詳細
調査を行ったのは、オーストラリア・シドニー大学のチーム。これまで市販の検査キットで猫免疫不全症候群を引き起こす「FIV」を検出する際は、血液を採取する必要がありました。しかしこの方法は猫に対する侵襲性が大きく、また精度に関しても製品によってまちまちでした。例えば「Anigen Rapid FIV/FeLV®」と「Witness FeLV/FIV®」という商品は、ウイルス感染に起因する抗体とワクチン接種に起因する抗体の分別ができるのに対し、「SNAP FIV/FeLV Combo®」はできないなどです。そこで調査チームは、猫に対するストレスが少なくて済む唾液採取法を用いて、ウイルスの検知ができるかどうかを検証することにしました。
チームはウイルス感染の有無とワクチン接種の有無が確実にわかっている猫から唾液サンプルを採取し、「遠心分離あり」と「遠心分離なし」という2つの条件で検査キットにかけたところ、以下のような結果になったといいます。なお「感度」とは陽性のものを正しく陽性と判定する確率、「特異度」とは「陰性のものを正しく陰性と判定する確率のことです。
唾液と検査キットの判定能力
- Anigen Rapid FIV/FeLV®●遠心分離あり
→感度=96%/特異度=100%
●遠心分離なし
→ウイルス感染猫の検知率100%(14/14) - Witness FeLV/FIV®●遠心分離あり
→感度=92%/特異度=100%
●遠心分離なし
→ウイルス感染猫の検知率50%(7/14) - SNAP FIV/FeLV Combo®●遠心分離あり→
感度=44%/特異度=98%
●遠心分離なし
→ウイルス感染猫の検知率0%(0/14)
解説
人間のエイズを引き起こす「HIV」を検出するときに用いられる検査キットは、唾液を遠心分離にかけなくても感度と特異度が100%と非常に高いため、現在広く用いられています(→出典)。 一方、猫用の検査キットでは、今のところ唾液を遠心分離にかけなければ高い精度でウイルスの検出はできないようです。また、唾液検査が可能と考えられる「Anigen Rapid FIV/FeLV®」(→出典)と「Witness FeLV/FIV®」(→出典)の2製品は2016年現在、日本国内で流通していません。かろうじて「SNAP FIV/FeLV Combo®」は販売されていますが、この商品は採血が必要で、なおかつウイルス感染に起因する抗体とワクチン接種に起因する抗体の分別ができないという難点を抱えています(→出典)。
遠心分離できるほど大量の唾液を採取するのも、猫に大きなストレスを与えると考えられます。ですから「唾液を軽く付けるだけで確実に感染の有無がわかる」といった優れものの商品が登場するまでは、採血法で我慢するしかないようです。
遠心分離できるほど大量の唾液を採取するのも、猫に大きなストレスを与えると考えられます。ですから「唾液を軽く付けるだけで確実に感染の有無がわかる」といった優れものの商品が登場するまでは、採血法で我慢するしかないようです。