トップ猫の文化猫の浮世絵美術館歌川国芳展猫飼好五十三疋

猫飼好五十三疋

 江戸時代に活躍した浮世絵師・歌川国芳の残した猫の登場する作品のうち、猫飼好五十三疋について写真付きで解説します。

作品の基本情報

  • 作品名猫飼好五十三疋
  • 制作年代1848頃年(江戸・嘉永元)
  • 落款一勇斎国芳戯画
  • 板元伊場屋仙三郎
其のまま地口・猫飼好五十三疋のサムネイル写真

作品解説

 「其のまま地口・猫飼好五十三疋」(そのままじぐち・みょうかいこうごじゅうさんびき)は、東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)に登場する宿場を、猫に関したダジャレに置き換えた大判三枚からなる戯画です。
 「地口」とはダジャレの一種であり、有名な言葉やフレーズをもじったもの(飛んで火にいる夏の虫→飛んで湯に入る夏の武士)やただ単に韻をそろえたもの(驚き桃の木)、言葉尻に同音異義語をつなげたもの(当たり前田のクラッカー)など、いくつかのパターンがあります。一方、パロディの元となっている「東海道五十三次」とは、江戸時代に整備された五街道(ごかいどう=江戸・日本橋を起点とする五つの陸上交通路)の一つで、東海道にある53の宿場を指しています。
 さて、東京書籍「江戸猫」(P16-17)を元にして、それぞれの宿場がどのようにアレンジされているかまとめると、以下のようになります。なお、当作品では東海道の始点である江戸・日本橋と終点である京・三条大橋を加えた計55図が示されています。
猫飼好五十三疋・上
猫飼好五十三疋~「日本橋」「品川」「川崎」の地口解説
  • 1, 日本橋(にほんばし)→二本だし(かつお節二本)
  • 2, 品川(しながわ)→白かを(白猫の顔)
  • 3, 川崎(かわさき)→かばやき(岡持ちに入った蒲焼)
猫飼好五十三疋~「神奈川」「程ヶ谷」「戸塚」の地口解説
  • 4, 神奈川(かながわ)→かぐかハ(竹の皮の匂いをかぐ)
  • 5, 程ヶ谷(ほどがや)→のどかい(のどがかゆい)
  • 6, 戸塚(とつか)→はつか(ハツカネズミを見つける)
猫飼好五十三疋~「藤沢」「平塚」「大磯」の地口解説
  • 7, 藤沢(ふじさわ)→ぶちさば(サバをくわえるブチ猫)
  • 8, 平塚(ひらつか)→そだつか(子猫が元気に育つかな?)
  • 9, 大磯(おおいそ)→おもいぞ(大ダコを引きずって重い)
猫飼好五十三疋~「小田原」「箱根」の地口解説
  • 10, 小田原(おだわら)→むだどら(ネズミを逃がして無駄足のドラ)
  • 11, 箱根(はこね)→へこね(ネズミにエサを取られてへこ寝)
猫飼好五十三疋~「三島」「沼津」の地口解説
  • 12, 三島(みしま)→三毛ま(三毛が猫又という魔物に)
  • 13, 沼津(ぬまづ)→なまづ(ナマズと向き合って)
猫飼好五十三疋~「原」「吉原」の地口解説
  • 14, 原(はら)→どら(ドラ猫が叫ぶ)
  • 15, 吉原(よしわら)→ぶちはら(腹の模様がブチ)
猫飼好五十三疋~「蒲原」「由井」の地口解説
  • 16, 蒲原(かんばら)→てんぷら(テンプラを目の前にして)
  • 17, 由井(ゆい)→たい(大きなタイをくわえて)
猫飼好五十三疋~「興津」「江尻」の地口解説
  • 18, 興津(おきつ)→おきず(眠りから起きず)
  • 19, 江尻(えじり)→かじり(かつお節を丸かじり)
猫飼好五十三疋・中
猫飼好五十三疋~「府中」「鞠子」「岡部」の地口解説
