詳細
「ベレニケ」は古代エジプトのプトレマイオス2世(在位・紀元前285~246)の時代、軍事的拠点として建設された港町。現在のエジプト・バフルアルアフマル付近に相当します。プトレマイオス朝以降は一時衰退しましたが、ローマ帝国時代の初期(1~3世紀頃)には復興し、上エジプトとアラビア半島およびインド洋を結ぶ最も重要な港の1つとなりました。
この土地では1994年から考古学的な発掘が断続的に行われており、現在はポーランド・ワルシャワ大学の地中海考古学センターが中心となって作業を進めています。
発見物の中でとりわけ興味深いのは、セラピス寺院と呼ばれるエリアの西側から見つかった100体を超える動物たちの骨です。地層学的に見て西暦75~150年ころに使用されていたと考えられるこのベレニケ動物埋葬地からは、犬9頭、ミドリザル3頭、アヌビスヒヒ1頭など多くの動物骨格が発掘されています。中でも圧倒的に多く発見されているのが猫で、現在86体の完全骨格が見つかっているとのこと。内訳は成猫が34.9%、若齢猫が27.9%、生後間もない子猫が37.2%になるそうです。 Pet cats at the Early Roman Red Sea port of Berenike, Egypt
Marta Osypinska, ©Antiquity Publications Ltd, 2016, doi:10.15184/aqy.2016.181
発見物の中でとりわけ興味深いのは、セラピス寺院と呼ばれるエリアの西側から見つかった100体を超える動物たちの骨です。地層学的に見て西暦75~150年ころに使用されていたと考えられるこのベレニケ動物埋葬地からは、犬9頭、ミドリザル3頭、アヌビスヒヒ1頭など多くの動物骨格が発掘されています。中でも圧倒的に多く発見されているのが猫で、現在86体の完全骨格が見つかっているとのこと。内訳は成猫が34.9%、若齢猫が27.9%、生後間もない子猫が37.2%になるそうです。 Pet cats at the Early Roman Red Sea port of Berenike, Egypt
Marta Osypinska, ©Antiquity Publications Ltd, 2016, doi:10.15184/aqy.2016.181
解説
ベレニケ動物埋葬地の特徴は、少数の例外を除いて副葬品がないこと、ミイラでよく見られる意図的な殺害の痕跡が見られないこと、人間の遺骨がないことなどです。こうした点から考え、宗教的な儀式やいけにえとは全く関係がなく、おそらく家庭で飼われていたペットの墓地だろうと推測されています。
ベレニケは港町でしたから、現代の「港猫」のように魚を狙ってたくさんの猫達が暮らしていたのかもしれません。あるいは商船に乗っていた「船猫」が商人とともに上陸し、そのままこの土地に根付いて地元住人のペットになったのかもしれません。いずれにしても専用の埋葬地が作られていたくらいですから、ローマ帝国初期のローマ人によってずいぶんと可愛がられていたのでしょう。