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猫の三重炎(Triaditis)に関する基本情報

 猫の体内で密接に連動している小腸、胆管、膵臓を同時に襲う謎多き消化器疾患「三重炎」に関する調査が行われました(2016.10.3/ギリシア)。

詳細

 調査を行ったのは、ギリシア・テッサロニキ大学の獣医学チーム。肝臓、小腸、胆管の複合疾患に関しては、これまで散発的な報告はあったものの、それらは全て死後解剖によって得られた知見であり、生きている猫を対象とした詳しい報告はありませんでした。そこで調査チームは、テッサロニキ大学付属の動物病院を受診した猫を対象とし、いまだに不明な部分が多い猫特有の消化器系疾患「三重炎」(Triaditis)に関する調査を行いました。 体腔内における猫の「三重炎」(Triaditis)発症部位  対象となったのは、「慢性的に元気がない・食欲の増加や減少・嘔吐・糞便の異常・黄疸・体重減少」など、三重炎を示唆するような何らかの症状を抱えた猫27頭と、何の症状も示していない猫20頭。尿検査、糞便検査、全血検査、組織学的検査、画像検査を行った後、腹壁切開で各臓器から組織サンプルを採取して病理学的な検査を行った所、以下のような結果になったといいます。
症状のある猫(合計27頭)
  • 胆管炎のみ=2頭(7.4%)
  • 膵炎のみ=1頭(3.7%)
  • 炎症性腸疾患のみ=8頭(29.6%)
  • 炎症性腸疾患+1=8頭(29.6%)
  • 三重炎=8頭(29.6%)
症状のない猫(合計20頭)
  • 胆管炎=4頭(20%)
  • 膵炎=なし
  • 炎症性腸疾患=5頭(25%)
  • 炎症性腸疾患+1=11頭(55%)
  • 三重炎=なし
 「三重炎」は何らかの症状を抱えている猫でのみ確認され、炎症性腸疾患(IBD)の重症度と他の併存症との間にはわずかながら関連性が見出されたと言います。
 こうしたデータから調査チームは、重度の炎症性腸疾患を抱えた猫は三重炎を抱えているかもしれないため、胆管炎や膵炎の可能性も考慮するようアドバイスしています。また三重炎の病因に関しては、炎症性腸疾患によって変化した腸内細菌叢が腸内における免疫バランスを乱し、他の臓器に病変をもたらしているのではないかとのこと。なお、症状を示していないにもかかわらず11頭(55%)の猫で炎症性の病変が確認されたことから、飼い主が気づかないまま病変が進行してしまう可能性を否定出来ないとしています。 Prevalence and Clinicopathological Features of Triaditis in a Prospective Case Series of Symptomatic and Asymptomatic Cats
F.C. Fragkou, K.K. Adamama-Moraitou, et al. 2016
猫の消化器系の病気