詳細
調査を行ったのはスコットランド・エジンバラ大学とバス大学の共同チーム。マウスにおいて見られる体の一部だけが白い「キメラマウス」という個体を対象とし、被毛パターンがどのように発生するかを調べるため、胚の発達初期におけるメラニン芽細胞の振る舞いを精査しました。その結果、「色付きの被毛を生み出すメラニン芽細胞の移動は正常だけれども、その後の分裂増殖が抑制される」ことにより、被毛のパターンが決定づけられることが判明したといいます。そして、この抑制を引き起こしているのが「Kit」と呼ばれる遺伝子であるとも。
こうした事実から研究チームは、以前からあった「あらかじめ模様が決まっている」とか、「メラニン芽細胞の移動が遅くなることで有色の部分と白い部分が生まれる」といった仮説を覆す発現パターンを明らかにしました。 Reconciling diverse mammalian pigmentation patterns with a fundamental mathematical model Scientific American
こうした事実から研究チームは、以前からあった「あらかじめ模様が決まっている」とか、「メラニン芽細胞の移動が遅くなることで有色の部分と白い部分が生まれる」といった仮説を覆す発現パターンを明らかにしました。 Reconciling diverse mammalian pigmentation patterns with a fundamental mathematical model Scientific American
解説
猫で頻繁にみられる「パイボールド」は、白い被毛を作り出す「S」遺伝子による不完全優性遺伝によって生み出されると考えられています。しかし、具体的にこの遺伝子がどのように白い部分を発生させているのかに関してはよくわかっていませんでした。今回の調査で判明した事実を猫に当てはめて考えると、以下のような仮説が浮上してきます。
S遺伝子を持っていない猫
- 1胚の状態。
- 2後にメラニン細胞になるメラニン芽細胞が、神経堤と呼ばれる部分から全身に広がる。
- 3胚が成長するとともに、メラニン芽細胞がひび割れ状態になる。
- 4メラニン芽細胞が分裂増殖を繰り返し、ひび割れ部分を埋める。
S遺伝子をもっている猫
- 1胚の状態。
- 2後にメラニン細胞になるメラニン芽細胞が、神経堤と呼ばれる部分から全身に広がる。
- 3胚が成長するとともに、メラニン芽細胞がひび割れ状態になる。
- 4S遺伝子の作用により、メラニン芽細胞の分裂と増殖が抑えられ、ひび割れが埋められないまま成長する。