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野良猫の「エサやり人」に関する統計調査

 イスラエルの中心部で行われたアンケート調査により、野良猫に餌付けする「エサやり人」がもつ一般的な特徴が明らかになりました(2016.3.9/イスラエル)。

詳細

 調査を行ったのは、イスラエル・エルサレムにあるヘブライ大学の研究チーム。チームは地元の自治体が後援するTNR(野良猫に不妊手術を施して元の場所にリリースすること)キャンペーンに賛同した222人のエサやり人を、面倒を見ている猫の数によって1~4にグループ分けし、様々な側面に関するアンケート調査を行いました。グループの内訳は以下です。
エサやり人の分類
  • グループ1=5頭まで
  • グループ2=6~10頭
  • グループ3=11~20頭
  • グループ4=21頭以上
 調査の結果、女性が全体の81%を占め、年齢の中央値は58歳(18~81歳)、342ヶ所のエサ場でトータル3,337頭の猫に餌付けしていることが明らかになったといいます。またグループ4に属する34人(15.31%)だけで、全体の56%に相当する1,869頭の面倒を見ていたとも。さらにグループ3と4に属する「ヘビーフィーダー」では、各所に散らばっている猫たちに餌を与えるため、まるで巡礼の旅のようにかなりの距離を移動する傾向が確認されたそうです。ちなみにこうしたヘビーフィーダーは独身で兄弟姉妹が少なく、犬よりも猫への偏愛が強く、貧困地区に暮らしているという傾向が見出されました。
 一方猫に関しては、全3,337頭のうち69.7%が手術済み(2,325頭)で、11.8%は子猫(395頭)であることが明らかになりました。しかしその健康状態に関しては万全とは言い難く、1.6%(54頭)では跛行(手や足を引きずる事)、2%(67頭)では全身性疾患、4%(135頭)では皮膚の傷、3.9%(130頭)では慢性的な不具を抱えていたとのこと。また不妊率が高いほど子猫の数と死亡率が減る傾向があったといいます。
 こうしたデータから研究チームは、不妊手術を施すことが子猫たちの死亡率を低下させ、結果として猫の福祉向上につながるだろうとの結論に至りました。 Feeders of free-roaming cats: personal characteristics, feeding practices and data on cat health and welfare in an urban setting of Israel エサやり人の81%は女性で、年齢は約58歳

解説

 1999年、アメリカ・フロリダ州のアラチュア郡で行われた電話調査によると、587世帯のうち70世帯(12%)が野良猫に餌付けをしていたという結果が出ています(→出典)。また猫たちの不妊手術率は90%と高かったものの、手術を施されていない猫に手術を受けさせようと試みたことがあるのはわずか8世帯 (11%)に過ぎなかったと言います。こうしたデータから研究チームは、不妊手術の重要性は猫を飼っている家庭のみならず、生殖能力を持った野良猫に闇雲に餌付けをしている非飼育家庭に対しても周知させる必要があるとの結論に至っています。
 また2002年、フロリダ州北部で行われた調査では、101人のエサやり人が対象となりました(→出典)。彼女らは132のコロニーに暮らしている合計920頭の野良猫に餌付けをしており、85人(84%)が女性で年齢の中央値は45歳(19~74歳)だったといいます。野良猫に餌を与える理由としては「同情心」や「愛情」が最も大きく、猫を自分のペットのようだと感じている人が多かったとのこと。TNR導入前には920頭だった猫たちの数は、導入してから678頭に減少し、コロニーサイズも7頭から5.1頭に減少しました。研究チームは、エサやり人が猫に対して抱いている愛情を、TNRに積極的に協力してもらうなど、個体数を制限する方向に向けることが、猫の福祉向上につながるだろうとしています。
 上記した知見の中には、生まれてくる子猫の数が激増する春の時期、とりわけ念頭に置いておきたい教訓が含まれています。ポイントは、「不妊手術を施していない猫は外に出さないこと」と、「野良猫には可能な限り不妊手術を施すこと」です。「自然の摂理に反する」といった漠然とした思い込みで猫に自由行動をさせたり、「可愛そう」といった衝動的な感情だけで不妊手術を施していない猫にエサを与えてしてしまうと、とめどなく個体数が増え続けてしまいます。その具体例が、200万頭規模の殺処分を計画しているオーストラリアです(→出典)。こうした轍(てつ)を踏まないために私たちに出来ることは以下のページにまとめてありますのでご参照ください。 猫の殺処分の現状