トップ2016年・猫ニュース一覧10月の猫ニュース10月27日

メス猫の不妊手術歴は抗ミュラー管ホルモンでわかる

 来歴のわからないメス猫に避妊手術歴があるかどうかを確認する際は、「抗ミュラー管ホルモン」と呼ばれるメス特有のホルモンを検査するだけで十分かもしれません(2016.10.27/トルコ)。

詳細

 トルコ・クルッカレ大学の獣医学チームは、30頭のメス猫(1歳未満13頭+1歳以上17頭)を対象とし、卵巣内の卵胞から放出される「抗ミュラー管ホルモン」の値が卵巣子宮摘出術の前後でどのように変化するかを検証しました。 メス猫の卵巣と子宮の位置関係  その結果、術前には「3.15±2.25ng/mL」だった値が、術後3日の時点では「0.38±0.21ng/mL」に、そして術後10日の時点では検知不能のレベル(0.08ng/mL未満)まで低下したといいます。また、術後3日目まではホルモン濃度と年齢との間に相関関係が見られものの、10日目になるとそうした違いは無くなってしまったとも。
 こうした事実から研究チームは、来歴が全くわからないメス猫の不妊手術歴を確かめる際は、従来のようにわざわざお腹を開く必要はなく、「抗ミュラー管ホルモン」の値を計測するだけで十分であるとの結論に至りました。今回得られた知見は、TNR活動を進める際に役立ってくれるものと考えられます。 Evaluation of Age Releated Anti-Mullerian Hormone Variations in Domestic Cat

解説

 飼育者がいない猫に対して不妊手術を施し、元の場所に戻してあげる「TNR活動」をする際、全く来歴がわからない猫を対象とすることがしばしばあります。オス猫の場合は、外側から睾丸の有無を確認するだけ不妊手術歴を見分けることができるので比較的簡単です。しかしメス猫の場合は、体の外側から不妊手術歴を確認する術(すべ)がないため、一旦捕獲してお腹を切ってみなければなりません。この作業は、すでに避妊手術を受けている猫にとっては全く無用なものであり、いたずらに体を傷つけることになってしまいます。 外猫を捕まえ(Trap)、不妊手術を施し(Neuter)、元の場所に返して(Return)あげる「TNR」  今回示された「抗ミュラー管ホルモン」の特性は、上記したメス猫に対する不要な侵襲を防ぐのに役立ってくれると考えられます。お腹を開く代わりに血液を採取して検査に回せばよいだけですから、猫の体に対する負担は大幅に軽減されるでしょう。しかし今現在「抗ミュラー管ホルモン」の検査は、人間の女性を対象としたものが大半です。また、病院ですぐに行うことができる簡易チェックキットのようなものがなく、検査機関に回す必要がありますので、時間とお金もかかってしまいます。 耳先をカットした通称「さくらねこ」たちの写真集  メス猫に対する不要な開腹術を避けるため、現時点で出来る最善は「耳先カット」によって不妊手術歴を一目でわかるようにして無駄な再捕獲を防ぐことです。体の一部を切ることに疑問を感じる人もいますが、「さくらねこ」とも呼ばれるこのマーカーは「首輪」(首絞め事故の危険性)、「タトゥー」(捕獲しないとわからない)、「染色」(時間とともに色落ちする)など、他のあらゆる方法と比較検討した上で残った最善の策だと考えられています。 猫の去勢と避妊手術