詳細
調査を行ったのは、アメリカにあるオレゴン州立大学が中心となったチーム。米国内に暮らしているペット猫(19頭 | 平均5.5歳 | オス猫13頭)とオレゴン州内にある3つの保護施設からランダムで選別した保護猫(19頭 | 平均6.3歳 | オス猫12頭)を対象とし、猫に対して最もアピールしやすい刺激が何であるかを検証しました。実際に用いられた刺激は以下です。
こうした事実から調査チームは、猫は非社会的な動物というイメージを持たれがちだが、意外に人間との接触を好む傾向があるようだとの結論に至りました。今回得られた知見は、猫の生活環境を豊かにするエンリッチメントや、猫をしつける際の強化刺激を選別するのに役立ってくれるだろうと期待されています。ただし猫の好みには先天的な要因や後天的な経験が複雑に絡み合っているため、好みを把握する際は個別にテストする必要があるとも。 Social interaction, food, scent or toys? A formal assessment of domestic pet and shelter cat (Felis silvestris catus) preferences
Vitale Shreve, Kristyn R., Mehrkam, Lindsay R., Udell, Monique A.R., Behavioural Processes , dx.doi.org/10.1016/j.beproc.2017.03.016
猫への刺激いろいろ
- 人との接触声を出す | 撫でる | おもちゃで遊ぶ
- 食べ物チキン | ツナ | チキンフレーバーのおやつ
- おもちゃ動くおもちゃ | ネズミのおもちゃ | 羽根のおもちゃ
- 匂いアレチネズミ | イヌハッカ(キャットニップ) | 見知らぬ猫
選好された刺激のサブカテゴリ
- 人との接触✓おもちゃで遊ぶ>声を出す
✓撫でる≒声を出す
✓おもちゃで遊ぶ≒撫でる - 食べ物✓ツナ>チキンフレーバー
✓ツナ≒チキン
✓チキン≒チキンフレーバー - おもちゃ✓動くおもちゃ>ねずみ
✓動くおもちゃ>羽根
✓ねずみ≒羽根 - 匂い✓イヌハッカ>アレチネズミ
✓イヌハッカ>見知らぬ猫
✓アレチネズミ≒見知らぬ猫
猫が最も好む刺激
- 人との接触19頭(50%)が選好/接触時間は3分間のうち65%
- 食べ物14頭(37%)が選好/接触時間は3分間のうち69%
- おもちゃ4頭(11%)が選好/接触時間は3分間のうち50%
- 匂い1頭(2%)が選好/接触時間は3分間のうち52%
こうした事実から調査チームは、猫は非社会的な動物というイメージを持たれがちだが、意外に人間との接触を好む傾向があるようだとの結論に至りました。今回得られた知見は、猫の生活環境を豊かにするエンリッチメントや、猫をしつける際の強化刺激を選別するのに役立ってくれるだろうと期待されています。ただし猫の好みには先天的な要因や後天的な経験が複雑に絡み合っているため、好みを把握する際は個別にテストする必要があるとも。 Social interaction, food, scent or toys? A formal assessment of domestic pet and shelter cat (Felis silvestris catus) preferences
Vitale Shreve, Kristyn R., Mehrkam, Lindsay R., Udell, Monique A.R., Behavioural Processes , dx.doi.org/10.1016/j.beproc.2017.03.016
解説
今回の調査で得られた大きな収穫は「猫が最も好む刺激は何か」という点ではなく、「猫にはそれぞれ好みの順位がある」という点だと考えられます。調査チームが指摘しているように、猫の好みには先天的な素因と後天的な経験が深くかかわっていますので、自分の飼っている猫が一体何を1番好むのかは、飼い主それぞれが知っておく必要があるでしょう。
しかし全く初対面の猫と仲良くなろうとするときは、今回の知見が多少役に立ってくれるかもしれません。例えば、無闇やたらに手をパンパン叩いて「猫ちゃんこっちおいで!」と叫ぶよりも、釣り竿型のおもちゃで猫の目の前に獲物をちらつかせた方が猫の気を引ける確率が高いと考えられます。
猫が食べ物やおもちゃよりも人との接触を好むという事は、多くの飼い主が経験的に知っていることです。人間の近くにいるときに感じる身体の暖かさ、撫でられた時の生理的な気持ちよさ、保護者が近くにいることの安心感などが報酬となり、行動の頻度が自然に高まったものと推測されます。空腹感や狩猟欲求が一時的に盛り上がって急激に落ち着くのに対し、生理的快感や安心への欲求は、上下の振幅が穏やかな代わりに長期的に持続するという特徴を持っているのかもしれません。猫がしつこいくらい膝の上を求めてくるのは、おそらくそのためでしょう。猫の体の構造をよく理解した上でマッサージでもしてあげてください。