詳細
従来、涙の通り道である「鼻涙管」の閉塞に起因する流涙症の治療法は、外科的な切開を伴う侵襲性の高いものや、結果がまちまちなカテーテル留置術などがメインでした。このたびUCデイヴィス校付属動物病院の眼科専門医が猫に対して初めて行ったのは、「鼻涙管ステント留置術」と呼ばれる手術です。これまで犬や馬といった動物が対象でしたが、医療機器の小型化により、体が一回り小さい猫に対しても施術出来るようになったといいます。
当手術法の特徴は、「ステント」と呼ばれる型崩れしにくい金属製チューブを鼻涙管に設置し、閉塞していた排水システムを半永久的に回復するというものです。ステントは「涙点」と呼ばれる目頭にある小さい穴から挿入され、鼻の中にある出口まで押し進められます。その後、ステントがずれてしまわないよう固定し、約2ヶ月間そのまま生活します。すると閉塞していた鼻涙管が内径を取り戻し、涙が適切に排水されるようになるそうです。今回手術を受けた 8歳のメス猫「きなこ」の場合、術後3ヶ月経った時点で副作用もなく完全に症状が消えたと言います。
UC Davis School of Veterinary Medicine
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解説
流涙症は命に関わるものではないものの、猫に慢性的な不快感を与え、時として目の感染症を引き起こす病気。治療法に新たな選択肢が増えるということは喜ばしいことです。しかし、以下に述べるようなデメリットもありますので、事前の差引勘定が必要となるでしょう。
鼻涙管ステントのデメリット
- 検査と治療に全身麻酔が必要
- 2ヶ月間、エリザベスカラーが必要
- 専門性が高く、できる場所が限られる
- 再発の可能性がゼロではない
- 飼い主がこまめに涙を拭いてあげれば、手術しなくてもそこそこしのげる