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しっぽ引っ張り外傷による猫の闘病記

 しっぽを引っ張ったり挟んだりして発症する「しっぽ引っ張り外傷」を患った猫の、数ヶ月に渡る闘病記が「catster」内で紹介されました(2016.5.25/カナダ)。

詳細

 家のドアにウンチがついていることいぶかしく思った飼い主は、ペット猫の「デイヴィッド」が尿路感染症にかかったと疑い、カナダ・マニトバ州のウィニペグにある動物救急病院へ駆け込みました。そこで抗生物質を打ちながら3日間入院しましたが症状は改善せず、自力で排尿ができない状態が続いたと言います。獣医師も原因がよくわからず、「おそらくストレスでおしっこができないのでしょう」といったかなりいい加減な説明をして、一旦デイヴィッドを退院させました。しかし自宅に戻ってからも粗相が治らず、寝そべるたびにウンチをこぼすという始末。飼い主は取り急ぎおむつのおしり部分を切り取って履かせてはみたものの、いつの間にか脱ぎ去って粗相を繰り返し、しまいには同居している2頭の猫もデイヴィッドを遠ざけるようになってしまいました。 粗相を繰り返したためおむつを装着させられる猫のデイヴィッド  心配になった飼い主は再び救急外来に駆け込み、医師の診察を受けました。ところが「もう何もできることはない。自力でおしっこをすることは二度とできないだろうから、安楽死しかないでしょう」と言われてしまいます。デイヴィッドなしの生活は想像できなかった飼い主はその提案を受け入れず、失意のまま帰宅しました。
 転機が訪れたのはその翌朝のことです。最初にデイヴィッドを診察した医師から突然飼い主のもとに電話がかかってきて、再診に訪れた理由を尋ねてきました。事情を説明したところ、にわかに浮上してきたのが「しっぽ引っ張り外傷」(仙尾部外傷)の可能性です。電話をかけた獣医師自身、この外傷を経験した犬を飼っていたことがあり、ピンときたとのこと。飼い主は早速病院を訪れ、自宅でもできる猫の排尿の仕方を学びました。強制排尿は最低でも8時間に1度、1日3回行う必要があるため、決して楽ではありません。しかし、そうした労苦が飼い主の心をくじく事はありませんでした。
 それから数ヵ月後、家の中には自分の意志でトイレに入り、自力でおしっこをするデイヴィッドの姿がありました。しっぽの感覚や運動能力も徐々に戻り、2年経った頃にはほぼ完全な排尿能力を取り戻したといいます。推測の域は出ないものの、事の発端は恐らく、開けっ放しのドアが風にあおられて閉まり、その拍子にしっぽが挟まれてしまったことだろうとのこと。 If I Had Followed One Vet’s Advice, My Cat Would Be Dead 2年の闘病の末、「しっぽ引っ張り外傷」(仙尾部外傷)を克服した猫のデイヴィッド

解説

 獣医師といえども、知識や経験レベルは様々で「しっぽ引っ張り外傷」の存在を知らない人もいるようです。獣医師の勧めに応じて安楽死という選択肢を取っていたら、取り返しのつかないことになっていたでしょうね。「しっぽ引っ張り外傷」に関する詳細は以下にまとめてありますので、予防法も含めてご参照ください。「猫のしっぽを引っ張ってはいけない」という忠告には、それなりの理由があります。 しっぽ引っ張り外傷