  • 20, 府中(ふちゅう)→むちゅう(大好きなネズミに夢中)
  • 21, 鞠子(まりこ)→はりこ(張り子の猫)
  • 22, 岡部(おかべ)→あかげ(赤毛の猫がまどろむ)
猫飼好五十三疋~「藤枝」「嶋田」の地口解説
  • 23, 藤枝(ふじえだ)→ぶちへた(ブチ猫はネズミ捕りが下手)
  • 24, 嶋田(しまだ)→なまだ(この魚は焼けていない)
猫飼好五十三疋~「金谷」「日坂」「掛川」の地口解説
  • 25, 金谷(かなや)→たまや(玉のように丸々太ったタマや)
  • 26, 日坂(にっさか)→くったか(舌なめずりしてしたたか食ったか)
  • 27, 掛川(かけがわ)→ばけがを(化け猫の顔)
猫飼好五十三疋~「袋井」「見附」の地口解説
  • 28, 袋井(ふくろい)→ふくろい(菓子袋に猫の頭が入り)
  • 29, 見附(みつけ)→ねつき(寝つきがよい猫)
猫飼好五十三疋~「浜松」「舞阪」」の地口解説
  • 30, 浜松(はままつ)→はなあつ(鼻熱っ!ヤケドしちゃった)
  • 31, 舞阪(まいさか)→だいたか(子猫をしっかり抱いたか?)
猫飼好五十三疋~「荒井」「白須賀」の地口解説
  • 32, 荒井(あらい)→あらい(猫の顔洗い)
  • 33, 白須賀(しらすか)→じゃらすか(さあ子猫でもじゃらすか)
猫飼好五十三疋~「二川」「吉田」の地口解説
  • 34, 二川(ふたがわ)→あてがふ(母猫が子猫にあてがう)
  • 35, 吉田(よしだ)→おきた(起きたぞ!)
猫飼好五十三疋~「御油」「赤坂」の地口解説
  • 36, 御油(ごゆ)→こい(猫の恋)
  • 37, 赤坂(あかさか)→あたまか(何だめざしの頭か…)
猫飼好五十三疋~「藤川」「岡崎」の地口解説
  • 38, 藤川(ふじかわ)→ぶちかご(かごに入ったブチ猫)
  • 39, 岡崎(おかざき)→おがさけ(尾が二つに裂け、猫又になる)
猫飼好五十三疋・下
猫飼好五十三疋~「池鯉鮒」「鳴海」の地口解説
  • 40, 池鯉鮒(ちりゅう)→きりゃう(器量よしの猫)
  • 41, 鳴海(なるみ)→かるミ(軽い身のこなし)
猫飼好五十三疋~「宮」「桑名」の地口解説
  • 42, 宮(みや)→おや(親猫に寄り添う子猫たち)
  • 43, 桑名(くわな)→くふな(まだ食うなよ…)
猫飼好五十三疋~「四日市」「石薬師」の地口解説
  • 44, 四日市(よっかいち)→よったぶち(寄り添うブチ猫たち)
  • 45, 石薬師(いしやくし)→いちやァつき(いちゃつく二匹の猫)
猫飼好五十三疋~「庄野」「亀山」「関」の地口解説
  • 46, 庄野(しょうの)→かふの(野良猫に首紐つけて今日から飼うの)
  • 47, 亀山(かめやま)→ばけあま(化けた尼さん)
  • 48, 関(せき)→かき(カキは大好物)
猫飼好五十三疋~「坂の下」「土山」の地口解説
  • 49, 坂の下(さかのした)→あかのした(赤い舌出して毛づくろい)
  • 50, 土山(つちやま)→ぶちじゃま(ブチが割り込んできて邪魔だ)
猫飼好五十三疋~「水口」「石部」の地口解説
  • 51, 水口(みなぐち)→ミなぶち(体中みなブチ模様)
  • 52, 石部(いしべ)→ミじめ(やせこけてみじめな体)
猫飼好五十三疋~「草津」「大津」「京」の地口解説
  • 53, 草津(くさつ)→こたつ(大好きなコタツの上)
  • 54, 大津(おおつ)→じゃうず(ネズミを上手に放り上げる)
  • 55, 京(きょう)→ぎゃう(ギャウ!ネズミは渡さないぞ!)