詳細
調査を行ったのはオレゴン州立大学のボーラー・エリーさん。屋外をうろついている飼い主のいない猫に不妊手術を施し、元の場所に戻してあげる「TNR」に関しては、非常にうまくいったとする報告がある一方、あまりうまくいかなかったという報告もちらほらと散見されます。そこでエリーさんは、TNRの成否を決定づける要素が何なのかを明らかにするため、人間に養われている飼い猫と、「非飼育自由行動猫」(FRU)を対象とし、生殖能力に関する比較調査を行いました。なお、ここで言う猫たちの定義は以下です。
- 野猫側に近づくことも手懐けることもできず、人間の世話にならなくても生きていける猫
- 地域猫側に近づくことも手懐けることもできないが、人間の世話にならないと生きていけない猫
- 非飼育自由行動猫野猫と地域猫を合わせた概念
- 飼い猫食糧や寝床を完全に人間に頼りながら生きている猫
オス猫に関する調査
- 性器棘の保有率●2~6ヶ月齢→30.7%(4/13)
●6ヶ月齢以上→100%(16/16) - 正常な精子●2~6ヶ月齢→77±11%
●6ヶ月齢以上→81±13% - 精子形成能力●2~2.5ヶ月齢→0%
●3~4ヶ月齢→17%
●5~6ヶ月齢→67%
●12~24ヶ月齢→100% - 精細管の直径●2~2.5ヶ月齢→88.10±10.88μm
●3~4ヶ月齢→109.8±8.89μm
●5~6ヶ月齢→142.2±16.89μm
●12~24ヶ月齢→237.90±52.45μm
メス猫に関する調査
- 胞状卵胞●未熟な非飼育自由行動猫→33%
●未熟な飼い猫→17% - 卵胞のサイズ●未熟な非飼育自由行動猫→581.6±53.65μm
●未熟な飼い猫→502.0±74.51μm
●成熟した飼い猫→469.4±121.48μm - 子宮と卵巣の総重量●未熟な非飼育自由行動猫→0.93±0.28g
●成熟した非飼育自由行動猫→1.18±0.31g
解説
2016年に行われた調査では、正中線ではなく脇腹からアプローチする卵巣除去術を用いれば、たとえ子猫が生後12週齢(3ヶ月齢)未満という若齢でも、安全に避妊手術を施すことができるとの結果が出ています(→出典)。野生環境で暮らしている野良猫の繁殖と、その結果としての子猫の殺処分数を減らすためには、「生後8ヶ月齢」というこれまでの不妊手術の目安を「生後4~6ヶ月齢」に置き換える必要があるようです。