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ガンが原因と考えられる猫の脳血管障害(血栓塞栓症)

 肺や前足に発生したガンが原因と考えられる脳血管障害の事例が報告されました(2016.8.25/オーストラリアなど)。

詳細

 脳血管障害とは、脳内の血管が破裂したり、脳の外から塞栓子が流れ込んできて目詰まりを起こすなどして、脳細胞の血流が途絶えてしまう現象のこと。脳に血液を届ける血管に閉塞が起こり、血流が一時的に遮断された状態を「虚血性発作」、閉塞が長引いて小~大規模の脳細胞が壊死した状態を「脳梗塞」と呼びます。人医学ではガンとの関連性が指摘されていますが、どうやら猫においても同様のメカニズムで障害が起こるようです。
 報告を行ったのは、オーストラリアとニューヨークの獣医師。急性かつ非進行性の神経症状で来院した2頭の猫に対してMRI検査を行った所、一方の猫では小脳と視床部に、他方の猫では視床部に脳血管障害の所見が確認されたと言います。2頭の神経症状は時間の経過とともに回復したものの、その後運動不能が徐々に増悪。再び精密検査を行ったところ、肺と前肢の一部にガンが見つかったそうです。
 報告を行った獣医師は、発作性の神経症状では前庭、内分泌、心臓疾患のほか、ガンの可能性も考慮に入れる必要があるとしています。 Intracranial infarcts in two cats with suspected thoracic limb and pulmonary neoplasia 急性の神経症状では前庭や心疾患のほか癌の可能性も考慮

解説

 ガンを体内に抱えていると脳血管障害を発症しやすくなる理由は、血液の凝固能が亢進しているからです。メカニズムは複雑ですが、ガン組織が産生する特殊な物質が血管の内皮細胞を機能不全に陥れたり、ガン組織によって活性化された炎症細胞が血液の凝固を促す物質を放出するためだと考えられています。局所で形成された「血栓」が血流に乗って体内を巡り、構造が入り組んだ脳内などで目詰まりを起こして症状を引き起こします。
 人間のガン患者を対象とした調査によると、血栓塞栓症の発症頻度は全体で約11%と推定されており、ガン患者の死因としては2番目に多いとされています。ガンの発生部位と静脈血栓塞栓症の発症率は以下です。 日経メディカル ガンの発生部位と静脈血栓塞栓症の発症率一覧  猫における疫学は全く不明ですが、ガンを患っていて「頭が傾く」とか「足元がフラフラになる」といった神経症状を示した時や、神経症状を示したけれども原因がよく分からないような時は、血栓による「脳血管障害」の可能性を考慮しても、決して大げさでは無いと思われます。 猫のガン