染してしまう可能性が大です。
【対策】
くしゃみや咳をするときに口を何かで抑え、手洗いを励行すると、感染の確率を大幅に下げることができます。 - 猫から人間に感染する 猫の外出を許している場合、インフルエンザに感染した不特定多数の人間と接する機会が生じてしまいます。呼吸器から出た飛沫が猫に降りかかってしまうこともありますし、唾や鼻水がついた手で頭や体を撫でられることもあります。この状態で猫が帰宅すると、飼い主が誰とも接触していないにもかかわらず、なぜかインフルエンザにかかるという現象も起こりえます。
【対策】
猫の放し飼いをやめて完全室内飼いに切り替えます。