詳細
調査を行ったのは、イギリス・ブリストル大学獣医科学校のチーム。学校内に保存されている症例データの中から、好中球性の炎症性腸疾患(IBD)を発症した猫7頭と、リンパ形質細胞性のIBDを発症した猫8頭をピックアップし、十二指腸の生検サンプルをFISHと呼ばれる検査手法で調べ直しました。炎症の発生場所、度合い、特徴を明確化すると同時に、含まれている微生物の種類を精査したところ、サルモネラ菌や大腸菌は全く検出されなかったのに対し、すべての組織サンプルからカンピロバクター菌が検出されたと言います。また菌種に関しては「C. lari」と「C. upsaliensis」は検出されず、「C. coli」と「C. jejuni」だけが見つかったとも。さらに「C. coli」と「C. jejuni」の2種類に絞り込んで調べを進めたところ、「C. jejuni」に関しては両グループで違いは見られなかったものの、「C. coli」に関しては以下のような違いが見られたと言います。
Maunder, C. L., Reynolds, Z.F., Peacock, L., Hall, E.J., Day, M.J. and Cogan, T.A. (2016), J Vet Intern Med, 30: 996?1001. doi:10.1111/jvim.14374
IBDとC. Coliの関係
- 好中球性IBD(7頭)●C. Coli検出率=85.7%(6/7)
●粘膜中のバクテリア中央値=0.7/hpf - リンパ形質細胞性IBD(8頭)●C. Coli検出率=12.5%(1/8)
●粘膜中のバクテリア中央値=0/hpf
Maunder, C. L., Reynolds, Z.F., Peacock, L., Hall, E.J., Day, M.J. and Cogan, T.A. (2016), J Vet Intern Med, 30: 996?1001. doi:10.1111/jvim.14374
解説
猫における「C. coli」の保有率は極めて低く、また仮に保有していたとしても臨床症状を示す事はあまりないとされています。今回の調査ではこの菌が好中球性の炎症性腸疾患を引き起こしている可能性が示されましたが、なぜ一部の猫だけで病原性を発揮するのかに関しては不明です。犬や人間における発症の危険因子が「免疫力の低下」だとされていますので、猫でも同じような日和見感染のメカニズムが働いたのかもしれません。
「C. coli」は人間の食中毒菌として有名ですので、猫のトイレを掃除するときは若干気をつけた方がよさそうです。例えば1987年、ジョージア州アセンズの大学生を対象とした調査では、カンピロバクターによって下痢症状を示した学生の危険因子は「調理済みの鶏肉」、「未調理~加熱不足の鶏肉」、「猫や子猫との接触」の3つだったと言います(→出典)。また2005年にアメリカ獣医協会が行った調査では、アメリカ中西部において臨床上健康な子猫の糞便から「C. upsaliensis」が検出されることは珍しくなく、保有期間は1ヶ月以上の長期に及ぶことがあるため、特に子猫の飼い主は手洗いを始めとした衛生に気をつけた方が良いと報告されています(→出典)。
常識の範囲内ですが、猫(特に子猫)が下痢気味のウンチをしたときは、とりわけ注意深く掃除したほうがよいでしょう。またグルーミングを介して猫の口元に菌が付着する可能性もありますので、猫に触った後はよく手を洗った方が良いと思われます。
常識の範囲内ですが、猫(特に子猫)が下痢気味のウンチをしたときは、とりわけ注意深く掃除したほうがよいでしょう。またグルーミングを介して猫の口元に菌が付着する可能性もありますので、猫に触った後はよく手を洗った方が良いと思われます。