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米国内における犬猫の回虫保有率

 アメリカ国内で見過ごされている寄生虫TOP5の1つ「回虫」に関し、ペットとして飼われている犬や猫を対象とした大規模な保有率調査が行われました(2016.9.22/アメリカ)。

詳細

 「回虫症」とは、トキソカラ属の回虫によって引き起こされる寄生虫症の一種。「猫回虫」(Toxocara cati)が猫に感染して発症した場合は「猫回虫症」、「犬回虫」(Toxocara canis)が犬に感染して発症した場合は「犬回虫症」、そして「猫回虫」や「犬回虫」が人間に感染して発症してしまった場合は「トキソカラ症」と呼ばれます。 ネコ回虫の虫卵と成虫  コーネル大学獣医学部の研究チームは、2011年から2014年の期間、寄生虫検査のため外注ラボに送られてきた犬や猫の糞便サンプルを基に、アメリカ全土における回虫の保有率を地域別に調査しました。50万を超える飼い猫のサンプルと、250万を超える飼い犬のサンプルを調べ、4年間における平均の保有率を算出したところ、猫に感染する「猫回虫」の保有率が4.6~5.1%、犬に感染する「犬回虫」の保有率が1.8~2.0%であることが明らかになったといいます。また全体的に犬よりも猫の保有率が高く、この傾向は特にアメリカ北東部、中西部および南部において顕著だったとも。
 回虫はアメリカ疾病対策センター(CDC)が発表している「アメリカ国内で見過ごされている寄生虫TOP5」(残り4つはトキソプラズマ・トリパノソーマ・有鉤条虫・トリコモナス | →出典)のうち、駆虫薬で比較的簡単にコントロールできる寄生虫であるため、犬や猫の飼い主や獣医師は、定期的な糞便検査や駆虫治療を行い、蔓延の予防に務めた方が良いと推奨しています。 Comparison of the prevalence of Toxocara egg shedding by pet cats and dogs in the U.S.A., 2011?2014
Araceli Lucio-Forster, Jennifer S. Mizhquiri Barbecho, et al. 2016

解説

 犬よりも猫の保有率が高かった理由としては、以下のようなものが想定されています。飼い主の努力で防げる部分が大いにありそうです。
猫の回虫感染ルート
  • ライフスタイル犬よりも外を自由に出歩く機会が多いため、飼い主の目を盗んで汚染物に接触する機会が増える。
  • 狩猟行動寄生虫の保有率が高いことで知られるげっ歯類や鳥類を捕食することが多いため、感染の危険性が高まる。
  • おざなりな駆虫治療犬とは違い、猫は定期的なフィラリア治療を受けていないため、体内の回虫が駆虫されずに居残り、糞便中に排泄される(※フィラリア治療をする場合は、必ず猫用の薬を処方してもらってください)。
 「ESCCAP」(コンパニオンアニマルの寄生虫に関する欧州科学評議会)が発行しているガイドラインは、年に4回の治療では完全に寄生虫を駆除することができないため、できれば月に1回の駆虫治療が望まれるとしています(→出典)。駆虫薬に全く副作用がなければ構いませんが、現実はそういうわけにはいきません。代替案としては「1~3ヶ月に1度の糞便検査」といったものが提唱されています。寄生虫陽性と出た時だけ治療を行えば、駆虫薬の投与回数を最小限に抑えることができるという狙いです。
 回虫症は、一度治ったと思わせておいて1年後ぐらいに嘔吐物や糞便の中に再登場し、飼い主をびっくり仰天させる寄生虫症。免疫力が確立した成猫の体内でも成長することができ、食欲不振、下痢、嘔吐といった症状を引き起こします。また人間に感染した場合は、幼虫のまま体内を移行して内臓、中枢神経、眼などに潜伏し、「幼虫移行症」を引き起こしたりします。特に眼に移行した時は、眼球内にうねうねと動く幼虫の姿を視認することができますので、かなりグロテスクです。猫のためにも飼い主のためにも、予防を徹底することが望まれます。 猫の回虫症 人間の眼球内に発症した幼虫移行症