詳細
「ノロウイルス」とはカリシウイルス科に属するウイルスの一種で、人間に感染する「GI」、「GII」、「GIV」、牛や羊に感染する「GIII」、ネズミに感染する「GV」といった系統に細分されます(※Gはgenogroup、Gの後ろはローマ数字)。引き起こす主な症状は胃腸炎です。
イタリア・テラモ大学のチームは、南イタリアにある3つの動物保護施設において、腸炎の徴候を示す猫48頭とノロウイルスの感染率を調査しました。すると3頭(6.2%)で陽性反応が出たと言います。さらにこのウイルスの核酸とアミノ酸を精査したところ、2009年に発見された「GIV」系統(GIV.2 strain lion/Pistoia/387/06/ITA)に非常によく似通っていたものの、完全には一致しなかったそうです。また遺伝的には、犬に感染することで知られている「GVI」と呼ばれる系統(GVI.2 NoV strains C33/Viseu/2007/PRT and FD53/2007/ITA)ともある程度近似していたとのこと。
こうした遺伝学的な知見から研究チームは、今回発見されたウイルスが猫に感染する新型のノロウイルスであると断定しました。また遺伝子構造がイヌノロウイルスにも近似していたことから、このままウイルスを放置しておくと、犬や猫の体内で容易に遺伝子組み換えが起こり、今よりも広い感染能力を持った新型の系統がいつ生まれてもおかしくないと警鐘を鳴らしています。 A novel feline norovirus in diarrheic cats
こうした遺伝学的な知見から研究チームは、今回発見されたウイルスが猫に感染する新型のノロウイルスであると断定しました。また遺伝子構造がイヌノロウイルスにも近似していたことから、このままウイルスを放置しておくと、犬や猫の体内で容易に遺伝子組み換えが起こり、今よりも広い感染能力を持った新型の系統がいつ生まれてもおかしくないと警鐘を鳴らしています。 A novel feline norovirus in diarrheic cats
解説
イタリアは遠く離れているから、私たちには全く関係がないと安心したくもなりますが、実はそういうわけにもいきません。 長崎大学や鹿児島大学からなる共同研究チームは2007年~2014年の間、国内において下痢症状を示した97頭の犬と83頭の猫を対象とし、大規模なノロウイルス蔓延率調査を行いました。その結果、犬2頭と猫1頭が陽性反応を示したといいます。その他、サポウイルス(犬2頭)、ヴェシウイルス(猫8頭)など、カリシウイルス科に属する他のウイルスも検出されました。こうした事実から研究チームは、日本においては種固有のノロウイルス、およびサポウイルスが存在しているようだとの結論に至っています。
今はまだ感染率が低いようですが、イタリアの先例が示しているように、ウイルスが突然変異によって高い感染能を獲得し、犬や猫に対して猛威を振るうという可能性がゼロとは言い切れません。 Detection of Norovirus and Sapovirus from diarrheic dogs and cats in Japan
今はまだ感染率が低いようですが、イタリアの先例が示しているように、ウイルスが突然変異によって高い感染能を獲得し、犬や猫に対して猛威を振るうという可能性がゼロとは言い切れません。 Detection of Norovirus and Sapovirus from diarrheic dogs and cats in Japan