詳細
「リフィーディング症候群」(refeeding syndrome)の歴史は古く、日本国内においては早くも戦国時代の記録が残されています。
この症例から病院側は、極端な空腹状態にある猫にどのようなペースで栄養を与えるべきかに関しては全くデータがないものの、「リフィーディング症候群」が起こりうることを常に念頭に置き、特にリンやカリウムの値を注意深くモニタリングしておくことが重要であると警告しています。 Hypoglycemia associated with refeeding syndrome in a cat
天正9年(1581年)6月、羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)は吉川経家の籠もる因幡鳥取城を包囲し、兵糧攻めを決行した。城内はあっという間に食糧不足に陥り、兵や住民たちは雑草や木の葉を食べて飢えをしのいだものの、4ヶ月後の10月には餓死者が4千人に達する阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。この様子を見るに見かねた城主・経家はとうとう降伏。有力者の切腹と引き替えに開城することを決意した。しかし開城後、配給された米に群がった兵士たちは胃痙攣を起こして次々と死亡。生き延びた者のうち、約半数が飢餓ではなく「食事」によって命を落とすという皮肉な結末となった。このように、慢性的な栄養不足状態が続いている患者が、急激に栄養を摂取することで経験する様々な障害が「リフィーディング症候群」です。発症のメカニズムを起こる順番で並べると、以下の様な時系列になると考えられています。
リフィーディング症候群の機序
- 炭水化物やタンパク質の急激な摂取
- 膵臓からインスリンの分泌
- ブドウ糖の細胞内取り込みとタンパク質合成の促進
- リン、カリウム、マグネシウムの細胞内移動に伴う低リン血症、低カリウム血症、低マグネシウム血症
- 糖質代謝によるビタミンB1とATP不足
- ビタミンB1不足に伴う心不全やウェルニッケ脳症と、ATPの減少に伴う脳、心臓、筋肉の障害
この症例から病院側は、極端な空腹状態にある猫にどのようなペースで栄養を与えるべきかに関しては全くデータがないものの、「リフィーディング症候群」が起こりうることを常に念頭に置き、特にリンやカリウムの値を注意深くモニタリングしておくことが重要であると警告しています。 Hypoglycemia associated with refeeding syndrome in a cat
解説
リフィーディング症候群は、体内における電解質の異常により、以下に示すような様々な症状を呈します。
リフィーディング症候群の症状
- 痙攣発作
- 四肢の麻痺
- 運動失調
- 横紋筋融解
- 尿細管壊死
- 溶血性貧血
- 高血糖・低血糖発作
- 敗血症
- 肝機能異常
- 消化管機能異常
- 意識障害
- 心不全
- 不整脈
- 呼吸不全
リフィーディング症候群の危険因子
- BMlが16kg/m2未満
- 過去3~6ヵ月で15%以上の意図しない体重減少
- 10日間以上の絶食
- 再摂食前の低カリウム血症,低リン血症,低マグネシウム血症