詳細
報告を行ったのは、「アメリカ疾病予防管理センター」(CDC)の調査チーム。全米50州に暮らす65歳未満の労働者とその配偶者、および扶養者からの保険請求を集計したデータベースを元に、2005~2013年の期間、一体どのくらいの人が「猫ひっかき病」に感染したかを調査しました。
Nelson CA, Saha S, Mead PS, et al. 2016 DOI: 10.3201/eid2210.160115
- 猫ひっかき病
- 「バルトネラ・ヘンセラ」(Bartonella henselae)という細菌によって引き起こされる感染症の一種。宿主の免疫力が低下した時だけ発症する日和見感染症。バルトネラ・ヘンセラを保有する「ネコノミ」(Ctenocephalides felis)が猫に寄生し、その猫が爪や牙を通して人間と接触することで、人間にも感染する。
Nelson CA, Saha S, Mead PS, et al. 2016 DOI: 10.3201/eid2210.160115
患者数の変遷
- 外来患者が最も多かったのは2005年の5.7
- 2005年以降は緩やかに減少し、2013年には4.0まで低下
- 2005年~2007年の件数は平均5.5
- 2011年~2013年の件数は平均4.4
- 患者数の低下は南部の州において顕著だった
- 2005~2007年の入院患者は全体の3.5%
- 2011~2013年の入院患者は全体の4.2%
- 入院患者に関しては数の増減がそれほど見られない
地域による特徴
- 患者数が最も少なかったのはネコノミがそれほど生息していない乾燥した山岳地域で2.2
- 比較的多かったのは南部の州で6.1~6.4
年齢・性別による特徴
- 5~9歳が最も多く、外来患者では9.0、入院患者では0.4
- 成人では60~64歳の女性で多く、外来患者では6.6、入院患者では3
- 外来患者の62.0%、入院患者の55.6%は女性
時期による特徴
- 外来患者を月別にみると1月が最も多く、全体の10.2%
- 入院患者は8月から11月に多くなる
- すべての地域において、1月に診断数の増加が見られた
- 10~49歳の年齢層では1月に診断されることが多い
- 9歳未満と50歳以上の年齢層では8月から11月に診断されることが多い
治療費の特徴
- 外来患者の平均医療費は244ドル
- 入院患者の平均医療費は13,663ドル
- 入院患者の入院日数中央値は3日間
- 外来患者の年間医療費は292万ドル
- 入院患者の年間医療費は683万ドル
- 猫ひっかき病患者の年間医療費は976万ドル
解説
CDCによると、外来患者が「4.5件/10万件」、入院患者が「1.9件/10万件」という数字は、全米において4,500万世帯が猫を飼っているという事実と考え合わせると、比較的低く抑えられているとのこと。効果的なノミ駆除薬の普及によって、ネコノミの繁殖が抑えられているからではないかと推測されています。
すべての地域において、請求数が1月に急増する理由はよくわかっていません。「子猫の出産ラッシュが春から夏にかけてある」という事実と、「ネコノミに感染するのは0~6ヶ月齢の子猫に多い」という事実を考え合わせると、「ネコノミに感染した子猫のピークが秋から冬に到来し、それに合わせて人間の感染者も増える」という仮説が浮かび上がってきます。この仮説は1月の患者数が増えるという現象の説明にはなっていますが、12月の患者数が減るという現象までは説明できていません。
他の可能性もあります。「猫は年末から年始にかけてのホリデーシーズンに保護施設から家庭内に引き取られることが多い」、「1月に感染のピークを見せるのは10~49歳の年齢層で多い」、「ティーンエージャーと中年層はホリデーシーズンに家にこもることが多い」、「気温が下がってくると家にこもる猫が多くなる」といった事実をすべて合わせて考えると、「年末年始に家庭に迎えられた猫を経由して、家に引きこもっていた10~49歳の人たちが感染する」といった仮説が浮かび上がってきます。魅力的な仮説ではありますが、年末年始のホリデーシーズンにおける猫の譲渡率が本当にアップしているかどうかを、もう少し厳密に確認しなければならないでしょう。 猫ひっかき病は宿主の免疫力が低下した時にだけ猛威を振るう日和見感染症の一種。まれにではありますが、危うく死にかけたといった類の報告を見かけることもありますので(→出典)、予防に努めるに越した事はありません。以下は猫ひっかき病に関する基本的な情報と予防法です。
他の可能性もあります。「猫は年末から年始にかけてのホリデーシーズンに保護施設から家庭内に引き取られることが多い」、「1月に感染のピークを見せるのは10~49歳の年齢層で多い」、「ティーンエージャーと中年層はホリデーシーズンに家にこもることが多い」、「気温が下がってくると家にこもる猫が多くなる」といった事実をすべて合わせて考えると、「年末年始に家庭に迎えられた猫を経由して、家に引きこもっていた10~49歳の人たちが感染する」といった仮説が浮かび上がってきます。魅力的な仮説ではありますが、年末年始のホリデーシーズンにおける猫の譲渡率が本当にアップしているかどうかを、もう少し厳密に確認しなければならないでしょう。 猫ひっかき病は宿主の免疫力が低下した時にだけ猛威を振るう日和見感染症の一種。まれにではありますが、危うく死にかけたといった類の報告を見かけることもありますので(→出典)、予防に努めるに越した事はありません。以下は猫ひっかき病に関する基本的な情報と予防法です。