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胸部外傷の患猫にCTスキャン検査は必要か?

 CTスキャン検査は高額費用、施設への移動、麻酔・鎮静リスク、放射線曝露といったデメリットを強要します。これら数々の負担を背負ってまで行う価値はあるのでしょうか?

猫の胸部外傷とCT検査

 調査を行ったのは英国内にある複数の二次診療施設からなる共同チーム。外傷患畜に対する有用性が疑問視されているCTスキャンが、獣医療の現場で必要かどうかを検証するため、複数の医療機関データを対象とした回顧的調査を行いました。

調査対象

 調査対象となったのは2012年1月から2022年12月の期間、英国内にある3つの二次診療施設において胸部外傷の診断を受けた患猫たち。選定条件は「胸部への鈍的外傷の目撃情報があるもしくは疑われる」「CTスキャン検査を行った」とされました。
 最終的に解析に回されたのは137頭の患猫たち。年齢中央値は41ヶ月齢で、短毛種109頭、長毛種6頭、品種不明1頭、その他純血種、オス83頭(去勢79頭)、メス50頭(避妊48頭)、不明4頭という内訳です。

調査結果

 調査の結果、胸部外傷の原因は以下の3項目に集約されました。
胸部外傷の原因
  • 交通外傷=69%(94頭)
  • 不明=27%(37頭)
  • 落下=4%(6頭)
 また身体検査(診察)時の異常所見として多かった項目は以下です(複数回答)。
胸部外傷の症状
  • 頻呼吸=32%(44)
  • 粘膜蒼白=22%(30)
  • 呼吸困難=20%(28)
  • 頻脈=17%(23)
  • 精神鈍化=14%(19)
  • 呼吸音減弱=11%(15)
  • 腹部圧痛=7%(9)
  • 肺雑音=5%(7)
  • 胸部外傷=5%(7)
  • 腹部外傷=4%(6)
  • 脈拍減弱=4%(5)
 CT所見で正常と判断された割合が23%(31頭)だったのに対し異常と判断されたのは77%(106頭)。診察でのみ異常が認められたケースが6%(8頭)、CTでのみ異常が33%(45頭)、両方で異常が46%(63頭)、診察でもCTでも異常が認められなかったケースが15%(21頭)でした。
 診察所見とCT所見の関連を分析した結果、診察時の「頻呼吸」がCT検査での異常所見と連関していました。逆にCT所見と診察所見の関連を分析した結果、CTでの異常が診察時の気胸、皮下気腫、縦隔気腫、肺挫傷、肋骨骨折と連関していました。
 CT後に医療介入を行った割合は20%(28頭)で、内訳は胸部穿刺12%(17頭)、胸部ドレイン7%(10頭)、外科手術5%(7頭/横隔膜ヘルニア2+気管外傷3+胸椎骨折2)でした。また診察時に呼吸音減弱がある場合、最終的に介入を要する確率が高まる(OR=6.29)という関連が認められました。
 概して、診察で異常所見が多いほどCTでも異常所見が多い(OR=2.04)こと、および診察で異常所見が多いほど医療介入が多くなる(OR=1.82)ことが統計的に認められました。
Physical examination and CT to assess thoracic injury in 137 cats presented to UK referral hospitals after trauma
Nicola Mansbridge, Giorgio Kallis , Jinjing He, Isabelle Pearce, Joy Fenner, Journal of Feline Medicine and Surgery(2024), DOI:10.1177/1098612X24122805

胸部外傷でのCT活用例

 診察で異常ありと判断された割合が52%だったのに対し、CTで異常ありと判断された割合は77%でした。単純計算はできませんが、診察だけで画像診断を行わない場合、異常が見落とされるケースが出てくる危険性があると読み替えることもできます。

危険な3徴候

 診察(身体検査)とCT所見の関連を調べた結果、CT所見での肺挫傷が診察時の「呼吸困難(OR=3.81)」、皮下気腫が「呼吸困難(OR=6.94)」、気胸が「頻呼吸(OR=3.91)・呼吸音減弱(OR=3.65)」の予見因子となっていました。呼吸困難、頻呼吸、呼吸音減弱は治療を要するケースの予見因子にもなっていましたので、診察時に上記した症状が認められた場合は速やかに画像検査と医療介入に移った方が良いかもしれません。

CT検査はケースバイケースで

 CTスキャン検査にはコスト、麻酔や鎮静薬のリスク、放射線への曝露リスク、設備の整った医療機関への移動ストレスといったさまざまなデメリットが伴います。またCT検査を行っても治療内容や死亡率に影響が見られなかったという先行報告もあります。
 胸部外傷を負った猫はその時点で状態が不安定ですので、エックス線や超音波検査に加えて負担の大きいCTスキャン検査を行うかどうかはケースバイケースで慎重に判断する必要があるでしょう。身体検査だけでは胸腔内部の異常を見落としてしまう可能性が示されたため、CT検査を受けていない状態で容態が悪化した場合は速やかに再受診しましょう。